グローバリゼーションとは世界中の経済がますます統合されていくことを意味しますが、この統合はプラスとマイナスの両方の効果をもたらします。

世界的な貿易の増加は競争の激化につながり、富がより平等に行き渡ることが期待されています。また、国境を越えた貿易により軍事的な衝突を抑えることができるとする意見もあります。

しかし国家間の貿易を活発化させることにはマイナス面もあり、なかにはナショナリズムの高まりや所得格差などの問題の一因としてグローバリゼーションを指摘する批評家もいます。

グローバリゼーションの長所と短所を知り、経済や個人にどのような影響を与えるかを理解しましょう。

※本コラムはThe Balanceのコラムを元にお届けしています。

このコラムのキーポイント

  • 国にとってグローバル化は、海外からの直接投資技術革新などのメリットがある
  • 企業にとってグローバル化は、規模の経済による効率的な事業運営が可能になる
  • グローバル化のデメリットとしては、相互依存の問題主権の喪失などが挙げられる
【グローバリゼーション】がもたらす影響

グローバリゼーションのポジティブな効果

ミルケン研究所(米経済シンクタンク)が2003年に発表した「Globalization of the World Economy(世界経済のグローバル化)P2-9」レポートでは、グローバリゼーションの長所と短所が数多く指摘されています。

このレポートが発表されてから20年近くが経過していますが、その背後にある考え方は依然として有効です。尚、世界貿易の拡大の長所には、以下のようなものがあります。

海外直接投資

海外直接投資(Foreign direct investment、FDI)は、世界貿易よりもはるかに大きな割合で成長する傾向がありますが、これは技術移転、産業再編、グローバル企業の成長を促進するのに役立ちます。

※経済協力開発機構(OECD)「Foreign Direct Investment for Development(開発のための海外直接投資)」P5

技術革新

競争の激化は新技術の開発を刺激しますが、FDI(海外直接投資)の増加は、プロセスをより効率的にすることで経済生産高を向上させるのに役立ちます。

※ミルケン研究所「Globalization of the World Economy(世界経済のグローバル化)」P9

規模の経済

グローバルな貿易の拡大により、大企業は規模の経済を実現することができます。

これによりコストや価格が削減され、さらなる成長が促されますが、これは同時に国内で競争しようとする多くの中小企業を苦しめることにもなります。

※ミルケン研究所「Globalization of the World Economy(世界経済のグローバル化)」P10

グローバリゼーションの負の影響

グローバルな貿易の拡大がもたらすリスクには次のようなものがあります。

相互依存

国家間の相互依存は、地域的または世界的な不安定性を引き起こす可能性があります。

※ミルケン研究所「Globalization of the World Economy(世界経済のグローバル化)」P12

たとえば2020年、ウクライナは小麦の輸出国として5番目に大きな国でしたが、ロシアが同国に侵攻した際、パキスタン、レバノン、ベトナムなど、ウクライナの小麦を輸入している国の食糧供給網が脅かされました。

※Observatory of Economic Complexity(経済複雑性観測所)「Wheat in Ukraine(ウクライナの小麦)」

国民主権

国民国家、グローバル企業、その他の国際組織の台頭を、主権に対する脅威と見る向きもありますが、最終的にはこれが一部の指導者のナショナリズムを引き起こす可能性があります。

※Homeland Security Digital Library(国土安全保障デジタルライブラリー)「Globalization vs. National Sovereignty(グローバル化vs国民主権)」

グローバリズムへの反発としてのナショナリズム台頭の顕著な例として、2016年の米国におけるドナルド・トランプ氏の当選と英国のEU離脱投票(通称「Brexit(ブレグジット、イギリスの欧州連合離脱)」)がありますが、これらの出来事は反グローバリズムの動きを助長し、反移民感情を煽りました。

公平な分配

グローバリゼーションの恩恵は豊かな国や個人を不当に偏り、経済的不平等を生む可能性があります。

※The World Bank(世界銀行)「Theorist Eric Maskin: Globalization Is Increasing Inequality(理論家 エリック マスキン著「グローバリゼーションがもたらす格差の拡大」)

たとえばNAFTA(North American Free Trade Agreement、北米自由貿易協定)の後、1998年のmaquila(マキーラ、工場)労働者の平均週給は55.77ドル(約8,100円)であり、マキラドーラ貿易地区での基本的な生活に必要な平均コストと比べてわずか2ドル(約300円)高いに過ぎません。

※Washington University in St. Louis(ワシントン大学 セントルイス)「The Pros and Cons of Globalization(グローバリゼーションの長所と短所について)」P3

「Straight Talk on Trade: Ideas for a Sane World Economy(貿易戦争の政治経済学:資本主義を再構築する)」の著者であるDani Rodrik(ダニ・ロドリック)氏は、グローバリゼーションのリバランス(資産の再分配)を主張しています。

ミルケン研究所レビューに寄稿した2017年の記事で、ロドリック氏は現在の政策が 「勝者だけでなく敗者も生み出している」と指摘しています。

「たとえば労働者は安定しない労働市場に取り残されることなります。ヨーロッパではこうした労働者には強力な社会的セーフティネットが与えられていますが、米国ではその都度淘汰されてしまいます。」とロドリック氏は言います。

グローバル化の問題を解決し、利益を確保するために、ロドリック氏はいくつかの変更を提案していますが、その主なものは、労働者に強い発言力を与えること、グローバル・ガバナンスからナショナル・ガバナンスへの移行、そして最大の経済的利益が得られる場所に注意を向けることです。

※ミルケン研究所レビュー「The Trouble With Globalization(グローバリゼーションの問題点)」P2

関税による保護主義

2008年の経済危機を契機に、多くの政治家がグローバリゼーションの是非を問うようになりました。

2007年、世界的な資本流入は世界のGDPの20%以上を占めていましたが、この数字は2019年には5%未満に減少しました。

※Bank for International Settlements(国際決済銀行)「Changing Patterns of Capital Flows(資本移動のパターン変化)P4

米国や欧州では新たな銀行規制が導入され、資本流入が制限されました。また、多くの国が自国の重要産業を保護するために関税を導入し、1990年代には米国が中国製のクリップに127%もの関税をかけました。

※Federal Register(連邦官報)「Certain Paper Clips From the People's Republic of China: Final Results of Expedited Fourth Sunset Review of Antidumping Duty Order(中国産の特定のクリップ。アンチダンピング関税命令の迅速な第四回サンセットレビューの最終結果)」より

また、日本は輸入米に778%という高い関税をかけています。

※Food and Fertilizer Technology Center for the Asian and Pacific Region(アジア太平洋地域の食品肥料技術センター)「Trade Liberalization and Rice Farming in Japan and Heilongjiang China(日本と中国黒龍江省における貿易自由化と稲作経営)」より

今後の展望

一部のエコノミストは、企業が国境を越えて資本インフラを構築するための投資を行っていないことを指摘しています。企業は税金の安い国を探している、というのです。

長い目で見ればある種のグローバリゼーションは避けられないかもしれませんが、経済危機によって引き起こされた歴史的な衝突は、変化することこそが唯一変わらないものであることを示しています。

中国からの輸入品に対する米国の関税収入は、2017年の329億ドル(約4兆8千億円)から2021年には850億ドル(約12兆4千億円)に増加しました。

※Center for Strategic and International Studies(戦略国際問題研究所)「China Tariffs: Digging Out of the Hole(中国の関税:穴埋め作業)」より

また、中国が作物の購入を他国に移したことで損害を受けた米国の農家は、280億ドル(約4兆1千億円)の連邦補償を約束されました。

※American Enterprise Institution(アメリカン・エンタープライズ公共政策研究所)「Agricultural Trade Aid(農業貿易援助)」P1

よくある質問(FAQ)

グローバリゼーションはいつ始まったのか?

グローバリゼーションがいつ始まったかについては、経済学者の間でも意見が分かれるところです。

15世紀のクリストファー・コロンブスのような人物がグローバリゼーションの初期の力であったと指摘する人もいますが、何千年も昔にさかのぼる、シルクロードの創設がそれであると指摘する人もいます。

また、世界経済フォーラムと全米経済研究所は「19世紀の技術的進歩が最初の真のグローバリゼーションの時代となった」と主張しています。

※World Economic Forum(世界経済フォーラム)「A Brief History of Globalization(グローバリゼーションの歩み)」より

※National Bureau of Economic Research(全米経済研究所)「When Did Globalization Begin?(グローバリゼーションはいつ始まったか?)」P1-2、P26-28より

グローバリゼーションの影響を最も受けていない国は?

世界貿易への依存度が高い国、低い国があります。

KOF Swiss Economic Institute(KOFスイス経済研究所)は、グローバル化指数で各国を採点していますが、アフガニスタンとソマリアはこの指数で最も低いスコアを獲得した国のひとつであり、また、北朝鮮のような孤立した国はこの指数で全く得点を上げられませんでした。

※KOF Swiss Economic Institute(KOFスイス経済研究所)「KOF Globalisation Index(KOFグローバル化指標)」より

まとめ

以上、「【グローバリゼーションがもたらす】さまざまな影響」でしたがいかがでしたでしょうか。

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