タイは東南アジアのなかでも、日本とは長い外交関係にある特別な国です。
これはビジネスに於いても同様で、タイには多くの日本企業が進出し、多くの日本人が滞在しており、その動きは今後も堅調に推移していくものと思われます。
タイでビジネスを行うには、どのような点に注意すべきなのでしょうか。本コラムでは、タイに於けるビジネスについて、法制度まで含み詳しくご紹介します。
※本コラムはLegalease Ltd社のコラムを元にお届けしています
タイの概要
正式名称 | タイ王国 |
人口 | 約6931万人(2019年) |
年平均人口増加率 | 0.2%(2018年) |
首都 | バンコク |
主要都市・地区 | バンコク、サムットプラカン、ノンタブリ、ウドンタニ、チョンブリ、ナコンラチャシマ、チェンマイ、ハッヤイ、パククレット、シラチャ、プラプラデーン、ランパン、コンケン、スラタニ、ウボンラチャタニ、ナコンシータマラート |
公用語 | タイ語 |
通貨 | タイバーツ |
一人当たりの所得 | 17,990ドル(約236万円、購買力平価) |
海外からの投資
海外直接投資(FDI、Foreign Direct Investment)はタイの経済発展の重要な要素であり、タイは地域の主要なFDI先のひとつです。
「UNCTAD(United Nations Conference on Trade and Development、国連貿易開発会議)世界投資報告2018」によると、数年連続して減少した後、FDIの流れはほぼ回復しており、2016年から2017年にかけて3.7倍、76億米ドル(約1兆円)に達しましたが、この回復はEU諸国による投資の増加、ASEAN諸国と日本からの力強い流入によるものです。
先端技術、革新的活動、研究開発への投資にさらなるインセンティブを提供する「Investment Promotion Act(投資奨励法)」および、このゾーンへの投資家に利益(税制補助、土地所有権、ビザ発行)を提供する「Eastern Economic Corridor(EEC、東部経済回廊)法」を通じて、2019年のFDIフローは満足できる結果を示すでしょう。
尚、2017年のFDI額は15%増加し、2190億米ドル(約28.8兆円)、同国のGDPの50.7%に達しました。日本とシンガポールは圧倒的に大きな投資国で、FDI流入額の半分以上を占めています。
マレーシア、米国、オランダ、中華人民共和国、インドネシア、台湾、英国、香港も主要な投資家で、製造業と金融・保険業は、全FDI流入額の70%近くを占めています。また、不動産、商業、情報通信分野への投資も重要です。
タイは、過去数年の間にビジネス規制の改革が最も進んだ国のひとつです。改革により会社設立のプロセスが容易になり、起業にかかる時間が27.5日から4.5日に短縮されました。
世界銀行の「ビジネス環境改善指数」におけるランキングもかなり改善され、ビジネス環境改善指数2019ランキングでは前年から1つ順位を下げて27位に位置付けています。
債務者と債権者、双方の権利が強化され、土地行政のシステムも強化されました。
2018年の外国人投資案件の分野別内訳
農産物 | 16,288百万バーツ(618億円) | 電気・電子製品 | 36,790百万バーツ(1,400億円) |
鉱物・セラミックス | 5,405百万バーツ(205億円) | 化学品・紙 | 45,601百万バーツ(1,730億円) |
軽工業・繊維 | 3,942百万バーツ(150億円) | サービス | 59,528百万バーツ(2,260億円) |
金属製品・機械 | 88,048百万バーツ(3,340億円) |
主な輸出品
コンピュータを含む機械類 | 429億ドル(5兆5,900億円) | 輸出総額の17.2% |
電気機械、設備 | 350億ドル(4兆5,600億円) | 輸出総額の14% |
自動車 | 304億ドル(3兆9,600億円) | 輸出総額の12% |
ゴム、ゴム製品 | 155億ドル(2兆180億円) | 輸出総額の6.2% |
プラスチック、プラスチック製品 | 145億ドル(1兆8,900億円) | 輸出総額の5.8% |
宝石・貴金属 | 119億ドル(1兆5,500億円) | 輸出総額の4.8% |
石油等鉱物性燃料 | 106億ドル(1兆3,800億円) | 輸出総額の4.2% |
食肉・水産加工品 | 66億ドル(8,600億円) | 輸出総額の2.6% |
有機化学品 | 61億ドル(7,900億円) | 輸出総額の2.5% |
穀物 | 57億ドル(7,400億円) | 輸出総額の2.3% |
主な輸入品
電気機械、設備 | 456億ドル(5兆9,400億円) | 輸入総額の18.2% |
石油などの鉱物性燃料 | 427億ドル(5兆5,600億円) | 輸入総額の17% |
コンピュータなどの機械 | 296億ドル(3兆8,500億円) | 輸入総額の11.8% |
宝石・貴金属 | 159億ドル(2兆700億円) | 輸入総額の6.4% |
鉄鋼 | 125億ドル(1兆6,300億円) | 輸入総額の5% |
自動車 | 102億ドル(1兆3,300億円) | 輸入総額の4.1% |
プラスチック、プラスチック製品 | 96億ドル(1兆2,500億円) | 輸入総額の3.8% |
鉄鋼製品 | 75億ドル(9,800億円) | 輸入総額の3% |
光学・技術・医療機器 | 60億ドル(7,800億円) | 輸入総額の2.4% |
有機化学製品 | 50億ドル(6,500億円) | 輸入総額の2% |
政治体制の概要
2014年5月22日までタイの政治は首相を元首とし、世襲君主を国家元首とする立憲君主制の枠組みの中で行われていました。司法は行政府・立法府から独立しています。
2014年5月22日のクーデター(タイ軍事クーデター)以降、「2007年タイ王国憲法」は失効し、タイは「国家平和秩序評議会(NCPO)」という軍事組織が支配し、国政を掌握しています。
国家平和秩序評議会(NCPO)の長は国民議会を廃止し、立法府の責任を引き受けましたが、憲法裁判所などの裁判所制度は憲法がなくてもまだ存続しています
2019年3月24日に文民政府の選挙が行われ、新首相と政府は間もなく発表される予定です(※)。
※2019年3月24日に8年ぶりとなる下院総選挙が実施された結果、5月までに上院議員(250名)が任命され、 6月5日、首相選出のための上下両院合同議会が開催、NCPOが立ち上げた政党である国民国家の力党が推薦するプラユット首相が首班指名を受けました。7月16日、憲法の規定に基づき、プラユット新政権閣僚一同がワチラロンコン国王への宣誓式を実施し、プラユット政権が正式に発足しました。同民政政権発足とともにNCPOは解散となり、タイは5年ぶりの民政復帰を果たしました。
タイの法制度概要
タイの法制度は法定法制度であり、立法府で可決された成文法に基づくものがほとんどです。主な法源は、最高法規であった憲法、法典や法律などの立法、政令、慣習などです。
WTOと自由貿易協定
タイは1995年1月1日からWTO(世界貿易機関)に加盟し、1982年11月20日から関税と貿易に関する一般協定に加盟しています。また、以下の貿易協定を発効しています。
- ASEAN自由貿易地域(AFTA)
- タイ-オーストラリアFTA
- タイ-ニュージーランドCEP
- タイ-日本EPA
- タイ-チリFTA
- ASEAN-中国FTA
- ASEAN-オーストラリア-ニュージーランドFTA
- ASEAN-インドFTA(物品)
- ASEAN-韓国FTA
- ASEAN-日本CEP 2.
尚、タイは「国際物品売買契約に関する国連条約(CISG)」には加盟していません。
ビジネス形態
タイの会社設立
タイの会社には、私的有限責任会社と公開有限責任会社の2種類があります。
私的有限会社は、商務省(MOC、Ministry of Commerce)管轄のビジネス開発局(DBD、Department of Business Development)に登録することで設立されますが、最低3人の株主を持つ必要があり、株主は株式の価値と同等の有限責任を享受します。
一方、取締役は個人的に会社に損失を与えたり、会社の目的に反する行為をしたり、法律に反する行為をしない限り、一般的に破産や清算の際に会社の債務について特別な責任を負うことはありません。
タイで私的有限会社を設立するためには、発起人または株主が認可を受け、会社名を予約する必要があります(ご参考までにですが、投資家は商務省(MOC、Ministry of Commerce)傘下のビジネス開発オフィスの「the name reservation guidelines(名称予約ガイドライン)」を見ることができます)。
尚、承認された会社名の予約有効期間は30日間で、延長はできません。
会社名予約の承認後、ビジネス開発局(DBD)にMemorandum of Association(MOA、基本定款)を提出する必要があります。
Memorandum of Association(MOA、基本定款)の作成と登録には、少なくとも3人の個人発起人が必要です。また、MOAには以下の内容が含まれていなければなりません。
- 設立予定会社の名称と住所
- 提案された会社の事業目的
- 株主責任制限の宣言書
- 登録される株式資本の額と1株あたりの価値
- 株主の氏名、住所、職業、署名および各株主の引受株式数
- 会社設立の登記簿
有限責任会社の登録にかかる政府手数料は、登録資本金100万バーツ(380万円)ごとに最低5,500バーツ(2万円)、最高275,000バーツ(104万円)で、これに最低限の認証料と印紙税2,000バーツ(7,600円)が加算されることになっています。
公開有限責任会社とは、株式を一般に販売する目的で設立された会社であり、株主の責任は株式の払込金額を上限として制限されます。また、その目的は会社の覚書に示されていなければなりません。
尚、「公開有限会社(plc、public limited company)法B.E.2535」は、公開有限会社の構造を以下のように特定しています。
- 株主数:15名以上
- 登録資本金:登録資本金の下限はなし
- 株式の価値と支払い:各株式の価値は同じでなければならず、発行時に全額支払われなければならない
- 取締役の数:5名以上、うち半数以上はタイに登記住所を有すること
公開有限責任会社を登録するための政府手数料は、登録資本金の額によって異なり、登録資本金が100万バーツ(380万円)の場合は1000バーツ(3,800円)からとなります。
タイ企業への外資導入
タイの法律では、外国人によるタイ企業の所有に制限を設けています。
これらの制限は、1999年の外国人事業法(Foreign Business Act、FBA)や、銀行法、保険法、土地法などの特定分野を規制する法律に規定されています。
また、会社によっては定款に外国人持株比率の制限を設けることも可能です。
政府による認可
FBA(Foreign Business Act、外国人事業法)は、タイにおける外国企業の活動を管理・規制する主要な法律です。
タイで事業活動を行おうとする外国企業は原則的に、FBA(Foreign Business Act、外国人事業法)に含まれる規定と制限に従わなければなりません。
外国企業はFBA(Foreign Business Act、外国人事業法)に添付されたリストに記載されている特定の事業を行うことは禁止されています。
なかでも、リスト1に指定された種類の事業を行うことは絶対に禁止されています。また、リスト2かリスト3に記載された事業を行おうとする外国人は、商務省(MOC)か事業開発局(DBD)の局長から許可を得る必要があり、いずれの場合も一定の政府承認が必要となります。
電気通信、銀行、保険などの特定分野における外国人所有権に関するさらなる制限は、
- 電気通信事業法2006(Telecommunications Business Act 2006)
- 金融機関事業法2008(Financial Institution Business Act 2008)
- 生命保険法1992(Life Insurance Act 1992)
- 損害保険法1992(Non-Life Insurance Act 1992)
などこれらの分野に関わる特定の法律に規定されています。
尚、以下の条件を満たす外国企業には、条件付きまたは、条件なしで例外が認められます。
- 投資委員会(BOI、Board of Investment)から販促特権を付与されている
- タイ工業団地公社(IEAT、the Industrial Estate Authority of Thailand)から販促特権を付与されている
- タイ・米国修好経済関係条約(the Treaty of Amity and Economic Relations between Thailand and the United States (Treaty of Amity))、タイ・オーストラリア自由貿易協定(TAFTA、Thai-Australia Free Trade Agreement)、日タイ経済連携協定(JTEPA、the Japanese Thai Economic Partnership Agreement)など、タイが締結している国際条約に基づき、資格を有する起業家はビジネス開発局局長に外国企業証明書の発行を申請することができます
申請書の提出から結果がわかるまで通常60日かかります。政府納付金は事業内容によって異なりますが、20,000バーツ(76,000円)から500,000バーツ(190万円)です。
また、各事業の内容によっては事業運営ライセンスが必要となる場合があり、それぞれの特別な法律で規定されています。
さらに、新しく設立した会社が従業員を雇用すると、社会保障基金や労働者災害補償基金への拠出のため、社会保障局に登録する必要があります。
土地の所有権に関する制限
土地法(The Land Code)では外国企業が土地の所有権を持つことを禁じています。
土地法における「外国企業」の定義は、連邦政府による定義よりも厳しく、登録株式の49%以上を外国企業が所有している場合、タイ企業でも外国企業として扱われます。
ただし、外国人はコンドミニアム(住居)の49%まで所有することができます。
M&Aの承認とプロセス
タイにおけるM&A(企業の合併・買収)に関連する法律は、買収・合併される企業(ターゲット)によって異なります。
- タイの会社(Thai Company Limited)の株式取得については、CCC(Civil and Commercial Code of Thailand、タイ民商事法典)第1238条から1243条が適用されます
- タイの公開会社の場合、「1992年公開有限責任会社法(PLCA、the Public Limited Company Act)」が適用され、関連するケースでは「1992年証券取引法(SEC Act)」が適用されます
- タイ証券取引所に上場しているタイ国PLCの(有限責任会社)の買収については、タイ証券取引所(SET、 the Stock Exchange of Thailand)の追加規則および、証券取引委員会(SEC、the Securities Exchange Commission)の規則および規制が関連します(例:公開買付けの要件など)
- タイの会社の資産の取得に関しては、民商法典(CCC)の規則が適用され、PLC-Act.第107条が適用される場合があります。
その他、多数の法律、規制および法的側面が適用される可能性があります。
- 貿易競争法
- タイ投資委員会(BOI)が推進する企業に対する許可および、報告要件
- タイ国工業団地公社(IEAT)による許認可
- 外国人事業法
- 土地所有企業の買収に関する土地法の規制
- 雇用問題および現地の労働法
- 知的財産権
- 借入金と負債
- 紛争・訴訟
駐在員事務所
駐在員事務所とは、タイにある本社や関連会社、グループ会社のために、タイ国内でサービス業を営むものです。
駐在員事務所は、経費の支払いを除き、収入を得ることなくこれらのサービスを提供し、また、注文書の受領、売買契約の締結、商談(自己または親会社のために)を行うことができないという意味で、法的形態を有していません。
駐在員事務所が締結できるのは、事務所の賃貸契約など、自らの業務に不可欠な契約のみです。
また、駐在員事務所は外国に拠点を置く本社に対して、以下のような限られた活動を通じて、収益を上げないサービスを提供することができます。
- タイ国内での商品・サービスの調達
- 本社がタイで購入する商品の品質や数量を検査・管理
- 本社の新製品・新サービスに関する情報発信
- 現地での事業展開や活動に関する本社への報告、または
- 本社が流通業者や消費者に販売する商品に関する様々な分野でのアドバイスの提供
駐在員事務所は常に外国にあるものとみなされます。
このため、駐在員事務所の代表者または外国企業の取締役は、営業開始前に外国営業許可証を申請しなければなりません。
就労許可証
タイで合法的に働くには、外国人はワークパーミット(就労許可証)を申請する必要があります。
ワークパーミット(就労許可証)とは、外国人の地位、現在の職業や仕事内容、働いているタイの会社などが記載された法的文書です。
なかにはタイ国民にのみ制限されている職業もあるため、ワークパーミット(就労許可証)はタイ国内で外国人に許可されている仕事や職業を行うためのライセンスとしての役割も果たします。
タイに入国する外国人は、ビザの種類に関係なく労働許可証を取得しない限り就労することはできません。
また、タイで働こうとする人は、正しい種類のビザを保持していなければワークパーミット(就労許可証)を申請する資格がありません。
タイでワークパーミット(就労許可証)を取得するためには、外国人は「非移民ビザ」を取得する必要がありますが、それはタイ入国前に取得する必要があります。
外国人が非移民ビザを取得したら、ワークパーミット(就労許可証)の手続きを開始することができますが、手続きには7営業日かかります。尚、ワークパーミット(就労許可証)の申請は労働省で処理されます。
外国人は、非移民ビザまたは居住ビザを所持し、ワークパーミット(就労許可証)のための書類を提供してくれる雇用主があり、従事する職業が外国人に禁止されていない限り、労働許可証を申請する資格がああります
ワークパーミット(就労許可証)で外国人を雇用できるタイの会社は、登録資本金が200万バーツ(760万円)以上である必要があります。
官民パートナーシップ
2017年12月、タイ政府はパブリック・プライベート・パートナーシップ(PPP、Public Private Partnership)としてインフラプロジェクトを開発できるセクターを定め、またPPPパイプライン内のプロジェクトを列挙した新しいPPP戦略計画を発表しました。
この新戦略計画はタイ政府と経済にとってのインフラ整備の重要性を再確認し、タイ国内外のインフラ開発業者や投資家に新たな機会を提供するものです。
民間参入が必要な分野には、都市鉄道輸送線、大都市圏の有料道路、公共物流港、高速鉄道の開発が含まれます。
民間参加が奨励される分野は、通信ネットワーク、高速インターネット網、都市間有料道路、物流基地、共同発券、空港付帯サービス、水処理施設、給水・灌漑システム、公共教育機関、公衆衛生インフラ、医薬品・医療機器施設、科学技術・イノベーションインフラ、デジタル経済インフラ、コンベンションセンター、低・中所得、高齢、障害者、恵まれない人向けの施設、貨物鉄道、空港、クルーズターミナルと施設、電力インフラなどが挙げられます。
サービス分野
タイへの投資を促進するため、「The Investment Promotion Act(投資促進法)B.E. 2520 (1977)」に基づく投資委員会(BOI、the Board of Investment)は、以下のような様々なインセンティブを提供することによりサービス分野への投資を奨励しています。
- 最大13年間の法人税免除、最大8年間の法人税50%減免、機械や原材料・資材の輸入税免除など
- 100%外国人所有権などの税制優遇措置(ただしFBAのリスト1に含まれる活動や、他の法律に記載される活動を除く)
- 土地を所有する権利、外国人技能労働者や専門家をタイに呼び寄せる権利
このような投資優遇措置の利用を希望するサービス分野の外国企業は、以下の点を考慮しておく必要があります。
- 環境保護や最低資本投資額、プロジェクトの実現可能性など、プロジェクト認可のための基準
- タイ人がタイ企業の登録資本金の51%を保有することおよび、他の法律で規定されたその他の条件など、外国人持ち株に関する基準
BOI(投資委員会)は、投資促進の対象となる特定の活動に対して適切と思われる外国人持ち株比率の制限を設定することができます。
尚、東部経済回廊(EEC、the Eastern Economic Corridor)や経済開発特別区(SEZ、Special Economic Development Zones)への投資には、さらに優遇措置があります。
「The Investment Promotion Act(投資促進法)B.E. 2520 (1977)」以外に、「The Industrial Estate Authority of Thailand Act(タイ工業団地公社法) B.E. 2522 (1979)」、「The Petroleum Act(石油法)B.E. 2514(1971)」などの法律による投資優遇措置があります。
外国契約者
タイでは近年インフラ整備が加速しており、EPC(engineering, procurement and construction、設計・調達・建設)事業への参入を検討している外資系企業には多くのビジネスチャンスがもたらされています。
しかし投資家は、タイでのビジネスチャンスに時間、労力、資金を費やす前に、法律や規制の枠組みを十分に理解する必要があります。
タイにおける外国人の事業活動への参加に関連する最も重要な法律は、「the Foreign Business Act(FBA、外国人事業法)BE2542(1999年)」です。
FBA(外国人事業法)に基づくリストでは、建築、エンジニアリング、建設サービス、登録資本金1億バーツ(3億8千万円)未満の卸売・小売業、その他付帯サービスなど、エンジニアリング会社や建設会社が従事しようとする多くの活動に制限を設けています。
タイ人以外が株式の半分以上を保有する企業は、FBA(外国人事業法)の下で「外国人」とみなされ、その制限を受けることになります。
タイでこれらの活動を行おうとする外国企業および、外国人が過半数を所有するタイ企業はまず、MOC(商務省)のビジネス開発局から外国企業許可証または外国企業証明書を取得しなければなりません。
FBA(外国人事業法)に基づくコンプライアンスを評価する目的で、個別の事業がそれぞれ精査されますが、たとえば建築家としての外国事業免許を持つ会社が、自動的にエンジニアリングや建設活動に従事することはできません。
外国企業は専門的なライセンス要件にも注意しなければならないので、関連する専門機関の規則を遵守することをお勧めします。
フランチャイズ事業
タイにおけるフランチャイズ・ビジネスは現在、規制がなくライセンスも不要なこともあり、多くの有名なフランチャイズ・レストランやブランドがタイで営業しています。
フランチャイズビジネスには商標法、貿易競争法、特許法、著作権法、営業秘密法、外国人事業法などが適用され、大きな影響を及ぼしています。
現在審議中のタイのフランチャイズビジネス法の草案では、「フランチャイズとはフランチャイザーと呼ばれる一方の当事者が、他方の当事者であるフランチャイジーに、フランチャイザーの形態、システム、手順、知的財産権を用いて事業を運営させること、あるいはその権利を用いて特定の期間または特定の地域で事業を運営することに合意する事業の運営」と定義されており、当該事業はフランチャイザーのビジネスプランの指示に基づいており、フランチャイザーに償還する義務があるものとなっています。
現在の草案では、フランチャイジーはフランチャイズライセンスを必要とし、フランチャイズ契約は書面によるもので、商務省に登録されなければなりません。また、規制機関としてフランチャイズ委員会庁が創設される予定です。

財政問題
税制
タイの国際ビジネスセンター(IBC、International Business Centre)制度が2018年12月28日に制定され、翌日から適用されました。
法人所得税は関連会社から受け取る適格サービス所得に対して8%、5%、3%の税率に引き下げられ、適用税率はタイでの年間支出額によって異なり、それぞれ6,000万バーツ(2億3千万円)、3億バーツ(11億4千万円)、6億バーツ(22億8千万円)となりました。
IBC(国際ビジネスセンター)の制度では15年間、以下のようなさまざまな税制優遇措置があります。
- IBCが子会社から受け取る配当金はタイ国税が免除
- 一定の条件下での源泉徴収税の免除
- 個人所得税の定率減税
ただし、これら免税措置を受けるためには、以下の要件を満たす必要があります。
- 最低1,000万バーツの払込資本金を維持すること
- 10人以上の熟練した従業員を雇用していること
IBC(国際ビジネスセンター)のステータスを持つ企業が1年以上連続して基準を満たさない場合、IBCのステータスは取り消され、優遇措置が与えられた最初の年から、罰金や課徴金とともに優遇措置が取り直される可能性があります。
利益の本国への送還
配当金の支払いに加え、ロイヤリティやサービス料の支払いなど、さまざまな方法で利益を本国へ送金することができます。
外国為替管理
「The Exchange Control Act(為替管理法)B.E. 2485 (A.D. 1942) 」の改正では、外国為替に関するすべての事項を規定し ています。
原則として、外貨に関わるすべての事柄はタイ銀行によって規制され、その許可を得る必要があります。
しかし、1990年5月22日以降、タイ銀行による外国為替管理はかなり緩和されており、現在ではタイバーツや外貨を使った一部の取引は事実上無制限に行うことができ、タイ中央銀行の許可を必要とする取引はごく一部に限られています。
トランジット中の個人は通常、外貨および譲渡可能な商品を無制限にタイ国内に持ち込むことができます。また、持ち込んだ外貨を限度額なしで自由に持ち出すことができます。
ただし、タイとの国境を接する国(ミャンマー、ラオス、カンボジア、マレーシア、ベトナム)への旅行については、50万バーツ(190万円)までの持ち出しが可能です。尚、タイ通貨の持ち込みに制限はありません。
居住者がタイに持ち込むことのできる外国通貨や譲渡可能な金融商品の量には通常、制限はありません。
ただし、そのような通貨や商品はすべて、受取日または入国日から7日以内に商業銀行の外貨建て口座に売却するか、預け入れなければなりません。
投資ファンドやオフショアローンなどの形で外貨を輸入することは制限されていません。
ただし、そのような外貨は、受領または入国した日から7日以内に売却するか、タイバーツに交換するか、認可銀行の外貨口座に預け入れる必要があります。
5,000米ドル(65万円)または、その相当額を超える外貨の売却、両替、預金を行う場合は、申請書F.T. 3または、F.T. 4を認可銀行に提出しなければなりません。
移転価格税制
企業間の攻撃的な価格設定に対抗し、そのような支払いが市場価値で反映されることを保証するためのガイドラインが発行されました。
このガイドラインは関連企業グループ内での利益や損失の操作を防止し、関連企業間で取引される商品やサービスが独立企業間価格で価格設定されていることを保証することを目的としています。
歳入庁は、市場価値を下回ると判断された移転から生じる所得を評価する権限を有します。
国有企業と民営化
2017年10月現在、タイ王国政府は56の国有企業(state-owned enterprises、SOE)の過半数を保有しており、その内訳は通信、発電・配電、輸送、水管理などの主要経済セクターに集中しており、非金融SOEが46、国有銀行、政府質屋、専門金融機関(SFI)など金融SOEが10という内訳です(今後更新されるかもしれません)。
2016年、SOE(国有企業)の総資産は14兆9000億バーツ(4508億米ドル、58兆7000億円)、収益は4兆バーツ(15兆2000億円)、利益は2910億バーツ(11兆390億円)にのぼりました。
全SOE(国有企業)の平均資産収益率は1.6%で。SOE(国有企業)の2017年度の総投資予算は8000億バーツ(242億米ドル、3兆350億円))です。
タイ証券取引所(SET、The Stock Exchange of Thailand)は、タイの国立証券取引所ですが、2017年末時点でタイ証券取引所の上場企業は688社、時価総額の合計は17兆9200億バーツ(約5600億米ドル、73兆円)です(今後更新されるかもしれません)
競争
現在別法人であるタイ貿易競争委員会事務局(OTCC、the Office of the Trade Competition Commission of Thailand)の自律性と公平性を高める目的で、「1999年貿易競争法(以下「TCA(The Trade Competition Act)」)」が2017年初めに改正され、2017年末に施行されました。
その結果、長年の政策目標である平等で公平な競争環境を確保するため、金銭的罰則を含む様々な制裁を課す権限や、反競争的行為の停止、中止、修正を命じる停止命令を出す権限を有するようになりました。
TCA(1999年貿易競争法)は様々な分野の事業者に適用され、場合によっては国営企業にも適用されます。
市場支配力の乱用に関して考慮すべき追加的な要素を規定し、合併管理に関して定義と要件の範囲を拡大し、損害を受けた者による賠償請求権を付与し、不公正な取引方法の禁止を明確に定めています。
知的財産
タイにおける知的財産(IP、The intellectual property)環境は、近年改善を続けています。
2017年12月、米国通商代表部(USTR)が実施した周期外レビューの結果、タイは「Special 301 Priority Watch List(特別301条優先監視リスト)」から「Watch List(監視リスト)」に移行しましたが、2018年も同結果を維持しました。
公式な執行努力に改善が見られ、2017年のUSTR Notorious Markets Reports(2018年1月に発表、悪名高い市場報告書)にはタイの市場は掲載されていませんが、知的財産保護と執行に関する多くの懸念が依然として残っています。
オンラインとモバイルの海賊行為は増え続け、商業規模での物理的な商品の海賊行為と偽造は依然として問題視されており、米国は、より多くの潜在的な犯罪者を抑止するような刑罰を課すようタイに引き続き要請しています。
米国の知的財産権所有者はタイ市場に製品やサービスを導入する前に、タイで知的財産権の保護を受けることを検討すべきです。
企業は自社の技術を現地パートナーに開示する前に秘密保持契約の締結を要求したり、現地の弁護士に助言を求めたり、タイ知的財産法の専門家に相談したりするとよいでしょう。
タイの知的財産制度は知的財産局(DIP、The Department of Intellectual Property)が監督しています。
米国のIP(知的財産)所有者はタイで商標、特許、意匠、集積回路のレイアウト設計、地理的表示などのIP(知的財産)権利を登録することができます。
DIP(知的財産局)で知的財産権の出願をする場合、タイでの送達先住所と現地代理人または弁護士が通常必要となります。
世界貿易機関(WTO)および、世界知的所有権機関(WIPO)のメンバーとして、タイは知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS、Trade-Related Aspects of Intellectual Property Rights)で定められた国際知的所有権基準をおおむね遵守しています。
タイはまた、特許協力条約(PCT、the Patent Cooperation Treaty)および、商標の国際登録に関する「マドリッド協定(the Madrid Agreement Concerning the International Registration of Marks、通称マドリッドシステム)」にも加盟しています。
特許や商標の出願人はタイで保護を求める場合、これらの国際的な制度を利用して国際特許出願や商標出願をすることができます。
タイでは著作権は登録不要で保護されますが、紛争が生じた場合の所有権の証拠として有効なため、DIP(知的財産局)の著作権事務所で正式に記録することが推奨されます。
また、著作権表示も著作物に貼付する必要があります。
ビジネスで使用するデータ、数式、その他の機密情報などの企業秘密は、所有者が秘密を維持するための適切な手段を提供すればタイで保護される場合があります。
法制度
タイは民法を主体とする法体系ですが、多くの影響を受けており、ハイブリッドな法体系となっています。
19世紀、タイの法制度はフランスの民法を手本に発展したため、主に制定法に基づいており、主な規定はヨーロッパの民法の法域のものに似ています。
また、三権分立などのコモンローの特徴や、古代ヒンズー教の伝統も見られます。
タイの法制度は制定法主義であり、立法府によって成立した成文法に基づくものがほとんどです。主な法源は最高法規である憲法、法典や法律などの立法、政令、慣習などです。
司法判断に拘束力はありませんが、実際には最高裁判所の判決は説得力があり、ある程度の判例価値があるため、しばしば二次的な権威ある法源として利用されます。
裁判制度
タイの司法は、司法裁判所、行政裁判所、軍事裁判所、タイ憲法裁判所の4つの制度から構成されています。
仲裁
ニューヨーク条約とジュネーブ条約の両方に加盟しているタイでは、仲裁は裁判に代わる手段です。
2002年以降、タイは国際商事仲裁に関するUNCITRALモデル法に従って、独自の仲裁メカニズムを構築していますが、解釈や執行の複雑さを避けるためタイでは現在、国内仲裁と国際仲裁に同じ枠組みが採用されています。
タイの現在の仲裁手続きは、当事者が最も効率的と考える方法で手続きを組み立てる自治を与えています。
また、当事者が自らの主張と議論に関して、合理的な審理を受ける機会を得られることも保証されています。
2000年以降、外国人は仲裁人になることができるようになりました。また、外国人弁護士は仲裁手続において依頼人を代理することもできます。
タイでは仲裁がますます注目されるようになってきています。
ビジネス部門は別として、保険局、知的財産局、証券取引委員会のように、タイでの訴訟量を減らすためにこの仕組みを利用している政府機関もあります。
タイの裁判所は、当事者の契約において仲裁による紛争解決が規定されている場合、仲裁合意を執行する責任を負います。
裁判所は、仲裁の合意が守られていないと判断した場合、提訴された事件を処理する義務があり、当事者が仲裁人の選任に同意しない場合、仲裁人を選任することができます。
仲裁合意は判例と見なすことはできませんが、裁判所と司法制度は仲裁の重要性と仲裁裁判所の本質的な役割を受け入れています。
また、仲裁のプロセスを支援するために、司法省のタイ仲裁院と貿易委員会のタイ商事仲裁院という二つの機関が設立されました。
外国仲裁判断の承認と執行
タイは外国仲裁判断の承認及び執行に関する条約(別名ニューヨーク条約)に加盟しているため、外国の仲裁判断はタイで執行可能です。
仲裁判断は、その判断が執行可能となった日から3年以内に、承認と執行のために裁判所に提出されなければなりません。
しかしその執行には、2002年タイ仲裁法の第43条と44条に規定された理由で執行を拒否するタイの裁判所の裁量が適用されます。
最後に
インフラや各種オペレーションのレベルが高い、日系企業が多く進出済みのため先例やノウハウに恵まれている、アジアの中央というロケーション、温暖な気候、日本人に近い性格、低コストなど良い面がクローズアップされるタイですが、政情不安などのリスクも軽視できません。
新型コロナウイルス感染症(COVID‑19)による世界的な悪影響からもようやく脱しつつある今、ツーリストやビジネス渡航者を中心に、世界経済は2020年春以前の状況を少しずつ取り戻していくように思われます。
戦争を始め世界的にはもちろんまだ予断を許さない状況ではありますが、感染症による経済的ダメージから早く回復するためにも、世界的なトラフィックが今後急激に回復することは間違いないでしょう。
まとめ
以上、「【タイでビジネスをするとき】注意すべきこと」でしたがいかがでしたでしょうか。
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