翻訳の面白さは、文章を書くことと同じように常に変化し、発展していくことです。

また、毎日のように新しい形の文章やそれに応じたコンテンツが登場するため、翻訳もそれに対応しなければなりません。

そのような新しい形の文章やフォーマットの中に、マーケティングコンテンツとそれに付随するマーケティング翻訳が含まれています。

つまりマーケティング翻訳とは、マーケティング資料やその他様々な販促コンテンツを翻訳することなのです。

コンテンツ制作やコピーライティングなど、マーケティングコンテンツにはクリエイティビティが求められます。

また、翻訳には一長一短あるため、マーケティングコンテンツの翻訳には一般的な翻訳者にはあまりない独自のスキルが必要です。

マーケティング資料の翻訳には頭脳と創造力、そして柔軟性が求められるため、この特殊な翻訳はトランスクリエーションと呼ばれています。

そのためマーケティング翻訳は、他の一般的な翻訳に比べ料金がかなり高額になるものなのです。

本コラムでは、

  • トランスクリエーションとは何か?
  • マーケティングコンテンツとは何か?
  • マーケティング資料の翻訳を難しくかつ、ユニークにするものは何か?

について詳しくご説明します。

※本コラムはTranslationPartner社のコラムを元にお届けします。

トランスクリエーションとは何か?

トランスクリエーションは、翻訳とコンテンツ制作という二つの言葉を組み合わせたものです。

それは文章を読んで、文化や文脈の違いを意識しながら違う言語で自分の言葉で書き直すようなものです。

だからそれは簡単なことではありません。

翻訳を一種のパズルと考えるなら、トランスクリエーションは多くの、動くピースを持つパズルのようなものです。

マーケティングコンテンツは、トランスクリエーションを必要とするコンテンツの中でも上位に位置します。

映像コンテンツ、小説、文学、ウェブサイトなどの翻訳も、トランスクリエーションを必要とするコンテンツの一例です。

尚、翻訳とトランスクリエーションには多くの違いがありますが、トランスクリエーションのプロジェクトには独自のスキルが求められることを忘れてはなりません。

求められるこのスキルは次のようなものです。

  • 専門的なリサーチスキル
  • クリエイティビティと柔軟性
  • 少なくとも二つの言語に堪能であること
  • マーケティングの基本を熟知していること

マーケティング資料とは何か?

マーケティング資料は、マーケティング目的で使用されるさまざまな種類のコンテンツです。

マーケティング・サービスへの絶え間ないニーズと、Eコマースを筆頭にほとんどすべての経済分野でグローバル化が進むにつれ、翻訳を必要とする資料の種類も増えてきています。

マーケティング・コンテンツの中でも特に重要なものには、次のようなコンテンツがあります。

ウェブサイトのコピー

デザインにフィットすることが必要なコンテンツ(またはその逆)、さまざまなオーディエンスに少ない言葉で多くのメリットを伝えたい、ターゲットに行動を起こさせたい、などトランスクリエーションが必要なマーケティング資料の中でも、ウェブサイト翻訳はトップクラスに位置します。

ウェブサイトには多くの遷移先のページが含まれています。ホームページからEコマースサイトの商品ページへ、非Eコマースサイトのサービスページへ、ヘッダーやフッターへ、などそこには翻訳が必要な要素はたくさんあります。

販売ページとランディングページ

ウェブサイトのコピーライティングと似ているのが、販売ページやランディングページ(LP)と呼ばれる、マーケティングやセールスのために使われるウェブページです。

ページによってはリードジェネレーション(見込み顧客を獲得するための活動)のためのフォームが含まれていたり、「今すぐ読む」「今すぐ買う」といったCTA(コール トゥ アクション、行動喚起)が付属している場合もあります。

視聴者に行動を起こさせ、商品を購入させることは簡単なことではありません。

セールスページやランディングページではそこに含まれるコピーに違和感があることで潜在顧客がサイトやランディングページから離脱しないように、専門の翻訳者が必要なのです。

広告や宣伝

ソーシャルメディア、ラジオ、テレビなど、あらゆる広告の翻訳には、高度なトランスクリエーションが必要です。

同様にGoogle広告キャンペーンやテレビ広告、あるいはそれらの組み合わせなどのマーケティングキャンペーンを翻訳する場合にも、創造性とトランスクリエーションが必要です。

スローガン(標語やモットー)

スローガンは、創造性、専門性として翻訳者のすべてを兼ね備えていることが求められる、マーケティング資料の中でも上位に位置するものです。

マーケティングや広告に何百万ドルも費やす国際的な大手ブランドが、スローガンを翻訳する際にどのような失敗をしたのかの例は枚挙に暇がないため、ぜひ調べてみてください。

のぼり(旗)やフライヤー(チラシ)

のぼり(旗)やフライヤー(チラシ)、パンフレットなどその他の印刷物も、マーケティング資料の一種であり、翻訳には創造性とスキルが必要です。

デザインへの適合性から言語のニュアンス、文化的な示唆など、マーケティング資料の翻訳では多くの失敗がありますが、それらは特に、変更が容易でない印刷物に於いて顕著です。

映画のタイトル

映画のタイトルはマーケティングに於いてあまりメジャーではないかもしれませんが、「本を表紙で判断してはいけない」ということわざもあります。

NetflixやAppleTVのようなストリーミングネットワークを利用して翻訳された映画やシリーズをよく見ている視聴者は、タイトルが魅力的かどうかで観る映画を決めることもあるのです。

だからたとえばNetflixでは、映画やシリーズのタイトルを翻訳するために大規模にトランスクリエーションを行っており、また、字幕制作に於いてもクリエイティブな翻訳を少しずつ取り入れています。

しかしNetflixはなぜ、翻訳やトランスクリエーションにこれほど力を入れるのでしょうか?

それは世界中の市場に進出するためであり、トランスクリエーションの効果が高いからです。

ちなみに、韓国のドラマ「イカゲーム」をどれほどの人が視聴したかご存知でしょうか?Netflixでは最初の28日間で、合計16.5億時間も視聴されたのです。

【マーケティング資料の翻訳】について知っておくべき6つのこと

なぜマーケティング資料の翻訳は難易度が高く、コストが掛かるのか?

これはお客様からよくいただく質問ですが、ここまで挙げてきたようなマーケティング資料の翻訳は、他の翻訳と違っていて難しいものなのです。

その理由は次の通りです。

二つの言語で創造性と柔軟性を必要とするから

マーケティングには創造性が必要ですが、その翻訳に於いてはメッセージ、声のトーン、意図を伝えるためなど、さらなる創造性が求められます。

また、同じ内容でもいろいろな言い方ができるので、柔軟性も必要とされます。

そして翻訳者やトランスクリエーターは、必要なことを必要以上に詳しく書くことなくかつ、翻訳されたテキストに現地の味わいを持たせるために、最適な方法を見つける必要があるのです。

いくつかのタイプの翻訳を組み合わせたものだから

マーケティング翻訳では翻訳する内容によって、トランスクリエーションとローカリゼーションを組み合わせることもあります。

たとえばサウジアラビア向けに翻訳されたスローガンとアラブ首長国連邦向けに翻訳されたスローガンは異なりますし、エジプト向けに翻訳されたスローガンはどちらとも異なります。

三つの国すべて言語はアラビア語ですが、三か国に向けたマーケティングメッセージやコピーでは、トーン、方言、文化的背景、習慣が異なるのです。

また、たとえばオンライン講座の翻訳に於いては、講座のコンテンツのトランスクリエーションやローカライズに加え、動画や字幕の作成も必要になります。

翻訳者にさまざまな役割が求められるから

マーケティング資料を翻訳する際に翻訳者は、リサーチャーであり、ちょっとしたマーケッターであり、クリエイターであり、文化的な認識を持ったバイリンガルスピーカーであり、ライターである必要があるのです。

また、それに加え翻訳者が翻訳と執筆を終えた後には、クリエイティブなレビュアーが文章の正確性や文化的な点について確認する必要もあります。

これらが必要となることで、クリエイティブ翻訳は通常の翻訳やローカライズに比べてコストが掛かるのです。

SEOの知識も必要とするから

翻訳の種類にもよりますが、ほとんどのウェブベースのマーケティングコンテンツには検索エンジン最適化(SEO)の要件が含まれています。

それが近年「SEO翻訳」の重要性と注目度が高まっている理由ですが、実行するのは簡単ではありません。

なぜならそのプロセスには、バイリンガルであることはもちろん、翻訳スキルやSEOキーワードの調査、文章全体を損なうことなくSEOの向上を図る、といったことが求められるからです。

SEO翻訳の活用に於いてはウェブサイトの翻訳が主役ですが、ブログ記事、ソーシャルメディア広告、ランディングページや販売ページ、オンラインケーススタディなどのマーケティングコンテンツの翻訳には、さまざまなレベルのトランスクリエーションが必要とされるのです。

多くのコンテンツの種類と形式を含んでいるから

取り組む内容に応じて、マーケティング翻訳では画像や映像・AV(Audio-visual)素材など、さまざまな種類や形式を扱います。

さらに印刷物用のコンテンツの翻訳は、オンライン用のコンテンツとは異なり、またラジオやポッドキャスト用のコンテンツとは形式も異なります。

しかしこれらすべてに於いて、調和を図り、ターゲットオーディエンスにとっておかしな結果にならないよう、創造性のある翻訳が必要なのです。

マーケティング資料の翻訳ではトーンを考慮する必要があるから

トーン(調子)はマーケティングやコピーライティングの重要な要素であるため、翻訳でも忠実に再現する必要がありますが、執筆そのものがかなり大変であり、さらにそれを別の言語に移し替えるのでさらに大変なのです。

トランスクリエーションの事例

ここまでの説明でマーケティング資料の翻訳を難しくする要因についておわかりかと思いますが、以下に挙げるトランスクリエーションのいくつかの例を見てみてください。

中には成功したものもあれば、失敗したものもあります。

トランスクリエーションの成功例

「Now is the future(今が未来)」という広告に於いて、サムスンはアラビア語版の広告にトランスクリエーションを使用しましたが、訳語は「سابق عصره」で「その/彼らの時代の先を行く」という意味を含むことができました。

コカ・コーラ社はスローガンや缶のデザインを変えるなどで有名ですが、「缶に人名を印刷する」というキャンペーンを覚えているでしょうか?

そのキャンペーンは英語圏に限らず、コカ・コーラ社が事業を展開するすべての国で統一して行われたことであり、トランスクリエーションの好例と言えるでしょう。

エジプトなどのアラブ諸国ではアラビア語で、ベトナムではベトナム語で、といった具合に、印刷する人名を変えたのです。

トランスクリエーションの失敗例

しかし悲しいかな、残念ながらスローガンを翻訳する際に苦労したブランドもいくつかあります。文字が多過ぎる、文化的な側面を考慮できていない、といったものもあったのです。

そんなマーケティング翻訳の失敗例のひとつが、スウェーデンのBIY(build-it-yourself)ブランドの「イケア」です。

彼らの製品のひとつ「Fearful workbench(恐怖の作業台)」は、元のスウェーデン語では「全速力」を意味するので本国ではそのまま受け入れられていました。

しかしイギリスのような英語圏の人々にとって、この製品名はジョーク以外のなにものでもなかったのです。

フォードと三菱自動車も、車名が他の言語でどのような意味を持つかを考慮せず、トランスクリエーションで失敗しました。

フォード社の「Pinto(ピント)」が評価されなかったのは、ブラジルポルトガル語でそれが「小さな性器」を意味するからでした。

同様に三菱自動車の「パジェロ」は、ヨーロッパのスペイン語圏の人たちにはあまり評判が良くありませんでした。

なぜなら「パジェロ」は、スペイン語で「ろくでなし」を意味するからでした。

最後に

このようにマーケティング・コンテンツには様々な動的側面があります。

それはクリエイティブであり、楽しいこともあり、皮肉を使うことが好きなブランドもあれば、言葉遊びをするのが好きなブランドもあるのです。

だからこそウェブサイトやオンラインミーティングなど対面式のイベントで使うマーケティング資料を翻訳する場合は、考慮しなければならないことがたくさんあり、その翻訳結果が自社ブランドを左右することになるのです。

トランスクリエーション・サービスが高額になりがちなのはそのためであり、またここまでに述べてきた理由によるのです。

結局その翻訳結果が、あなたの会社とその提供するものに大きく影響してくるのです。

だから翻訳プロジェクト、特にマーケティングやトランスクリエーションが必要なプロジェクトでは、翻訳概要書を使用することです。

そして概要の情報がすべて固まってから、外注する翻訳会社を選び、見積もりをとるのです。

まとめ

以上、「【マーケティング資料の翻訳】について知っておくべき6つのこと」でしたがいかがでしたでしょうか。

当社は翻訳の目的や、翻訳する文書の特徴、性質などを正しく理解、見極め、相手国の文化的背景を念頭に、ホームぺージや契約書、取扱説明書、プレゼン資料、リリース、ゲーム、アプリその他あらゆるビジネスで必要なドキュメント、テキストの「プロ翻訳者による翻訳」を、英語を中心に世界120か国語で行います。

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