資本主義とは?そう問われたとき多くの人は「政府の介入なしに企業が利益を追求する自由な市場システム」と答えるでしょう。
しかし資本主義とはそれだけではありません。このシステムは独特の歴史と前提を持つ、人間社会全体の理論に基づいているのです。
今日、事実上すべての西洋経済は資本主義にもとづいて組織されています。グローバル資本主義はそのイデオロギーが国境を越えたときに発生するのです。
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目次
資本主義の意味するものは?
資本主義制度の下では、私的な個人や企業が生産手段、つまり商品を製造・生産するために必要な土地、工場、機械、天然資源を所有しています。
さらに重要なことは、彼らはその富を使ってさらに富を生み出すことで、その所有権から収入を得ていることです。これらの富の所有者の基本的な原動力は利潤の追求です。
資本主義の下では、生産物の所有者はより良い製品を生産し、より大きな市場シェアを獲得するために競争しますが、成長と利益の追求を原動力とするこのような競争は、物価の高騰を抑えるのに役立ちます。
資本主義企業では所有者は株主と呼ばれます。株主は保有する株式の数に応じて会社をコントロールし、投資の見返りとして利益の分配を受けます。
これに対して労働者は、自分の労働力を企業に売って賃金を得ています。つまり労働は他の商品と同じように商品なのです。
基本的に企業は労働から対価以上の価値を引き出し、より大きな利益を得ることを目指しますが、資本主義社会では労働力が区分され、ある労働者は他の労働者よりもはるかに多くの収入を得ることができます。
なぜなら、ある種の労働が(他と比べて)より大きな価値を持つと理解されるからです。
資本主義はそれ自体では機能しません。資本主義の価値を支持し、正当化し、この特定の世界観を正しいと思わせるような文化や政治システムの中で、資本主義は機能する必要があるのです。
特に資本主義には需要と供給の法則に従ってモノが売買される自由市場経済のサポートが必要です。この法則により需要が上がれば、価格は上昇します。
資本家はこの利益の分け前を得るために生産を増やしますが、これにより人々の雇用が維持され、消費者の必要に応じた商品の生産が保証されるのです。
資本主義には消費社会という支えも必要です。このシステムはすべての生産物を人々が喜んで消費しない限り機能しないのです。
グローバル資本主義の意味するものは?
グローバル資本主義とは、国境を越えた資本主義のことです。それ以前の三つの時代(エポック)に対して、資本主義は第四の時代(エポック)と呼ばれます。
資本主義がどのように発展し、現在のようなグローバルな体制になったのか、その歴史を簡単に説明します。
資本主義の最初の時代である「商業資本主義」は、14世紀にまでさかのぼります。ヨーロッパ商人たちが地元の市場以外に目を向けて利益を上げようとしたことがきっかけで広まりました。
この時代、商人たちは資源を安く手に入れ、他国と貿易ができる遠方への渡航を開始しましたが、銀行や政府は、商社の株式やその利益と引き換えにこれらの事業に資金を提供しました。
初期のアメリカ植民地では商業資本主義が実践されましたが、植民者はフランスやイギリスなど母国との貿易しか許されませんでした。
古典的資本主義(第二の時代)は現在の資本主義に近いものです。アメリカもそのひとつで、国全体が資本主義的な自由市場原理に基づいて組織されるようになりました。
アダム・スミスなどの経済学者は、資本主義経済における政府の役割について議論し、政府が干渉することなく、市場が自己利益、競争、需要と供給を通じて自己規制するときに経済的価値が生まれると結論付けましたが、これはハンズオフ(自由放任)経済学として知られています。
この理論は各人が自分自身に気を配ることで、すべての人にとって最良の結果をもたらすことを助けるというものです
古典的資本主義の主要な要素は、需要と供給の法則に従って商品、通貨、株式、金融商品の価格を設定する資本市場の立ち上げることでしたが、資本市場によって企業は事業拡大のための資金を調達することができました。
第三の時代であるケインズ資本主義は、自由放任主義が主流となり、政府は資本主義に手を出すべきではないという考え方のもとで始まりました。
しかし1929年の株価暴落をきっかけに、自由市場主義に疑問符がつき、市場は自己規制できるのかという疑問が生まれました。
米国を含むいくつかの国は、独占企業の行き過ぎを規制し、中小企業のための公平な競争条件を維持する方法として、政府の介入へと向かっていったのです。
海外との競争から国内産業を保護し、資本主義によって権利を奪われた高齢者、病人、障害者など働くことのできない人たちを保護する政策が導入されました。
グローバル資本主義は資本主義の第四の時代(エポック)です。それは他の時代(エポック)とはある重要な点で異なっています。
それはかつて国家を守るために国家内で組織され、規制されていたシステムが、今では国境を越えているということです。
このシステムは古典的な資本主義と同じイデオロギーに基づいていますが、生産手段の所有者が世界中のあらゆる場所に手を伸ばし、安価な労働力と資源を収益化し、できる限りの利益を得ているのです。
グローバルに統合されたこの第四の時代は、商品の自由な移動と取引を支援する国際的な政策によって支えられていますが、これによって企業はどこでどのように事業を行うかを選択する自由度を大幅に高めています。
グローバル資本主義の特徴
今日のグローバル資本主義を支えているのは、中核的な五つの特徴です。
生産活動がグローバルに行われること
企業は世界中のさまざまな場所で商品を生産することができます。
たとえば自動車メーカーがフロントガラスを中国で、エンジン部品をインドで生産し、完成品を米国で組み立てる、といったことです。
企業は安価な資源を保有し、輸出入関税の影響を最小限に抑えられる場所を選ぶことができ、より大きな富を手に入れることができるのです。
ウォルマートのようなグローバル企業は、グローバル資本主義の極端な例であり、自社では一品も生産せずに、世界中のサプライヤーから商品を調達し、流通させているのです。
世界中から労働力を調達することができること
企業が国境を越えて生産を拡大するにつれ、もはや自国の労働力を使うことに限定されなくなります。
より安く、より高い技術を持つ労働者を確保するために、地球上のあらゆる地域から労働力を調達することができるのです。
これは労働法のような政府の介入を回避し、未熟練労働者の賃金を引き下げる圧力となります。
金融システムがグローバルに機能していること
企業が世界中に富を生み出し、それを保有すれば、その富に課税することは非常に難しくなります。
グローバル企業は複雑な組織構造を構築し、納税義務を最小化するために複数の国や地域に富を分散させることが可能です。
このように、制度を利用することで企業は蓄積された富に対する法人税を回避する大きな力を得ることができるのです。
権力関係は国境を越えること
現在、グローバルなレベルで貿易、金融、生産の政策を形成する力を持つ多国籍資本家階級が存在しますが、その政策は国や州の政府にまで浸透しています。
グローバリゼーションは、企業が社会に及ぼす影響力を拡大し、それが世界中の人々の日常生活に影響を与える大きな力となっています。
グローバルな統治システム
グローバル資本主義は、国境を越えた新しいガバナンスのシステムを必要としています。
世界貿易機関(WTO、World Trade Organization)、国連(国際連合)、世界経済フォーラム、国際通貨基金、世界銀行、G20などの中核機関が、グローバルな貿易のルールを作り、裁定を下します。
これらの機関は、グローバル資本主義のアジェンダ(議題)を設定しますが、この仕組みへの参加を望む各国はそれに従わなければなりません。

グローバル資本主義がビジネスに与える影響
すべてのビジネスはグローバル資本主義経済の下で運営されているため、そのシステム内の出来事はポジティブにもネガティブにも影響を与える可能性があります。
主な影響には次のようなものがあります。
グローバル市場の影響
商品は国際的に調達され、取引されているため、グローバルなサプライチェーンで発生した事象はたとえローカルだけで事業を行っていたとしても、あなたのビジネスに影響を与える可能性があります。
たとえば燃料の価格が上昇すれば、商品を顧客に配送する際の経費が増え、あなたの利益を削ることになります。
多国籍企業の脅威
大手多国籍企業は最も安い労働力を調達し、海外の工場と提携する能力を持っています。このような戦略によって生産コストを削減することができます。
生産コストを下げることができた多国籍企業は、高コストな国内労働力や資源を使用せざるを得ないローカルの競合他社を打ち負かすことができます。
規制がなければ大手企業は価格競争の中で地元の競合他社を排除することができ、多国籍企業は独占を確立した上で、再び自由に価格を引き上げることができるのです。
為替リスク
為替レートの変動は、海外から材料を購入したり製品を海外に発送したりする場合に、あなたのビジネスの不確実性を増すことにつながります。
たとえばギリシャのメーカーに2万ユーロ(約280万円)を支払うことに同意して商品を出荷した場合、為替レートが1ユーロ=1.16ドル(約142円)であれば、請求書の価値は2万3200ドル(約284万円)となりますが、為替レートが1.18ドル(約144円)に変動した場合、サプライヤーへの支払額は23,600ドル(約289万円)になり、同じ商品の出荷に対して400ドル(約5万円)追加で支払うことになります。
競争の激化
資本主義は顧客が望むものを、顧客が支払うことをいとわない価格で提供することを要求します。
企業間の競争では、価格を低く抑えるため、製品をできるだけ効率的に製造し、利幅を拡大し、利益を最大化しようとする絶え間ない努力が行われています。
グローバル資本主義では、競争相手は国内だけでなく海外からもやってきます。
イノベーション
競争原理が働くため、資本主義では常に企業の適応力と変化力が報われます。
利益率を高め、市場シェアを維持し、財務的に生き残るためには、技術の進歩やより優れた製品・生産方法の開発という形でのイノベーションが不可欠です。
いくつもの規制
グローバルにビジネスを展開する企業は、複雑な規制環境を乗りこなす必要があります。
労働、安全衛生、環境保護、データ保護などに関する法的基準は地域によって大きく異なるため、企業はこれらの規制を常に把握し、不測の事態を回避しなければなりません。
グローバル資本主義の例
真の資本主義社会であるためには、経済は自由市場と私的所有権を何としてでも守らなければなりません。
しかし政府の規制は自己主張する傾向があり、それが資本主義やグローバル資本主義を、程度の差こそあれ変化させます。
米国はグローバルな自由貿易と自由市場を一般に受け入れている国の例ですが、それが最良というわけではありません。
税負担、財政の自由度、貿易の自由度、債務水準などを考慮すると、米国は「最も自由な市場を持つ国」の上位10位以内にすら入っていないのです。
ヘリテージ財団によると、2018年現在、資本主義経済の上位10か国は以下の通りです。
- 香港
- シンガポール
- ニュージーランド
- スイス
- オーストラリア
- アイルランド
- エストニア
- イギリス
- カナダ
- アラブ首長国連邦
米国は世界平均を上回っていますが、現在はオランダとリトアニアに挟まれた18位です。
法人税の負担が重く、企業の投資力を制限する負債があるため、ビジネスの自由度が低いことが弱点とされています。
しかし最近の税制改革により、企業の信頼と対内投資が高まり、米国はグローバル資本主義経済にさらに組み込まれる可能性があります。
まとめ
以上、「【グローバル資本主義】とは?」でしたがいかがでしたでしょうか。
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