インターネットと通信技術の進歩は、50年前には考えられなかったような新しいビジネスチャンスを、今日の大企業にも中小企業にももたらしました。
ウェブページと携帯電話ひとつあれば、誰でも、世界のどこにいても、新しい顧客、パートナー、サプライヤーと接触することができるのです。
しかしグローバルなコミュニケーションとローカルなコミュニケーションは同じではありません。技術的なハードルが高いだけでなく、言葉の壁や文化的なニュアンスにも対応する必要があります。
※本コラムはbiz fluentのコラムを元にお届けしています
目次
グローバルコミュニケーションの定義
グローバル・コミュニケーションは、他のコミュニケーションと同様「世界のどこかの個人やグループから、別の個人やグループにメッセージが送られること」と定義することができ、次の5つのステップで構成されます。
- ある国の人または組織がメッセージを送る
- メッセージは暗号化される
- メッセージはチャネルまたは、媒体を介して送信される
- 別の国にいる受信者がメッセージを解読する
- 受信者がメッセージを受信する
グローバルな通信を行う場合、問題が発生するのは通常、エンコードとデコードのタイミングです。
他のコミュニケーション同様、メッセージが意図したとおりに受け取られることを保証するのは送信者の責任です。
グローバルコミュニケーションの例
グローバルコミュニケーションの代表的なものに電子メールがあります。
ある国の人がメッセージを入力し、送信ボタンをクリックすると、メッセージはパケットにエンコードされ、インターネットを通じて受信者に送信されます。
受信者は別の国でログインし、電子メールを開いてメッセージを解読し、メッセージを取得するというものです。
あなたの会社のホームページを他の国の人が読むことも、グローバルコミュニケーションの一例です。
ホームぺージ上のメッセージはHTMLで書かれ、エンコードされてサーバーにアップロードされ、インターネット経由でアクセスされ、ウェブブラウザ(おそらく翻訳プラグイン)でデコードされて、受信者が読むことになるのです。
これらの例ではノイズによってメッセージが歪んだり、解読不能になったりすることがあります。
電子通信の場合、ノイズには文章の文脈を変えてしまうタイプミスから、インターネット接続に失敗してまったく何も通信していないように見えてしまうものまで、あらゆるものが含まれます。
グローバルコミュニケーションでは、言語や文化の違いによりメッセージのエンコードとデコードが自国内の人とのコミュニケーションより複雑になることがあります。
送信者または受信者のどちらかがメッセージの送信に使用されている言語に精通していない場合、翻訳の出来具合によってメッセージを歪め、ノイズを追加することとなってしまいます。
また、ちょっとした文化の違いもノイズになります。
たとえばほとんどのアメリカ人は「乾杯」という言葉からお酒を連想しますが、イギリス出身の人は「ありがとう」や「さようなら」という意味でこの言葉を非公式に使うこともあります。
カナダのケベック州では、自動車を「un char(フランス語で戦車)」と呼ぶことがありますが、ほとんどの翻訳サービスでは「un char」は「chariot(戦闘用馬車)」または「tank(戦車)」と直訳されてしまいます。
グローバルコミュニケーションは異なる文化を持ち、異なる言語を話す複数の受信者が同じメッセージを受け取る場合、またチャンネルにさらなるレイヤーが加わる場合、より複雑なものになります。
たとえば世界的な指導者の演説が全世界に配信された場合、ある地域の人はそのニュースを喜び、ある地域の人はそれを不快に思うかもしれません。
この場合、翻訳者、ニュース担当者、編集者、コメンテーターがそれぞれ異なる解釈をした上で、意図する読者に伝えるため、チャンネル自体が多くの異なるレイヤーを含むことになりかねません。
ビジネスにおけるグローバルコミュニケーション
グローバルな状況ではコミュニケーションに失敗する可能性が非常に多いため、特に言語や文化の違いに関連する潜在的なエラーを可能な限り減らすよう、企業は努めなければなりません。
他国の人々とビジネスを行う前に、組織は異なる文脈で発生し得る文化の違いについて熟知しておく必要があり、それにはその国での経験が豊富なコンサルタントを雇う必要があるかもしれません。
Purdue(パデュー)大学のDebra Davenport(デブラ・ダベンポート)氏は、他国での大規模な製品発売のような大事業には、その国の、次のような専門家からなるチームを雇うことを勧めています。
- 企業法律事務所
- 手順とエチケットの専門家
- メディアコンサルタント
- 人事・労働法の専門家
- 経営コンサルティング会社
- 企業内人類学者
- 市場調査会社
これらの専門家はそれぞれ現地の法律や習慣に関する見識を提供し、新規事業が不必要に複雑化したり、負債を抱えたりすることなく、開始前から企業の評判を落とすことがないように支援することが可能です。
中小企業には専門家チームを結成する予算はないかもしれません。しかし現地の法律や文化、言語に精通していることは必要なのです。
グローバルなビジネスコミュニケーションにおける言葉の壁
相手の言語でコミュニケーションする場合、使用する言葉が正しいかどうかを確認するのは常にあなたの責任ですが、それには広告やマーケティングも含まれます。
過去数十年の間、多くの大企業や成功した企業が、言いたいことを別の言語に翻訳する際にミスを犯し、しばしば不快な、あるいは滑稽な結果を招いてきました。
ここではいくつかの翻訳ミスの例をご紹介します。
- ドイツ
- Clairol(クレアロール)社は「Mist Stick(ミストスティック)」という名前の新しいカールアイロン(コテ、美容用品)を販売しましたが、ドイツ語でミストは「糞尿」を意味します。
- 中国
- コカ・コーラが中国での製品販売を開始した際、名称が誤訳され「bite the wax tadpole(蝋人形を噛め)」と意味の漢字が当てられてしまいました。
- エチオピア
- Gerber(ガーバー)社がこの国でベビーフードの販売を始めたとき、他の国と同じように「かわいい幼児」をモチーフにしたラベルデザインを使用しました。しかし誰もが文字を読めるわけではないエチオピアでは、「ラベルの絵は瓶の中身を表すだけ」という習慣があったのです。
- メキシコ
- Parker Pen(パーカーペン)社がこのスペイン語圏の国でペンの販売を始めたとき、"It won't leak in your pocket and embarrass you(ポケットの中で(インクが)漏れて恥ずかしい思いをすることもありません) "というモットーを "It won't leak in your pocket and make you pregnant(ポケットの中で漏れて妊娠することはありません)"と翻訳してしまいました。
- タイ
- IKEA(イケア)社は世界中で使われているスウェーデン語の商品名を使ってタイの市場に参入しました。しかしタイ語でそれらの名称の多くは「セックス」や、「getting to third base(肉体関係に結ぶ)」のような性的な意味合いを持ちます。

グローバルビジネスコミュニケーションにおける文化の壁
たとえばアメリカの会社がインドでソフトウェア開発チームを雇うなど、自国内で開発するよりも手頃な料金で開発できることから、他国の会社やコンサルタントを雇うのは一般的な方法です。
その際の最初の会話で、アメリカ人マネージャーはプロジェクトの要件、タイムライン、成果物にフォーカスするかもしれませんが、インド人マネージャーは新しいクライアントと強固な関係を築くことを重視するかもしれません。
これに対してアメリカ人マネジャーがプロジェクトの要件と成果物を理解し易く丁寧に説明しても、インド人マネジャーは多くの疑問を持ちつつも、質問することはありません。
それどころかインド人マネージャーはただ「はい」」と答え、プロジェクトを引き受けます。
数週間後、インド人チームがプロジェクトの第1フェーズを完成させるも、それはアメリカ人の期待に応えるものではなかったため、両者の関係が崩壊してしまいました。
これは文化的なニュアンスの違いによるものです。「はい」という言葉は必ずしも、インド人マネージャーがすべてを理解し、同意していることを意味しているのではなく、単に関係を前進させるために使う言葉だったのです。
アメリカ人マネージャーはこのことを理解していれば、合意できたと勘違いする前に、新しい関係を育むためにもっと時間をかけてこの問題を回避することができたはずです。
グローバルコミュニケーションに潜む問題点
コミュニケーションがローカルからグローバルになると、文化的な落とし穴や言葉の壁だけでなく、さまざまな問題が発生します。
たとえば毎日受け取る電子メールやメッセージの数は増え続け、その多くが異なるタイムゾーンから送信され、受信者が起きていない時間帯に読まれることも少なくありません。
多くのビジネスパーソンが1日に受け取るメールの数は200通にも上り、じっくり読んで返信するには多過ぎる結果、多くのメールはスキャンされただけで削除されたり、ソフトウェアによってフィルタリングされたりして、読まれることすらないのです。
ビジネスパーソンは最も重要な電子メールが大量の電子メールに埋もれてしまわないように、注意深く行動しなければなりません。
新規顧客候補からの正当な問い合わせもスパムと間違われる可能性があり、ビジネス・パートナーからの重要な質問も無関係なスレッドの返信に紛れてしまうかもしれません。
電子メールを送っても、そのメッセージが受信者によって受信され、読まれるという保証はないということです。
もうひとつ、ビジネスにおけるグローバルコミュニケーションの難しさは、現地企業との競争に於けるハンディキャップを克服しなければならないということです。
対面での会議をビデオ通話に置き換えることは可能ですが、ボディランゲージの微妙なニュアンスは必ずしもビデオでは捉えきれません。
たとえばプレゼンテーション中に経営者が見せるしかめっ面などは、ビデオでは見逃しがちな重要な視覚情報です。
このほかにも、海外とのやり取りで失われる重要な情報はたくさんあります。
自国内や地元でビジネスをしているかぎり、ビジネス街にあって看板やラジオで何年も広告を流している会社と、町はずれのマンションにある会社を見分けるのは、たいていの場合簡単です。
一方、異国の会社から話を持ちかけられた場合、ホームページに記載されている内容だけではあまりピンとこないかもしれません。海外の企業について調べるには、通常より多くの時間とリサーチが必要になります。
さらに、外資系企業の拠点がある地域の調査にも時間をかける必要があるかもしれません。たとえば次のようなことを知る必要があります。
- その国の通貨は強いか?
- 現地経済は安定しているか?
- 貿易協定や関税など、ビジネスに影響するようなものはないか?
- 外国企業が支払いに応じない場合、どのような手段があるのか?
- これらの答えのいずれかに変更があった場合、どのように確認するか
グローバルコミュニケーションのメリット
グローバルにビジネスを展開することには、リスクはあるものの、そのリスクをはるかに上回る多くのメリットがあります。
グローバルにビジネスを展開することで、製品やサービスを販売するための新しい市場が開けるだけでなく、自国内では手に入らないような資源や人材にアクセスすることができるようになります。
ビジネスによって違いはありますが、(前述の)コカ・コーラが翻訳の問題で世界的に販売を停止したわけではないことは注目に値します。
世界がより密接につながり、通信技術が進化し続ける中で、全体としてのメリットはこれら新しい技術自体の市場への浸透によって説明することができます。
世界がグローバルにつながればつながるほど、人々は新しいグローバル・コミュニケーション・テクノロジーをより早く取り入れるようになりました。
電報に代わる、当時最大のグローバルコミュニケーション技術であった電話は、家庭の50%に市場浸透するまでに71年かかりました。
電気が同じ普及率に達するには52年、ラジオは28年、カラーテレビは18年かかりましたが、パーソナルコンピューターはわずか19年、携帯電話は14年、インターネットは10年で全世帯の50%に普及しました。
すでにグローバルなレベルで競争している企業が増えているため、彼らと競争しようとする企業は、全世界と効果的にコミュニケーションするためのチャンネルを開かなければならないのです。
まとめ
以上、「【グローバルコミュニケーション】とは何なのか?」でしたがいかがでしたでしょうか。
当社は翻訳の目的や、翻訳する文書の特徴、性質などを正しく理解、見極め、相手国の文化的背景を念頭に、ホームぺージや契約書、取扱説明書、プレゼン資料、リリース、ゲーム、アプリその他あらゆるビジネスで必要なドキュメント、テキストの「プロ翻訳者による翻訳」を、英語を中心に世界120か国語で行います。
高い品質が求められる外国語対応や翻訳についてもしお困りでしたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。