自動翻訳(機械翻訳)も最近ではその開発状況が大きく進展し、日々進歩しています。
自動翻訳(機械翻訳)はある種の文書の翻訳に於いては間違いなく、その役割を十分に担っています。
また、翻訳が必要なコンテンツが増え続ける中、その迅速な処理や低コスト化にも役立っています。
自動翻訳(機械翻訳)が翻訳プロセスで大いに役立っていることは間違いありませんが、だからと言って人間の翻訳者が不要になったわけではまだありません。
その理由を説明します。
※本コラムはTENEO LINGUISTICS COMPANY社のコラムを元にお届けします
言語の進化
言語の進化のスピードは速いため、翻訳するために必要な用語を常に更新しておくことは簡単ではありません。
あらゆる状況に対応するスラングをすべて更新し、使用できるようにしておくことは不可能と言っても過言ではないでしょう。
さらに複雑な点として、古い言葉に新しい定義がなされるケースもあります。
この場合、データベースがきちんと更新されないと、たとえ翻訳が入力されても古い意味に翻訳されてしまうのです。
文脈と密接な関係があるのに、関係のない古い定義で翻訳されている場合などは特に問題です。
たとえば「A catfish(ナマズ)」は「ネット上で他人のふりをしている人」のことを指しますが、「ナマズ」と翻訳されると問題です。
また、「A tweet(ツイート)」は、「鳥が発する音」であったり「ツイッター上の投稿」であったりしますが、経験豊富な翻訳者なら古い言葉の新しい意味をどう翻訳すべきか知っています。
ユーモア
インターネットを頻繁に利用する人なら、ジョークには口調と文脈が重要であることを知っているはずです。
ジョークが誤解されるのは、トーン(調子)がテキストでは伝わらないことが多いからです。
これはネイティブスピーカー同士のコミュニケーションでさえも苦労することですが、対面での会話でさえもジョークは伝わらないことがあります。
自動翻訳(機械翻訳)ではその三倍、ユーモアはうまく伝わらないことが多いのです。ジョークを適切に翻訳するためには人間の手が必要なのです。
文化
翻訳が文化的に適切かどうかを、機械が常に判断できるわけではありません。
時には脚色しても残したほうが良い言葉や、意味を変えないと読み手に響かない言葉もあるのです。
たとえば「本音と建前」の概念です。
Google翻訳ではワンフレーズで翻訳しようとすると概念に不公平が生じるため、原語のままになってしまいます。
しかし人間なら、どこまで説明するか、どう翻訳するかを文脈から判断できます。

日本では「失敗することは恥ずべきこと」だと思われています。しかし、日本は文脈の少ない文化で、均質化を重視する傾向が強いのです。
そのため日本では「本音」よりも「建前(世間が期待する幻想)」を表に出すことが多いのですが、それを機械でそのまま翻訳しようとするとあまりに複雑になってしまいます。
※当社注釈:一般的には日本はハイコンテクストな(文脈の多い)文化だと言われていますが、著者の趣旨についてはそのとおりだと考えます
文脈(コンテクスト)と同音異義語
翻訳において文脈(コンテクスト)は非常に重要であり、特に同音異義語が絡む場合はなおさらです。
「he was lying(彼は嘘をついていた)」というような単純な文章でも、文脈によって解釈は変化します。
AIは「彼は嘘をついていた」と判断するかもしれませんが、文脈からすれば、「彼は(立っている状態から地面に)横たわっ(ている状態になっ)た」という意味かもしれません。
機械学習により自動翻訳(機械翻訳)に用いられる翻訳ボットは文脈から判断できるようになりつつありますが、ビジネス文書の翻訳に於いては人間の翻訳者に翻訳を依頼するのが賢明です。
スタイルとトーン
よくメールのやりとりをする相手のものであれば、誰か他人がその人を真似て書いたメールであっても、本人が書いたものとの違いを見分けることができるかもしれません。
なぜなら、人はそれぞれ独自の話し方をするからです。
熟練した翻訳者は、そのような話し方を見抜き、ターゲット(翻訳した後の)言語で真似ることができるのです。
しかし文脈とは異なり、この翻訳に重要な「スタイル」を翻訳エンジンに教えることは非常に困難です。
翻訳に於いてスタイルを模倣することは科学というよりも芸術であり、トランスクリエーションとも密接に関係しています。
ユーモア、文化、意図、読者を考慮する必要があるということです。
グローバル展開している大企業が翻訳者をフルタイムで雇用、維持するのは、このような背景に於いてマーケティングキャンペーンで一貫したスタイルを維持するためなのです。

エラーの検出
Google翻訳はそれを使用する人の入力を正しいものと判断して翻訳するため、使用者が翻訳した後の言語を知らない場合、翻訳された結果が正しいかどうかを判断することは簡単ではありません。
「English fails(英語翻訳に於ける失敗)」で検索すると、ネイティブの人によるダブルチェックをされないまま、企業が自動翻訳(機械翻訳)した結果が何百万件と出てきます。
入力にタイプミスがあったとしても、翻訳が間違ったものであったとしても、その言語を話す人がチェックしない限り翻訳が正確であるかどうかを知る術はないのです。
感情
文字で感情を伝えるのはもちろん、他人の感情を呼び起こすのは難しいものです。
だから翻訳で二つの言語を取り扱いつつ、元の文章の感情的な意味を保持する能力を持つ人は芸術家であり、ほとんどの場合直接翻訳するのではなくトランスクリエーションという作業を行っています。
本や映画、音楽などの芸術作品は、いずれも技術的な翻訳とは異なるタイプの作業を必要とします。
二つの言語に堪能だからと言って誰にでもできるわけではないこの種の翻訳を、自動翻訳(機械翻訳)が適切に処理できるかどうかは簡単に想像できると思います。
読者
だからと言って技術文書の翻訳なら簡単かというとそうではありません。テクニカルライターは読者に向けて文章を書く専門家です。
そして技術翻訳者は読者を理解し、専門用語を知っていなければ、意味のある文書を作ることはできません。
「オンラインで注文した製品のマニュアルを読んでみたが、発行者である製造元が適切な技術翻訳を行っていなかったために意味がわからなかった。」
そんなことがこれまでに何度あったでしょうか。
このことは、文書が医学的なものの場合さらに重要になります。
機密性の高い研究論文は人間が翻訳する必要があり、それによってようやく誰もが納得する方法で情報を正確に伝えることができるのです。
子供向けの翻訳と大人向けの翻訳では内容が異なります。
大人向けの文書を子供向けのように翻訳すると、慇懃無礼な印象を与えてしまう可能性があるのです。
言葉のあや
言葉のあやは、同音異義語と一緒になることが多いものです。
たとえば「He's not very bright(彼はあまり聡明ではない)」はよくある表現であるにもかかわらず、「He's not very well illuminated(彼には光の当たり方が十分ではない)」と翻訳されてしまうかもしれません。
また、「the key to the city(街の鍵)」のようなフレーズは、直訳してしまうと外国人の読者は「この街の鍵は何を開けるのだろうか」と疑問に思うかもしれません。
この例からもわかると思いますが、翻訳者を探す際には両方の言語に精通していることが非常に重要なのです。
意図
意図とは、ここまでの述べてきたことすべての要素が組み合わさったものです。
洗濯機の説明書にユーモアや感動を期待することはないでしょうが、子どもが見ているアニメを見て大人のあなたがクスっと笑うことはあるかもしれません(そのターゲットが子どもであるにもかかわらずです)。
翻訳者はオリジナルのコンテンツを実際に書くという作業をする必要はありませんが、翻訳する際の複雑さやプロジェクトの性質、ターゲット言語によっては、それはまるでまったく新しいバージョンの作品を作るようなものです。
最後に、自動翻訳(機械翻訳)はたしかに強力なツールになり得ます。
MTPE(Machine Translation Post-Editing、機械翻訳ポストエディット)とは機械翻訳された文章を人間が見て記載したような問題点を修正する翻訳方法のことですが、特定の顧客向けの単語やフレーズを翻訳ソフトのメモリに登録しておけば時間とコストの節約になります。
しかし自動翻訳(機械翻訳)でできるのはそこまでです。
重要な文章、特に法律やビジネスに関わる文章は、100%の精度を保証するために人間の翻訳者が行うことが重要なのです。
まとめ
以上、「【まだ人間の翻訳者が必要な】10の理由」でしたがいかがでしたでしょうか。
当社は翻訳の目的や、翻訳する文書の特徴、性質などを正しく理解、見極め、相手国の文化的背景を念頭に、ホームぺージや契約書、取扱説明書、プレゼン資料、リリース、ゲーム、アプリその他あらゆるビジネスで必要なドキュメント、テキストの「プロ翻訳者による翻訳」を、英語を中心に世界120か国語で行います。
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