【必読】一括見積・比較サイトは安易に使うべからず

翻訳外注ノウハウ

比較サイトや一括見積サイトは便利です。必要条件を入力してクリックするだけで、価格やスペックを確認できたり、複数の業者から簡単に見積もりをとることができます。

電化製品などは比較サイトで情報を得てから実店舗に行って実機を見て触って、最後はECショップで、という流れで購入される方が多いのではないでしょうか。

また、引越業者や中古車買取業者なども一括見積サイトでコンタクトして見積もり料金を競わせて、といった流れではないでしょうか。

電化製品や引越、中古車買取ほどメジャーではありませんが、翻訳の比較サイトや一括見積サイトもたくさんあります。

本記事では、これら比較サイトや一括見積サイトを利用して翻訳を外注する際に注意すべき点について説明します。

運営者は翻訳のプロではない

最初に注意すべきは、比較サイトや一括見積サイトはいずれも翻訳のプロが運営しているわけではないという点です。

つまり、ユーザーがもし翻訳の品質や成果など翻訳に真摯に向き合うためにやりとりがしたいと思っても、運営者はそれをすべき相手ではないということです。

「翻訳会社を比較できます」「複数の翻訳会社にワンクリックで見積もり依頼できます」とサイトに記載されていますが、運営しているのは翻訳を専門とする団体や組織ではない場合がほとんどです。

つまり翻訳は比較対象として掲載されているさまざまな項目のひとつに過ぎず、サイト運営者には翻訳や翻訳外注に関する知見がほとんどないのです。しかしこれは当たり前であり何ら問題ありません。

なぜなら

  • 比較サイトがユーザーに提供しているのは「比較できる」という体験と「手間なく簡単に」という利便性
  • 一括見積サイトがユーザーに提供しているのは「まとめて見積依頼できる」という簡便性と敢えて言うならユーザーの時間短縮
  • そこに登録、自社情報を掲載している翻訳会社に対して運営者が提供しているのは「集客の代行」

だからです。

ユーザーは簡単に翻訳会社を比べたり、見積価格を競わせたりすることができ、翻訳会社にとっては自力では難しい集客を代行してくれるという点で、比較サイトや一括見積サイトはユーザー・翻訳会社・サイト運営者のあいだにwin-winの関係を構築する素晴らしいサービスです。

しかしサイトに掲載されている翻訳や翻訳外注に関する記事や情報はほとんどの場合、翻訳のプロではないサイト運営スタッフもしくは業務委託先のライターが執筆したものであり、それらの多くは翻訳会社や翻訳の業界団体がその知見を元に執筆、自社や自団体のサイトに公開している情報の寄せ集めであることが多いことを理解しておく必要があります。

サイト運営者が重視しているのは運営している比較サイトや一括見積サイトのトラフィック、つまりどれだけの人がサイトを利用しているか、サイトを利用して取引を行なったかであり、翻訳の品質や翻訳サービスの内容ではありません。

つまり、ユーザーの数、登録翻訳会社の数、その取引から得るマージンや翻訳会社への月額固定課金、広告収入などが比較サイトや一括見積サイトの運営者が気にしていることであり、ユーザーがいくら翻訳や翻訳の外注について深掘りしたくてもできないのだということを理解した上で利用する必要があるということです。

※本記事は比較サイト、一括見積サイトを対象としているためそこに登録しているのは「翻訳会社」としていますが、クラウドソーシングサービスを対象とした場合は「翻訳者」も同様の状況にあるとお考えください

価格競争に陥る

次に注意すべきは、比較サイトや一括見積サイトはそこに登録している翻訳会社間の価格競争を誘発し易いという点です。なぜ価格競争に陥るのかは、翻訳会社の立場で考えればすぐにわかります。

翻訳会社はそれら比較サイトや一括見積サイトで案件を獲得、取引を行なうためにサイト運営者に次のようにさまざまな代金を支払っています。

  • 登録料(ただしフリーミアム戦略から登録だけであれば無料の場合が多い)
  • 月額利用料(案件紹介料とどちらかを選択する場合もあり/成約の有無に関係なし)
  • 案件紹介料(月額利用料とどちらかを選択する場合もあり/成約の有無に関係なし)
  • 成功報酬(成約した場合に契約金額の一定率を運営者に支払う)
  • その他(標準装備以上の広告を掲載する場合など)

これらの費用を回収するにはユーザーから翻訳の注文をとる、つまり成約(案件を獲得)する必要がありますが、比較サイトや一括見積サイトのユーザーが比較対象としているのはほとんどの場合「価格」です。

ゆえにサイトの特性上当然ですが、他より1円でも安い見積もり(価格)を提示して成約(案件を獲得)した業者しか、上述の費用を回収できない仕組みになっているということです。

ユーザーがいくつかの翻訳会社を選んで一括で見積もり依頼した際の営業対応など、サイトに登録している翻訳会社には価格以外でPRできるチャンスはもちろんあるでしょう。

また、サイトに掲載する情報の魅力度によって同業他社との違いを打ち出すこともできるでしょう。

しかし繰り返しますが、比較サイトや一括見積サイトに於いてユーザーに支持されるのはほとんどの場合価格、つまり他と比べて高いか安いかであること、また、たとえサイトに登録している翻訳会社が価格以外の点を訴求したくとも、自由にデザイン、広報・宣伝が可能な自社サイト(ホームぺージやランディングページ)とは異なり、運営者の提供するテンプレートでは限界があることなどから、結果的に差別化できるのは見積もり(価格)だけになってしまい、同じサイトに登録している同業他社との厳しい競争を余儀なくされているのです。

翻訳の品質劣化を招く

それではなぜ、登録している翻訳会社間の価格競争にユーザーが注意する必要があるのでしょうか?

比較サイトや一括見積サイトに登録している業者が自社の利益を削ってでも同業他社より1円でも安い価格を提示することは、ほかの製品やサービスでは当たり前です。それが翻訳の外注ではユーザーの不利益につながるのはなぜなのでしょうか?

それは、サイトに登録している翻訳会社間の価格競争が、翻訳品質の劣化に直結するからです。翻訳はサービス業であり、労働集約型の産業です。

電化製品のように大量生産が可能な工業製品ではなく、生産方法の改善によって時間とともにコストダウンできるものでもありません。さらに、工業製品のようにスペック(性能、機能、仕様)が一定ではありません。

自動(機械)翻訳やクラウドソーシング、翻訳会社によるプロ翻訳者の翻訳など、現代では翻訳の方法も多岐に渡りますが、それぞれのなかでも翻訳のスペック(品質)は一定ではないのです。なぜなら、工程のほとんどが「人(人間)」の手によるものだからです。

クラウドソーシングや翻訳会社による翻訳はいずれもハンドメイドにつきその品質が一定ではないことはわかると思いますが、自動(機械)翻訳でさえもそのシステム開発会社やサービス提供会社によって翻訳のスペック(品質)は大きく変わるのです。

つまり、どこの、誰が、行なっても同じではない、場合によっては同じ人が行なってもタイミングによってはスペック(品質)が変わるのが翻訳というサービスにつき、単純に価格だけで業者を比較すべきではないのです。

しかし前述のとおり比較サイトや一括見積サイトでユーザーが発注先を選ぶもっとも大きなファクターは「価格」です。結果何が起こるか。それは、翻訳工程の見直しによる翻訳原価や翻訳に関わるスタッフの固定費の圧縮です。

低コストで対応可能な翻訳者を選ぶ、翻訳の校閲や校正に関わる人員を二人から一人に減らす、場合によっては校閲・校正工程を省く、翻訳会社による納品前の最終検品に掛ける時間を大幅に短縮する、従来ならすべて人が行なう作業を自動(機械)翻訳で代用する、など手段はさまざまですがそれらの結果生じるのが翻訳品質の劣化なのです。

参考情報が低質

比較サイトや一括見積サイトに掲載されている翻訳や翻訳外注に関する記事(情報)はほとんどの場合、(翻訳のプロではない)サイトの運営スタッフもしくは業務委託先のライターが執筆したものであり、それらの多くは翻訳会社や翻訳の業界団体がその知見を元に執筆、自社や自団体のサイトに公開している情報の寄せ集めであると冒頭に書きました。

それはつまりそこに掲載されている情報が、翻訳サービス提供者としての実体験や知見に基づいたものではない、表層的な、ユーザーが参照するには信頼性の低いものであるとも言えます。

また、そこに掲載されている情報に偏向的で恣意性のあるものが散見されることも、翻訳を本業とする者として少なからず危機感を抱いています。なぜなら、それらはユーザーに誤った価値観や期待値に基づいた翻訳会社や翻訳方法の選定を促す可能性があるからです。

十把一絡げにするのは申し訳ないので敢えて正確に述べると、この傾向は一括見積サイトよりも比較サイトに顕著です。比較サイトにもいろいろあるのでこれもひとまとめにして述べるには少し抵抗がありますが、アフィリエイト目的の「勝手比較サイト」には特に内容がいい加減であるものが多いと言わざるを得ません。

ステマ(ステルスマーケティング)という言葉が普及した今となっては、これらのサイトに掲載された情報を鵜呑みにするユーザーは少なく心配する必要はないのかもしれませんが、以下のようなタイトルでまとめられた記事には特にその内容に低質なものが多いように思われます。

  • 優れた翻訳会社トップ10
  • 翻訳会社まとめ
  • 翻訳会社ランキング
  • 徹底比較、翻訳会社

タイトルは仰々しくいかにも参考になりそうな気にさせるものですが、内容を見るかぎりいったい何を基準に選んで順位付けしているのかわからないというのが正直なところです。

そこに掲載されている情報の質がどの程度かは、翻訳会社が自社サイトに掲載しているコラムやブログなどを読んで比べてみればすぐにわかります。

ゆえにこのような情報を元に表面的な知識を得て、比較サイトや一括見積サイトでもっとも安い価格の翻訳会社に翻訳を外注するとどのようなことになるか、容易に想像できるのではないでしょうか。

まとめ

以上、「【必読】一括見積・比較サイトは安易に使うべからず」でしたがいかがだったでしょうか。

比較サイトや一括見積サイトが便利であることは間違いなく、サービスの目的からしてその存在意義に何ら異存ありません。

しかし、繰り返しますが比較サイト・一括見積サイトのサービスを通じて提供されるものは、翻訳会社に直接問い合わせて得るものとは少し異なるものであるということを理解しておく必要があります。

価格を追求する場合に比較サイトや一括見積サイトは有効です。登録業者を競わせて他よりも低コストで翻訳を調達することが目的であればもっとも効率的で効果的でしょう。

しかしその場合には翻訳会社に直接問い合わせて値引き交渉する場合と比べて、翻訳の品質が犠牲になる可能性があることを理解しておく必要があります。

「翻訳は、料金とクオリティが正比例するもの」です。信憑性の乏しい情報に振り回されて”安かろう悪かろう”をつかむという痛い目に遭わないようにどうぞお気を付けください。

翻訳の外注に失敗して次々と新たな翻訳会社に問い合わせざるを得なくなる「翻訳外注渡り鳥」のお客様もよくお見受けします。

そのような事態に陥らないためにも、翻訳外注についてのお困りごとは、当社のような翻訳サービス専門業者に直接お問い合わせください。

お問い合わせボタン