「グローバル化」とは、経済、金融、貿易、通信の統合に向けた、世界的な動きであると定義されていますが、グローバリゼーションの概念は、古くはローマ帝国時代にまで遡ることができます。
最近ではThomas L. Friedman氏(トーマス・L・フリードマン、米ジャーナリスト、コラムニスト)が著書「The World Is Flat(邦題:フラット化する世界-経済の大転換と人間の未来)」の中で、貿易、アウトソーシング、サプライチェーンのグローバル化のスピードが速まり、21世紀には企業組織やビジネス慣行に与える影響が拡大し続けると主張し、この概念を広めました。
中小企業や新興企業にとってグローバル化は、既存の事業活動を破壊しかねない重要な事業です。
したがってCEOやビジネスリーダーはその影響を完璧に理解し、リターンがリスクを上回るかどうかを判断することが肝要です。
また、組織全体のステークホルダーは、グローバルな取り組みに加え日常的な活動を継続するために、より多くの責任を求められるようになります。
中小企業のグローバル化は複雑かつダイナミックなプロセスです。
対象となる市場、競合他社、現地の市場動向、そして成功裏に立ち上げ、成長を促進するための要件について深く理解することが重要な基盤となるのです。
※本コラムはForbesのコラムを元にお届けしています。
目次
ディープダイブ(深掘り型)デューデリジェンスの実施
グローバル展開の前に、それが自社のビジネスにどのような影響を及ぼすのかを把握することが重要です。
- 市場セグメンテーション分析を行い、製品が現地市場で売れるかどうかを判断する
- 現地の製品とのギャップ分析を行う
- 現地企業では満たされない需要があるのか?
- 競合に対するSWOT分析を行う
- 自社製品は現地の製品よりも高価格になる可能性が高いが、市場は自社商品を購入してくれるか?
- 市場機会、規模を検討する。
- 市場の規模はどれくらいで、狙った売上を獲得するまでにどれくらい時間がかかるか?
戦略とビジネスプランの策定
経済、文化、政府、市場の状況により、各市場はそれぞれ微妙に異なっています。
企業全体の戦略や目標との統合を図りつつ、現地での成功を導くために現地に根ざした戦略とビジネスプランを策定することが重要です。
- 短期、中期、長期の戦略を明確にする
- 合理的な目標を設定し、進捗とコスト/利益を測定する
- 目標、目的、成功指標を明確にする
- ビジネスモデルや仕組みを完成させる
- 別会社を設立するか、支店を設立するか、営業所を設立するかを決定する
- トップダウンの年間予算を策定する
- 戦術的なプロジェクト計画を策定し、コミットメント日程を決める
ビーチヘッド・チーム(橋頭保となる部隊)の結成
グローバル化にあたり多くの企業は、親会社の幹部と一緒に立ち上げたり、ゼロからローカルチームを立ち上げたりしていますが、これでは時間がかかり、リスクも高く、市場投入までに長い時間を要します。
しかし実績のある暫定的な上級管理職を利用することで、会社は適切な上級管理職を採用するまでの間、現場での作業を開始し、仮定を迅速に検証し、主要な準備作業を進めることができます。
- 専門分野に精通した暫定的なシニアエグゼクティブを招聘するか、エグゼクティブリーダーシップ組織に暫定的なリーダーシップをアウトソーシングする
- 財務基盤の確立(現地のサービスプロバイダーにアウトソーシングすることを検討する)
- 正社員となる経営陣のリクルートを開始する
製品の準備
製品ギャップ分析に基づき、製品の差別化を図るため、市場投入に必要な手順を踏みます。
- 政府および、業界特有の規制を確認し、必要であればコンプライアンスと認証を取得する
- 製品のローカライズが必要かどうかを判断する
- 製品名の現地語への翻訳に細心の注意を払う
- 国によっては、優れたアイデアを「コピー」することで知られているため、特許や商標の審査に着手する
- 現地の規格に基づいた試験や品質保証の審査に着手する
- 現地での物流・販売網を検討する
- 自社製品を誰が販売し、どのようにしてその人たちの手元に届けるのか?
組織の準備
言語、規制、習慣など、文化の違いにより、国際的な事業活動で実施される方針や手続きには柔軟性が求められます。それは社員が会社の計画に参加し、実行していることを確認するためです。
「一物一価(ひとつのやり方で押し通す)」の考え方は、短期的には利益をもたらしますが、長期的にはマイナスの影響をもたらします。
- 戦略を成功裏に実行するために必要な組織構造を評価する
- 会社全体の方針とのバランスを保ちながら、現地の要件に準拠した方針、手順、ハンドブックを作成する
- 現地の有能な従業員を惹きつけるために、競争力のある福利厚生プログラ ムを開発する
- 現地の基準や習慣に基づいた、競争力のある報酬パッケージを開発する
- 国内インフラと互換性のある現地の情報技術インフラを開発する
- 給与計算と人事管理(これもアウトソーシングに適した項目です)
GTM戦略の確立
製品やサービスを効果的に販売し、マーケティングするためには、販売戦略、販売方法、ブランディング/バリュープロポジション(顧客価値)、マーケティング戦略、マーケティングプログラム、価格設定など、包括的で一貫性のある戦略が必要です。
- 最適な販売モデルを決定する
- 直接販売、間接販売、OEM、販売代理店、ハイブリッド?
- 販売方法を決定する
- ソリューション、機能、コンサルティング、価格?
- 新しいブランドを作るか、親ブランドを使用するかを決定する
- 包括的なマーケティングプランとKPIを策定する
- 新興国の消費者は価格に敏感であり、自社の製品が現地の経済環境に合わない可能性があるため、価格モデルを評価する
※GTM戦略(Go To Market戦略)とは、社内外の資源(営業部隊や流通業者など)を活用して、独自のバリュープロポジションを顧客に提供し、競争上の優位性を実現するために組織が行う計画のこと。 市場参入戦略、市場開拓戦略と呼ばれることもある。
法的準備
国によっては訴訟率が高いことが知られており、不必要な商業リスクを最小限に抑えるために、強力な法的プロセスを導入することが重要です。
また、政府機関には厳しい要件があり、その国で事業を行う前に法的文書を整備しておく必要があります。
先を見越した行動をとるには先行投資が必要ですが、これはのちのリスクや負債を補って余りあるものです。
- ローカライズされた商取引契約の作成
- 業界特有の規制を確認し、必要であればコンプライアンスと認証を取得する
- 紛争解決、入国管理、税関、船積みなど、一般的な企業向けサービスの実施
- 企業記録とガバナンスの維持
- ここでもアウトソーシングが有効でしょう
税務・財務の準備
適切な税務・財務のインフラを早期に構築し、タイムリーな報告を受け、外国企業が現地の企業ポリシーや手続きを遵守していることを確認する必要があります。
- 会計、給与計算、税務のアウトソーシングを検討する
- 現地の銀行との関係を構築する
- リスク管理計画の策定
- 移転価格スタディーの実施
- キャッシュ・リパトリエーション(本国への資金還流)計画の策定
- 売上税および、付加価値税の準備と報告
最終予算の準備
上記のステップで得られた結果にもとづき、ローカルチームが実現可能な、アグレッシブでありながら達成可能な最終予算を策定し、ステークホルダーに十分なデータを提供する必要があります。
- 三年分の予算と12か月分の事業計画を作成し、主要な業績評価指標を詳細に記載し、半年毎に更新する
- 四半期ごとにオペレーションの見直しを行う
- リアルタイム(または最低でも週次)の予算と実績の差異分析報告体制を確立する
現地企業との密接な関係構築
第三者との関係を通じ、補完的な製品やサービスからなるエコシステムを構築することで、強力な競争優位性を得ることができます。
これらの関係は財務リスクを最小限に抑えながら、組織の規模拡大に役立ちます。
- アライアンス、パートナー、販売代理店プログラムについて交渉する
- エコシステム戦略および、ビジネスモデルの開発
- 関係を管理・促進するための社内アライアンスチームを構築する
最後に
海外進出は気の進まないものかもしれませんが、グローバル市場はより大きな成長機会を提供してくれるものであり、多くの企業にとって海外進出は避けられないでしょう。
ただし細部にまで気を配り、管理部門をアウトソーシングすることで、「グローバル化」という難しい仕事でもきっと大きな成果を上げることができるでしょう。
まとめ
以上、「【グローバルビジネス展開への】10のステップ」でしたがいかがでしたでしょうか。
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