ビジネス翻訳とは、グローバルなビジネス活動に伴ない、あらゆる種類のテキストをひとつまたは、複数のターゲット言語に翻訳するプロセスです。
今日のビジネス環境を表す言葉を挙げるとするとおそらく、 "Go global or go home(グローバル化するかビジネスを止めるか)"または、それに近い表現になるでしょう。
グローバルに収益を上げ、市場シェアを拡大するための新たな機会を、常に模索し続けることが重要であり、そのためには強力な国際展開戦略が必要なのです。
グローバルな成長を目指す企業にとって、海外市場でビジネスを展開する際の言葉の壁をどう克服するかは大きな課題のひとつです。
グローバル戦略を考えるとき、ほとんどの企業がビジネス翻訳こそその答えであると理解しますが、本当の意味で翻訳を自社の市場拡大の支えにできているのはほんの一部の企業だけです。
グローバルな成長を実現するための重要な要素であるビジネス翻訳は、最初から正しい技術を用いれば、世界中でより高い露出と収益の増加を実現できるものです。
本コラムでは、ビジネス翻訳の計画、実行、管理方法がすぐに身につくように、三つの重要な戦略を紹介します。
※本コラムはPhrase社のコラムを元にお届けしています。
目次
ビジネス翻訳とはなにか?
繰り返しますがビジネス翻訳とは、グローバルなビジネス活動に伴ない、あらゆる種類のテキストをひとつまたは、複数のターゲット言語に翻訳するプロセスです。
企業の規模や組織、ニーズによって、ビジネス翻訳を社内の翻訳者に依存したり、ビジネス翻訳サービス(翻訳会社)やフリーランスの翻訳者に委託したりすることがあります。
ビジネス翻訳を理解するための第一歩として、翻訳には複数の種類があることを理解しましょう。
当たり前と思われるかもしれませんが、翻訳が必要な情報量の多さはグローバル市場への参入を目指す企業に軽視されがちです。
ここでは、ビジネス翻訳の主な三つのタイプについて、どのような課題があり、長期的にどのように対応するのが効果的かを見てみましょう。
社内業務用の文書
社内にはビジネスに関する文書が何百とあることはご存知でしょう。
人事マニュアル、業務ガイドライン、コーポレートスタイルガイドなどですが、新しい国で製品やサービスを紹介する場合はこれらすべてを現地の言語に翻訳する必要があるのです。
多国籍、多言語の従業員がいる場合、社内の手順、ポリシー、ガイドラインを翻訳することで、全員が同じ見解を持ち、同じ基準を遵守することができます。
しかし言葉の壁が従業員の業務遂行能力に影響を与えると、たちまちコンプライアンスや法的な問題に発展しかねません。
- 課題:量と細分化
- 社内のビジネス文書では、同時に処理しなければならないテキストが大量になりがちです
- さらにそれらが世界中の、複数のステークホルダーに分散していることを考えると、このプロジェクトは多くの動きを必要とする、広範囲なものとなります
- また、複数のメンバーが関わっている場合、誰が何をやっているのか、どのようにタスクを分担すべきかを把握することが難しくなり、コミュニケーションが滞りがちになります
- バージョンの管理も問題になるでしょう
- 解決策:集中化と協調
- 社内のビジネス文書を翻訳するという課題を克服するためには、二つの課題があります
- まず、社内のすべてのビジネス文書を、すべての部署からアクセス可能な、多言語ハブまたはナレッジベースなど単一の場所に集中化する必要があります
- このハブはバージョン管理された収納庫として機能し、当然ながら特定のコンテンツをあらゆる言語で必要とするすべての従業員にとって、真実の唯一無二の場所として機能する必要があります
- 社内のコンテンツ整理に役立つドキュメントサービスとしては、Salesforce Knowledge(Salesforceナレッジ)、Help Scout(ヘルプスカウト)、Zendesk(ゼンデスク)などがあります
- 二つめとして、世界中の部門、チーム、従業員の間で非同期かつ非集中型の、置き去りにされている分散した翻訳作業すべてのコンテンツを管理・整理できる集中型のビジネス翻訳ワークフローを採用する必要があります
法律および技術文書
ビジネス翻訳で最も複雑なもののひとつは、異なる言語による法律的、技術的内容の文書です。
訴訟手続き、登録、出願、特許、ユーザーマニュアルなどの文書を同時に扱う場合、複雑さのレベルは一気に上がります。
このようなタイプの文書には非常に特殊な用語が使用されるため、多くの場合、かなりの専門知識が必要とされます。
さらに複雑なのは、法律文書や技術文書の扱うことを避けては通れないことです。海外に進出する場合、法律や技術的な問題に焦点を当てた文書はすべて翻訳しなければなりません。
また、正確さを保ち、潜在的な紛争や罰金を避けるために、該当する分野の専門家によるレビューが必要です。たとえば、法律関係の翻訳は以下のように区別することができます。
- 法的文書)令状、登記、証明書、陳述書、宣誓供述書など
- 司法文書)訴訟手続き、裁判、判決、鑑定書など
- 法律文書)法令、規則、パートナーシップ契約、契約書、保険証書、保釈保険証書など
一方、技術文書の翻訳は、ユーザーマニュアル、サービスガイド、インストール手順書からソフトウェアの文字列やデータシートまで、科学技術に関する幅広い文書をひとまとめにしています。
- 課題:正確性と品質
- 法律や技術に関するビジネス翻訳で、企業が満たすべき品質の要件は非常に高いものです
- これらの要件を満たさない場合、罰金や訴訟、社会的信用の失墜、あるいは特定の国で事業を継続できなくなる可能性があります(たとえば、翻訳の不備が原因で特許が拒絶された場合など)
- つまり、このような翻訳では言語的な観点だけでなく、コンプライアンスや企業責任の観点からも品質が最重要視されるのです
- 法律や技術に関する翻訳分野には、それぞれ独自の前提条件や用語があります
- たとえば特許の場合、非常に特殊で高度に規制された用語に従わなければならず、それぞれの分野の専門家でなければ習得するのは非常に困難です
- 解決策:用語管理と専門知識
- 法律や技術翻訳における用語の検証は最も重要であり、専門の翻訳者、法律の専門家、現地市場のコンサルタントが協力して取り組む必要があります
- 理想的には、翻訳プロジェクトを開始する前に法律用語や技術用語、自社固有の表現、頭字語、略語などを含む用語集を作成する必要があります
- 専門用語の管理は専門知識と組み合わせることで、法律や技術関連の翻訳プロジェクトに於いてコストのかかるミスや見落としを減らすために大いに役立ちます
- 用語集の完成までには時間がかかるかもしれませんが、一度完成すれば翻訳者は業界の専門用語や最も頻繁に使われる特定の用語に関する情報を手に入れることができます
- こうすることで作業時間を短縮し、マーケットに於けるエラーや矛盾を最小限に抑えることができます
- また、製品・サービス用語の検証を行うことで、グローバルなマーケティングメッセージの価値を高め、より一貫性のあるものに仕上げることができます

マーケティングコンテンツおよびデジタル資産
社内業務用の文書、法律文書、技術文書に加え、ビジネス翻訳では外部の読者を惹きつけ、魅了し、保持するために作られた、次のようなマーケティングコンテンツやデジタル資産も扱います。
- プレスリリース
- 製品シート
- LP(ランディングページ)
- メールテンプレート
- 有料広告
- ソーシャルメディアコンテンツなど
販促ツールは感情的なレベルで人々とつながることを目的としているため、直訳(ちょくやく)では不十分です。
マーケティング翻訳者は、お客様が伝えようとするメッセージの精神を理解し、ターゲット市場の期待に合わせ、新しい文化的背景でも同じ反応を引き出せるようにする必要があるのです。
マーケティング文書の翻訳に使える最も効果的な翻訳手法のひとつが「トランスクリエーション」です。
トランスクリエーションとは、ターゲット消費者の好み、欲求、態度を尊重し、その文化に適合させることを実現する、国際広告コンテンツの「創造的翻訳」と定義されています。
- 課題:グローバルブランドの一貫性
- マーケティングキャンペーンには、企業のコアメッセージをできるだけ忠実に反映させる必要があります
- しかしすべての市場の好みに合わせようとすると、本来のブランド・アイデンティティから逸脱してしまう可能性があります
- つまり、競合と差別化できる強力なグローバル・ブランド・アイデンティティを維持しながら、各市場に合わせたローカライズ(現地最適化)を行うには、すべてのメッセージと資産において一貫性と個性を兼ね備えた中間点を見付ける必要があるのです
- また、マーケティングコンテンツにはコピーだけでなく、イメージやイラストも含まれます
- たとえばシンボルや色の捉え方は文化によって異なります
- 一例を挙げると、赤は愛や情熱、あるいは危険な色として認識されていますが、極東の文化圏では赤は幸運や繁栄の色とされています
- では、異文化の違いに配慮しながらブランドのアイデンティティを保つにはどうしたらよいのでしょうか。
- 解決策:協力的なチームワークとローカライゼーション(現地最適化)の管理
- その秘訣はマーケティングチームと翻訳チームの共同作業としてこのプロセスに取り組むことです
- たとえばマーケティング担当者は、ソースコンテンツに翻訳が困難な比喩が含まれていないかどうかを確認できます
- また、国際的なSEOの観点から、ターゲット言語の検索エンジンのクエリをコンテンツに反映させることもできます
- 言い換えれば、ローカライズ(現地最適化)し易いコンテンツを用意することができるのです
- 一方、翻訳者はマーケティング・ローカライゼーションの専門家であり、マーケットに常駐し、ターゲット言語を母国語としているため、マーケターのコンセプトをよりわかり易くかつ、文化的に最適な表現で伝えることができます
- 大切なのはお互いが相手のニーズと限界を意識し、文化の違いに配慮しながら、組織のブランド・アイデンティティを表現する結果を得るために手を取り合うことです
- このコラボレーションをどのように管理するかは、組織によって異なります
- もっとも良いのは、プロセスを俯瞰する専任のローカリゼーションマネージャーを置くことでしょう
- そうすれば翻訳されるすべてのコンテンツが、包括的なローカリゼーション戦略や、ブランドアイデンティティに沿ったものであることを確認できます
- ブランドやコミュニケーションのガイドライン、コンテンツ概要、過去に行った翻訳などの追加リソースをマーケティングチームと翻訳チームの双方が利用できるようにし、マーケティングローカリゼーションの一貫性をさらに向上させることが必要なのです
翻訳管理システムによるビジネス翻訳の合理化
すべての課題には解決策があり、すべての解決策にはそれを成し遂げるための適切なツールが必要です。
ビジネス翻訳に関して言えば、翻訳管理システム(TMS、Translation Management System)は組織全体のチームをより効率的に連携させる、最も信頼性の高い技術です。
AIを搭載したクラウド型翻訳管理システム(TMS、Translation Management System)は、あらゆるビジネス翻訳の最良のデータを一箇所に集約し、次のことを可能にします。
- スマートな自動化により、大規模なコンテンツ翻訳を実現
- クラウド上での共同作業を促進
- 既存の技術資産との統合
- 翻訳の品質と一貫性を確保
- 翻訳テクノロジーによる作業スピードアップで翻訳コストを削減
- 翻訳プロセス全体を効率化
翻訳メモリと機械翻訳技術の組み合わせによる効率化
翻訳メモリー(TM、Translation Memory)技術とは、過去に翻訳した内容を記録しておき、翻訳者がその一部を再利用することでコストと時間を削減する技術です。
これにより短納期、高生産性を実現するとともに、プロジェクト全体の一貫性を保つ可能性が高まります。
翻訳管理システム(TMS、Translation Management System)のメリットはそれだけにとどまりません。
AIを活用した機械翻訳(MT、Machine Translation)技術も、TMSソリューションで利用できる便利なツールです。
人工知能を活用することで、下地としての翻訳を自動翻訳(機械翻訳)で生成し、その後に言語の専門家である人間(翻訳者)による編集を行うこともできます。
MT(Machine Translation、機械翻訳)技術を使用する主なメリットはそのスピードです。
大量のコンテンツを翻訳するために時間と労力を費やす必要はもうありません。
同様に重要なのは、MT(Machine Translation、機械翻訳)テクノロジーは翻訳のたびに学習するため、使えば使うほど結果が良くなることです。
これらのことから、グローバルビジネスや多言語プロジェクトに適したテクノロジーは、ワークフローに適応し、組織に最適な結果をもたらすことのできる、TM(Translation Memory、翻訳メモリー)とMT(Machine Translation、機械翻訳)の機能をミックスしたものと言えます。
用語ベースの正確性と整合性の確保
コンテンツが頻繁に更新され、プロジェクトや言語の組み合わせの量が増える中、翻訳の正確さと一貫性を確保するのは至難の業です。
このような場合、翻訳管理システム(TMS、Translation Management System)が役立ちます。
クラス最高の翻訳管理システム(TMS、Translation Management System)ソリューションでは、組織全体の用語集や事前に承認された用語の中央収納庫として機能する「用語ベース」によって、すべてのプロジェクトの用語管理を行うことができます。
用語ベースとは、業界特有の単語やフレーズを他言語に翻訳した用語集です。
また、それには正しい使い方のための文脈、用語の関係、定義などを含めることができ、すべてのプロジェクトの正確性の維持に役立ちます。
コンテンツが更新されたり、新しいプロジェクトが開始されたりするたびに、翻訳者が最新の用語集を取得できるため、ビジネス全体でコンテンツの一貫性を保つことができるのです。
デジタルエコシステム内の他のツールとのシームレスな統合
最新の翻訳管理システム(TMS、Translation Management System)は、REST API(Representational State Transfer Application Programming Interface、シンプルなウェブシステムの設計思想)を通じて、大手から小規模のベンダーまで、何十もの他のシステムとすぐに統合でき、ビジネス翻訳のニーズを満たし、ワークフローをエンドツーエンドで自動化できるようにする必要があります。
これには次のような内容が含まれます。
- Contentful、Hubspot CMS Hub、Contentstack、WordPress などのコンテンツ管理システム
- Adobe Commerce(旧Magento)、Adobe Experience Manager、Hubspot Marketing Hub、Marketo などのマーケティングプラットフォーム
- Dropbox、Google Drive、FTPなどのストレージサービス
- Bitbucket、Git、GitHub、GitLabなどのソースコードリポジトリ
- Salesforce Knowledge、Help Scout、Zendeskなどのドキュメントサービス(ヘルプセンター、ナレッジベース
- SketchやFigmaのようなデザインソフトウェア
- Captionhub、Gengo、Gridly、LBS Suite、Paligo、Plunet、TransPDF、XTRFなどのサードパーティ・サービス
ビジネス翻訳のすべてをひとつに
クラウドベースの 翻訳管理システム(TMS、Translation Management System)を導入することは、マネージャー、開発者、専門家、翻訳者、コピーライター、マーケティング担当者、デザイナーが同じ見解を持つようになることのできる、効果的な方法です。
チームメンバーがオフィスにいても、自宅で仕事をしていても、外出していても、クラウドベースの翻訳管理システム(TMS、Translation Management System)を利用すれば違いはありません。
さらに翻訳管理システム(TMS、Translation Management System)は、明確な翻訳、ローカリゼーション(現地最適化)のワークフローを確立し、プロジェクトの進捗を監視し、最も重要なこととして組織のさまざまな部門や支店がローカリゼーションプロセスに関与できるようにすることに役立ちます。
翻訳管理システム(TMS、Translation Management System)は、次のような機能で、最も複雑な翻訳からあなたを解放します。
- コンテンツのインポートとエクスポートを自動化
- 多言語の同時サポート
- 進捗管理、時間の見積もり
- 社内リソースの自動割り当て
- ローカリゼーションの品質と一貫性の評価
- コストの追跡、その他多数
翻訳管理システム(TMS、Translation Management System)を利用することで、経営者はビジネスのグローバル展開という重要な課題に集中することができるようになるのです。
まとめ
以上、「【ビジネス翻訳とは?】どう管理すべきなのか?」でしたがいかがでしたでしょうか。
当社は翻訳の目的や、翻訳する文書の特徴、性質などを正しく理解、見極め、相手国の文化的背景を念頭に、ホームぺージや契約書、取扱説明書、プレゼン資料、リリース、ゲーム、アプリその他あらゆるビジネスで必要なドキュメント、テキストの「プロ翻訳者による翻訳」を、英語を中心に世界120か国語で行います。
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