コンテンツライティングやプログラミングからプロダクトデザイン、データ分析まで、ChatGPTは想像し得るほぼすべてのデジタル分野で即効性を発揮しています。
しかしChatGPTが特に大きな影響を与える可能性がある分野は、現在あまり注目されていませんが自動翻訳(機械翻訳)です。
同分野では現在、Google翻訳がトップで他のほとんどはそれを追っている状態です。
それでは、ChatGPTの台頭によりGoogle翻訳の優位性が問われる可能性があるのでしょうか?
どのツールがより良い翻訳を提供できるのか、ChatGPTとGoogle翻訳を比較してみたいと思います。
※本コラムはMUO社のコラムを元にお届けします。
目次
良い翻訳とはどのようなものか?
翻訳の最大の目的は、ある言語で書かれた、あるいは話された音声の意味を、別の言語で伝えることです。
したがって優れた翻訳とは、単に二つの言語間で単語の意味を入れ替えるだけでなくテキスト全体の意味を伝えるものでなければなりません。
また、単に書かれたり話されたりした内容を文字通りの意味ではなく口調や文化的な意味合い、文脈を保ちながらユーザーが意図した意味を伝えなければなりません。
しかし残念ながら、Google翻訳のような世界的翻訳サービスでも、良い翻訳をするのは難しいのが実情です。
自動翻訳(機械翻訳)が難しいのは、言語によって文の組み立て方が違うからです。
たとえばフランス語のような言語では代名詞に性別がありますが、日本語では代名詞がほとんどありません。
同様に中国語では、名詞の単数・複数の違いがほとんどなく、英語ではその逆です。
このように二つの言語間で行う翻訳には独特の難しさがあるのです。
さらに文脈や口語体の問題もありますが、自動翻訳(機械翻訳)ツールは文の文脈を正しく理解することが困難なのです。
文章のある文脈ではあることを意味し、別の文脈では別のことを意味することがあり、また、同様にことわざや慣用句、言葉遊びを使った口語表現も、翻訳する上で問題になることがあります。
テキストの翻訳はChatGPTの印象的な機能のひとつであるため、我々はそれがGoogle翻訳と比べてどうなのかを比較することにしました。
二つのツールを比較するために、翻訳でよく問題となるいくつかの難しい文章を選びました。
【ChatGPT vs Google翻訳】口語の翻訳では?
口語体を翻訳する際、「原語と同じような調子で意味や意図を保てない」ことがあります。
Google翻訳とChatGPTで「Juan kicked the bucket(ホアンがバケツを蹴った)」というシンプルな英語の慣用句をスペイン語に翻訳してみたところ、どちらでも「Juan pateó el blade(ホアンがブレードを蹴った)」という直訳の慣用句が出力されましたが、これでは文脈を理解していない人にとっては意味や意図が全く伝わらないでしょう。
Google翻訳を使った場合、翻訳作業はこの時点で終わりですが、ChatGPTはもっと多くの提案をしてくれます。
単に翻訳するのではなく、翻訳する言語に応じてChatGPTにたとえば「スペイン語での意味」または「英語での意味を提供してください」などと依頼することができます。
そしてその結果、ChatGPTは慣用句の直訳と解釈を提供してくれるのです。
他にもいくつかの口語表現を試してみましたが、どちらのサービスもほぼ直訳が表示されました。
これはこれで有効なのですが、状況によっては誤解を招く情報を提供してしまう可能性があります。
ただし、ChatGPTについては口語の直訳だけではなく「解釈」を提供できることが強みと言えます。
しかしたった一回の比較だけでは結論が出ないので、今度はフィリピンの慣用句を使いながらさらに深く調べてみました。
- Sa gitna ng kagutumang buto't balat at butas na bulsang kahirapan, mataba ang lupa para sa pagtatagumpay ng anakpawis.
- 飢えた骨と皮膚と穴あきポケットの貧困のただ中で、土壌は勤労者の勝利のために肥沃である
この場合、原文に最も近いネイティブの翻訳は以下であるべきです。
- Amid emaciating hunger and extreme poverty, the grounds are fertile for the victory of the toiling masses.
- 痩せ細った飢えと極度の貧困の中で、労働者大衆の勝利のための土壌は肥沃である
これに対し、ChatGPTの答えは次のようなものでした。

また、Google翻訳の答えは次のとおりです。

明らかに両者とも苦戦を強いられた結果でしたが、この場合はGoogle翻訳が優位に立ったようです。
次にマラヤーラム語に変えてみたところ、難易度はさらに上がりました。
マラヤーラム語で書かれた有名な小説の抜粋を、両方の翻訳ツールで翻訳してみたのです。
ChatGPTでも挑戦してみましたが、複雑なマラヤーラム語のテキストは明らかに、ChatGPTの得意とするところではありませんでした。

一方、Google翻訳はかなり健闘しました。

どちらでも完璧とは言えない結果でしたが、Google翻訳は限りなくそれに近い結果でした。接戦でもありました。
結果的にGoogle翻訳が優勢でしたが、ChatGPTは翻訳だけでなくイディオム(慣用句)の意味も提供することができます。
これは慣用句を含むより大きなテキストを翻訳するときに非常に便利でしょう。
なぜなら、慣用句を直訳してしまうと、周囲の文章と一緒に読んだときに混乱の元になる可能性があるからです。
【ChatGPT vs Google翻訳】一般的な精度では?
原文と翻訳文の微妙な違いが、文章の意味を完全に変えてしまうことがあります。
そこでGoogle翻訳とChatGPTの両方をテストし、一般的な翻訳精度を確認してみました。
まずはシンプルに、中国哲学のテキストから始めました。
- 在这个虚伪的社会中,真正的人格是一种罕见的珍贵财富。
- この偽善的な社会で、真の人格は貴重な財産である。
これを最も詳しく翻訳すると、"In this hypocritical society, true personality is a rare and precious asset.(この偽善的な社会では、真の人格は希少で貴重な財産である)"という意味になりますが、今回もChatGPTとGoogle翻訳の結果は同じで、その翻訳に差はありませんでした。
次に、タガログ語(フィリピン語)で別の文章を試してみました。
- Ang gamot sa topaking babae ay ang lambing ng isang maunawaing lalaki.
- 女の薬は理解者の優しさ。
原文では、"The cure for a girl who acts up is the sweetness of the understanding man.(暴れる女の特効薬は、理解ある男の甘さだ) "という意味の、ちょっと複雑な語呂合わせになっています。
ググってみてわかりましたが、"The medicine for a woman is the tenderness of an understanding man.(女性の薬となるのは、理解ある男性の優しさです。)”ということでした。
つまり大失敗ではなかったのですが、メッセージのニュアンスがうまく伝わらなかったのです。

一方、ChatGPTの結果は"The cure for a heartbroken woman is the affection of an understanding man.(傷ついた女を癒すのは 理解ある男の愛情だ)"というものでした。

どちらの翻訳も完璧ではありませんでしたが、ChatGPTはかなりそれに近い結果であったと言えます。
【ChatGPT vs Google翻訳】クレオール語の場合は?
クレオール語のなかでも特に他の言語から多くの単語を借りて成立しているものは、翻訳が難しいことで有名です。
- クレオール言語(クレオールげんご、英: creole language)とは?
- 意思疎通ができない異なる言語圏の間で交易を行う際、商人らなどの間で自然に作り上げられた言語(ピジン言語)が、その話者達の子供たちの世代で母語として話されるようになった言語を指す
- 公用語や共通語として使用されている国・地域もある
そこでChatGPTとGoogle翻訳の両方に、西アフリカで話されている「Pidgin English(ピジン英語」と呼ばれるクレオール語の一種の翻訳をさせてみました。
- Wetin come happen na. Since you say you go come help me with that thing, I no come see your brake light. Wetin sup?
元の文章では、話し手が読者に対して「ある仕事を手伝うと約束したのに、それ以降姿を現さないこと」を訴えています。
そして、"What's happening?(いったいどうしたんだ?)" で締めくくられています。
Google翻訳は「Pidgin English(ピジン英語)」をある程度理解できるものの、元の文章の翻訳には大失敗してしまいました。
その問題の一因は、文中に英単語が存在することによりGoogle翻訳の「クレオール語と英語を区別する能力」に限界が生じるためです。

一方、完璧ではありませんがChatGPTでは、以下のとおり話し手の意味と意図を明確に伝えることができました。
Pidgin English(ピジン英語)の高度に文脈的な性質を考慮すると、この結果は非常に印象的です。

【ChatGPT vs Google翻訳】どちらが良いのか?
確実なことは言えません。どちらの翻訳ツールにも長所があります。
Googleは自然言語処理(NLP、Natural Language Processing)に大規模な投資を行ってきた結果、特に力を入れている言語に於いてはChatGPTを凌駕しています。
しかし、ChatGPTの仕組みや受けたトレーニングの内容を考えると、ユニークでエキサイティングな翻訳アプローチを示しています。
あなたはどちらを使うべきだとお思いですか?どちらのツールも無料で利用できますので、自由に試してみて、自分に合うほうに決めてください。

【ChatGPT】それは新しい翻訳ツールである
自動翻訳(機械翻訳)の分野ではGoogle翻訳がその名を轟かせています。
しかしChatGPTは、比較的新しいものの、押しも押されもせぬ存在になりつつあります。
ChatGPTの最大の強みは、ユーザーから提供された文脈や余分なものを基に、翻訳を調整することができる点です。
Google翻訳では現在これができません。
ChatGPTがGoogle翻訳の優位性に挑戦できる翻訳ツールとして好まれるかどうか、自信を持って言うことはできませんが、このAIチャットボットは明らかにGoogleに戦いを挑めるだけの可能性を持っています。
まとめ
以上、「【ChatGPT vs Google翻訳】どちらの翻訳が優れているか?」でしたがいかがでしたでしょうか。
当社は翻訳の目的や、翻訳する文書の特徴、性質などを正しく理解、見極め、相手国の文化的背景を念頭に、ホームぺージや契約書、取扱説明書、プレゼン資料、リリース、ゲーム、アプリその他あらゆるビジネスで必要なドキュメント、テキストの「プロ翻訳者による翻訳」を、英語を中心に世界120か国語で行います。
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