異文化を体験することは、誰にとっても最も実りある活動のひとつです。
文化は生活のあらゆる面に浸透していますが、自国の文化と他国の文化を比較する機会に遭遇すると、それは魅力的でありつつも時にはフラストレーションを感じることもあります。
自分の国の文化では普通あるいは、適切と思われることが訪問先の国の常識と食い違うことはよくあることですが、新しい考えや習慣、社会的な行動に触れるという行為そのものが、旅行を印象的で発展的なものにしているのです。
また、旅行者や学生としてではなく働き手として異国を訪れることで、新しい国の文化により深く潜り込むことができます。
職場に入ると、観光客としてその国の文化の表面をなぞるのとはまた違う次元で世界観が変わるかもしれません。
異なる国の企業や組織、あるいは組織によって異なる文化を体験すると、そこにはさまざまな罠が仕掛けられていることに気付くでしょう。
本コラムでは、アジアでの就労を前提とし、東洋と西洋の職場環境に於ける不思議な違いを紹介します。
内容がすべてあなたの個人的な経験や、あなたの国の文化に100%当てはまるとは限りませんので、あくまでも出発点として捉えていただければと思います。
※本コラムはGoAbroad社のコラムを元にお届けします。
目次
欧米と東洋の職場に於ける主な企業文化の違い
東洋の職場での意外な違いとは何でしょうか?もしあなたが現在アジアで就労していて、不思議に思うことがあるとしたらそれは文化の違いに因るものかもしれません。
たとえば次のようなことです。
人間関係
ビジネスに於ける人間関係について、新たな訪れた国で何が期待されているのかを知るのは難しいことです。
人間関係を上手く構築するための第一歩は、そこで期待されることが自分のそれまで慣れ親しんだものとは異なる可能性がある、と理解することです。
西洋では
- ビジネス活動に於いてはフォーマルな会議を好む傾向があります
- 仕事中は仕事をするものであり、社員同士が親密な関係を築くことを避けるのは、西洋ではごく普通のことです
- ただし時折行われるオフィスでの懇親会では、お互いに恥ずかしい思いをしながらも絆を深めたりします
- 従業員と会社との関係で言えば、欧米社会では企業が労働者を(法律で定められている以上に)大切にすることはあまり求められていません
- 欧米人の大半は、業績不振で会社が自分を解雇しても驚かないでしょう
- 同様に従業員も、チャンスがあれば転職してより良い環境に移ることに抵抗がありません
東洋では
- 仕事上の関係よりも、個人的な情報まで共有して長期的な絆を深めることが好まれ、また奨励されています
- 従業員には同僚との関係を築きたいという願望があるものの、その実現には時間と信頼が必要であり、そのための努力に他人が応えてくれないとしばしば不快に感じたり、恥をかいたりすることがあります
- このような関係を築くための努力はごく当たり前のように行われており、たとえば日本ではカラオケのような活動は仕事後の同僚との関係構築方法の好例です
- 欧米に比べ、アジアの企業では最初から採用に対してはあまり厳しくなく、また、スタッフの中に優秀でない人がいても寛大に対応する傾向が一般的にあります
- 従業員は雇用主に忠実であり、雇用主が従業員の面倒を見ることを社会的に期待しています
- アジアの企業では、人は見知らぬ人と一緒に仕事をしたがらず、簡単に人間関係を作ることもしませんが、一度築いた関係は一生続くことが多いものです
批判
何をもって批判とするか、アドバイスと専門家の意見、年功序列の境界線などがどこにあるのかは、あなたが身を置く場所の文化や仕事の文脈によって大きく異なる可能性があります。
西洋では
- 間違いを指摘することはごくあたりまえのことです
- それは強力で効果的なチームを育成するための重要な要素であると考えられています
- 問題に正面から取り組み、同僚に欠点やミスを知らせることは全く問題ありませんが、その方法は地域によって異なる場合があります
- イギリスでは皮肉を含む冗談で欠点やミスを指摘することは効果的なアプローチかもしれませんが、自分のミスについて知っておくべき最低限のことだけを必要とし、それ以上は望まない傾向の強いドイツでは不快に思われるかもしれません。アメリカでも丁寧なEメールが有効です。
- アプローチの仕方がどうであれ、欧米では問題が指摘され、責任者が指弾されるのは事実です
- さらに、怒りや不満などの感情もあらわにするものです
東洋では
- 他のメンバーの前で同僚を批判することは現実的には考えにくいことであり、人はできるだけそのような状況を避けようとします
- 彼らにとっては不愉快な状況から完全に解放される方法があれば、そちらの方が望ましいのです
- たとえば中国では「面子を保つ」という考え方が文化の中核にあります
- 批判は個人的なやりとりの中で行われ、第三者を通じて伝達されることが多いのです
- もし中国で働くなら、このことについてもっと深くまで調べてみることをお勧めします
- また、一般的に東洋の人々は控えめで、感情をなかなか表に出しません
- 調和を保ち、争いを避けることが重要であると考えられています。
時間厳守
洋の東西を問わず、仕事や仕事関連の約束時間を守ることは、企業文化の大きな部分を占めています。
誰かが到着するのを待つのが好きな人はいませんし、遅刻は一般的に失礼で、プロらしくないと考えられています。
時は金なりであり、ビジネスに於いて遅刻は洒落にならないのです。それでもいくつか気を付けなければならないことがあります。
西洋では
- 欧米人同士でも、国や地域によって異なる常識は難しいものです
- 決まった時間に出社し滞りなく会議を始めようとするのは当然ですが、最近では「フレックスタイム」を遵守することが当たり前になってきました
- この場合、仕事ができて会議に出席していれば問題はありません
- 期待されているのは、他のチームメンバーが信頼できる存在かどうかだけです
- ただし前項で述べたように、信頼できないことが判明すればすぐにそのことを指摘されます
- とはいえ、スペイン人と午前10時に会う約束をした場合、彼らが到着するのは午前11時かもしれません(そうなるであろうことを、あなたが知っていて当然だと彼らは思っていると思います)
- 一方、ドイツ人は約束より早く到着します
- だから時間が守られるかどうかの保証がないままこの二者が会う約束をすると、フラストレーションが溜まることになりかねません
- このほかにもヨーロッパのさまざまな地域には、集合時間に関する「異なる常識」が数多く存在します
- 「The academic quarter(アカデミッククォーター)」という、大学の講義の公式の開始時刻と実際の開始時刻の間にある15分のズレはその好例ですが、基本的にはその地域のルールを学び、それに従って行動することです
- 文化は自分の意のままにはできないのですから
東洋では
- 東洋の文化では、時間を守ることはそれほど明確ではありません
- 役職が高いほど、また権力が強いほど、時間を守ることは重要ではなくなります
- ただし、管理職が会議に遅刻するのは全く問題ありませんが、下位の職位にある労働者はそうではありません
- とはいえアジアでのオフィスや会議に遅刻しても特に何も言われないでしょう
- しかしそれは正当な理由があることが前提なので、会議が終わった後にその理由を聞かれることが予想されます
- また、東洋の会議は出席者同士の非公式な社交や「ウォーミングアップ」から始まることもあります
- 先に述べたように、東洋のビジネス文化では人間関係が重要であるため、いきなり本題に入るのは少し変だと思われるのです
質問
質問するという単純な行為でも、質問される側と、それを見ている側とでは、さまざまな受け取り方があります。
東洋文化と西洋文化の就労環境では、この違いがすぐにわかるようになります。
西洋では
- 質問するのはあたりまえのことであり、むしろ下位の社員ほど重要なテーマについて質問することで理解を深め、自発性を発揮することが期待されています
- たとえそれが上司の考えや行動に対して挑戦的であったとしても、質問することが奨励されます
- 必ずしも挑戦するのではなく、自分の頭で理解し、動機やプロセスをよりよく理解しようとするのです
- そして雇用主はそのようなことを評価します
- 質問をする人は、会社にとってより大きな資産になるために自分にもっと学ぼうとする意欲があることを示すからです
- 欧米のリーダーは、あくまでもチームの一員なのです
東洋では
- 東洋では物事の進め方が異なります
- 社員は、質問をするということに威圧感を感じるでしょう
- 質問をされると議題に関する自分の立場を明らかにしなければならないので、上司は自分への質問を脅しのようにとらえる可能性があり、質問されることを恐れています
- また、そこでも礼儀正しさが重要視され、意見や意見の相違、欠点を指摘するようなことを大っぴらにしません
- 東洋のリーダーシップとはまさにそのようなものであり、疑問を投げ掛けてはならないのです
- この点については次項でさらに詳しく説明します
権限
どんな職場でもヒエラルキーには遭遇するものです。しかしその地位と権限システムの厳しさは、場所や地域によって大きく異なる場合があります。
西洋では
- 階層は比較的フラットな傾向にあります
- 上司はもちろんのこと、会社のCEOとも問題なく話せるはずです
- ファーストネームで呼べる可能性もあります
- 上の立場の人は、一般的に部下にチーム内の平等性を感じさせようとします(少なくとも表面上は)
- 一人ひとりの意見は有効であり、どんなアイデアも歓迎されます
- 最終的な決定はチームの意見に基づいて行われ、ただ単に何かに賛成するということはありません
- 同調は問題を解決する方法ではない、という信念が共有されているのです
- 問題が起きそうなときはできるだけ早く指摘し、指摘した人の地位に関係なく再検討することが必要です
- さらに、社員同士が批判し合うことも日常茶飯事です
- ただし、せっかく意見を出し合っているのだから、建設的でない意見はシャットアウトしてもいいのかもしれません
東洋では
- ヒエラルキーには多くの階層があり、各階層には厳密な意味があるのです
- トップに立つ者が最終的な決定権を持ち、その秩序と統治体制は非常に重要であると考えられています
- 年功序列は本当に重要なのです
- たとえばシンガポールの就労者がよく言うのは、中国的な「人脈」と「上下関係」が一般的で、命令系統に違反したり、上司の決定に公然と疑問を投げかけたりすることは滅多にないそうです
- 挨拶や飲み物の出し方、接し方など、全ては立場と権限に基づくものです
- また、その国や地域特有の微妙なニュアンスや非言語的な手がかりをもとに、提案や意見を述べることが多いようです
- 東洋のマネージャーは自分を従業員の第二の父親と考えることが多く、それは先に述べた長期的な関係や確立された絆を思い起こさせるものです
最後に
以上、東洋のビジネスカルチャーと西洋の企業マナーの違いをご紹介しました。改めてお伝えしますが、文化は職場にまで及ぶことを忘れないことです。
また、このコラムの冒頭で説明した、重要なことを心に留めておいてください。
ただし、繰り返しますがこれらは一般論でありあなたの就労先に必ずしも当てはまるとは限りません。
まとめ
以上、「【東洋と西洋】知っておくべき5つの企業文化の違い」でしたがいかがでしたでしょうか。
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