ビジネスをグローバル化する前に考えてみるべきこと、そのひとつが「翻訳をアウトソーシングすべきか、社内に翻訳チームを作るべきか?」です。

CSAリサーチ社が最近行った「ソースクライアントから直接請けた仕事量の変遷 」に関する調査には11,000以上の回答が集まりました。

それによると翻訳者の75%が自営業(フリーランス)であるのに対し、クライアントまたは言語サービスプロバイダー(LSP、翻訳会社)いずれかの社内で(社員として)仕事をしているのはわずか13%であることがわかりました。

ちなみに、残りの回答者は失業中であったり、自分がプロの翻訳者だと認識していなかったとのことですが、この数字からは「フリーランスとの協業に対する企業のオープン度」がわかります。

ビジネス文書の翻訳を内製すべきか外注すべきかは、どちらかを選択する場合でも翻訳コストを考慮する必要があります。

また、第三者の翻訳サービスを利用する場合と専任の翻訳者を採用(雇用)する場合の、メリットとデメリットを比較検討することも重要です。

では、翻訳コストは何によって決まるのでしょうか。

また、ビジネス文書の翻訳を外注するのと社内の翻訳者を使って内製するのではどちらが良いのでしょうか。

※本コラムはUnbabel社のコラムを元にお届けします

翻訳サービスを利用するといくら掛かるのか?

以下はビジネス文書の翻訳の外注する場合と翻訳者を雇って内製する場合の翻訳コストの内訳です。

外注コスト

フリーランスの翻訳者に翻訳を依頼する場合は時間給または、単語あたり単価の支払いになることを念頭においてください。

オンラインデータによるとフリーランス翻訳者の1単語当たりの翻訳料金は、0.08ドル(約11円)から0.40ドル(約55円)の間ですが、それ以上の場合もあるようです。

フリーランスの翻訳者の平均時給は1時間あたり20ドル(約2800円)前後です。しかし1時間あたり11ドル(約1500円)以下で翻訳サービスを提供している業者を見つけることも可能です。

その一方で、フリーランスの翻訳者の中には1時間あたり最大69ドル(約9500円)の料金を請求する人もいますが、フリーランス翻訳者の料金の差は以下のような複数の要因によって決まります

  • 言語ペア: あまり流通していない、希少言語ほど高価です
  • 単語数: 従量制につき、量が多いほど翻訳に掛かる総額は高くなります
  • 納期: 急ぎの仕事は割増料金が加算されるため、標準納期よりも高価になります

翻訳料金は翻訳需要と供給に連動しているので、当然ですが対応する翻訳者が多ければ多いほど翻訳料金は安くなります(たとえば「英語⇔スペイン語翻訳」は一般的に、「英語⇔ビスラマ語翻訳」よりも料金が安いということです)。

尚、翻訳会社では翻訳コストを時間単位で請求することはほとんどありません。むしろ価格設定はすべて、お客様のニーズによって決まっています。

多くの翻訳会社は見積もりベースの価格体系(発注前に料金決定)を採用しており、これにはコンテンツライティング、編集、SEO、規制対応などのサービスが含まれることもありますが、一般的に翻訳料金は以下のような要素を元に課金されます。

  • 希望納期
  • 翻訳対象(原稿内容、該当分野など)
  • 言語ペア(言語の組み合わせ)

内製コスト

自社で翻訳者を雇用する場合の時給はフリーランスの翻訳者と同程度で、時給11~41ドル(約1500円~5600円)、平均すると時給21.46ドル(約3000円)ですが、年間に換算すると米国在住の翻訳者の平均給与は2023年現在56,754ドル(約780万円)です。

しかし社内で翻訳者を雇用するには追加コストが発生します。

翻訳需要のほとんどない閑散期であっても、フルタイムの翻訳者を雇用、トレーニング、維持するための費用が必要となるからです。

また、社内で翻訳者を雇用する場合は、その業務に必要な設備(オフィススペース、機器、消耗品、その他光熱費など)が必要となるため月々の経費がかさみます。

さらに、保険、有給休暇、健康管理、退職金などの福利厚生費も必要です。

加えて、マネージャー、編集者、SME(Subject Matter Expert、内容領域専門家、プロジェクトマネージャー)、翻訳コーディネーターといった必要不可欠なスタッフへの支払いも発生します。

外注と内製、費用対効果が高いのは?

翻訳コストを削減するには、社内で翻訳者を雇用したり社内に翻訳チームを作るよりも、翻訳会社に翻訳を外注する方が良いでしょう。

LSP(翻訳会社)や翻訳プラットフォームとの連携は、社内に翻訳チームを作るよりもコストを抑えることができます。

また、その生産性に関係なく給与というかたちで年間を通して報酬を受け取る社内の翻訳者よりも、オンデマンド翻訳サービスやフリーランスの翻訳者は柔軟性があります。

翻訳は翻訳会社に外注すべきか?

ビジネス文書の翻訳を外注するメリットは費用対効果だけではありません。以下は外注する場合の5つのメリットです。

翻訳を外注するメリット

  • 迅速な翻訳が可能になる
    • オンデマンド翻訳サービスなら数時間で翻訳が済むこともあり、社内に翻訳チームを作るために数週間から数か月を費やす必要はありません
  • 連携サービスを活用できる
    • 翻訳会社が有する最新の翻訳プラットフォームは、多言語ツールや既存のプロセスと連携できることがその特長です
  • 必要な分だけ支払えば済む
    • 翻訳会社や翻訳者は文字や単語単位の従量制で翻訳を行うため、翻訳に余分なコストが掛かる心配がありません
    • また、希望納期も必ず守られるため翻訳予算に加えてスケジュールを管理することも容易です
  • グローバルマーケティングを最適化できる
    • LSP(翻訳会社)中にはローカライズ(現地最適化)の専門チームがいる場合もあり、お客様のマーケティング戦略を国際的に調整することが可能になります
    • 追加費用が発生することもありますが、なかには翻訳サービスにローカルマーケティングを組み込んでいる企業もあります
  • 多くの言語に対応できる
    • 翻訳を外注すれば、必要な言語を専門とする翻訳者を自ら探す必要がありません
    • 翻訳サービスプロバイダーは何百もの言語を扱う専門家ネットワークを有しているので、外注することでお客様はそれを自由に利用することができます
  • 他のサービスもまとめて外注できる
    • LSP(翻訳会社)に外注することで、規制遵守、セールスイネーブルメント(営業組織を強化・改善するための取り組み)、コンバージョンアウトソーシング(成約率向上のための外注)、マーケティングオートメーションなど、他のサービスを割安で利用できるようになります
    • また、その利用に当たっても自社内でチームを作って対応するより手頃な価格でサービスを享受することができます

翻訳を外注するデメリット

  • 品質にばらつきがある
    • 翻訳会社は複数の翻訳者を抱えているため、翻訳者によっては品質に若干のばらつきが生じる可能性があります
  • 機密情報の脆弱性
    • 翻訳プラットフォーム(クラウド翻訳サービス、翻訳者マッチングサービス、一括見積・見積比較サイト)など、「格安」をPRする低品質の翻訳および、その提供者が稀に機密情報のプライバシーとセキュリティを損なう可能性があります
  • 翻訳の品質をコントロールすることが難しい
    • ほとんどの翻訳会社はお客様とこまめにコミュニケーションをとっていますが、翻訳会社の翻訳プロセスや品質保証をお客様がコントロールすることはできません
【ビジネス文書の翻訳】内製すべきか外注すべきか

社内に翻訳チームを作って翻訳を内製すべきか?

社内に翻訳チームを作るにはコストが掛かりますが、長期的にはいくつかのメリットがあります。

翻訳を内製するメリット

  • 翻訳プロセスをきめ細かくコントロールできるようになる
    • 内製すれば翻訳をより積極的に管理することができます。優秀な社内翻訳者がいれば、翻訳ワークフローをゼロから構築し、組織に合ったフィードバックループを設計し、関係者間の合理的なコラボレーションチャネルを確立することができます
  • より円滑なコミュニケーションが可能になる
    • 社内に翻訳者がいれば急な連絡にも対応し易くなるので、翻訳プロジェクトを土壇場で変更せざるを得なくなるようなストレスから解放されます
  • 自社ブランドに沿った翻訳を維持できる
    • 社内翻訳者なら自社ブランドの目標や声について熟知しているので、ブランドの語彙や文体にぴったり合ったコンテンツを翻訳会社に外注するよりも効率的に作ることができます
  • 情報プライバシーを確保できる
    • 自社内に翻訳チームを設置することで機密情報を外部に漏らすことなく安心して翻訳することができ、知的財産の盗難や情報漏えいのリスクを軽減しブランドイメージの低下を防ぐことができます

翻訳を内製するデメリット

  • 支出の融通が利かない
    • 翻訳需要の少ない繁忙期以外にも、翻訳チームには固定費が掛かります(フルタイムの給与を支払う必要があります)
  • ネイティブ翻訳者を見付けるのが難しい
    • グローバルなネットワークを持つ翻訳会社とは異なり、さまざまなターゲット言語のネイティブスピーカーからなる翻訳チームを社内に作ることは必ずしも可能ではありません
  • 翻訳技術への継続的な投資が必要になる
    • 社内で翻訳チームを運営すると、AIを活用した翻訳や用語集管理ツールなど、業界に対応するための新しい翻訳技術にコストを掛け続ける必要が生じます
  • スケーラビリティが良くない
    • 翻訳会社なら、翻訳支援ツールを活用することで大量のコンテンツを、高品質を維持した上で迅速に多言語に翻訳できますが、社内のチームではこのアウトプットには太刀打ちできません

なかには「翻訳を外注するとお客様のニーズに十分に応えられない」と考え、カスタマーサービスを社内の義務としている企業もあります。

このような企業が見落としているのは「社内の翻訳チームでは、翻訳会社が提供する翻訳サービスよりも機動性に欠ける」ということです。

つまり顧客からの問い合わせが急増した場合に対応できない可能性があるということです。

技術革新の過程で不具合が生じたり、問題解決に向けたサポートが突然必要になったりした場合、スケーラブルな翻訳システムでなければ突然の問題に適切に対応できず、また、事態が去るとすぐにまた元のレベルに戻ってしまいます。

イノベーションを推進する競争力を活用したいなら翻訳は外注するべき

競争力を維持するために、LSP(翻訳会社)は自社製品を次のレベルに引き上げるための言語テクノロジーやパートナーシップを探求し続けています。

よって社内の翻訳チームにすべてを託す覚悟がある場合を除き、専門分野に於ける投資やイノベーションを怠らない翻訳会社に翻訳を外注する方が現実的です。

最新のテクノロジーを駆使した、スケーラブルで効率的かつ、正確な翻訳が実現可能な、翻訳会社による翻訳を是非ご活用してください。

まとめ

以上、「【ビジネス文書の翻訳】内製すべきか外注すべきか」でしたがいかがでしたでしょうか。

当社は翻訳の目的や、翻訳する文書の特徴、性質などを正しく理解、見極め、相手国の文化的背景を念頭に、ホームぺージや契約書、取扱説明書、プレゼン資料、リリース、ゲーム、アプリその他あらゆるビジネスで必要なドキュメント、テキストの「プロ翻訳者による翻訳」を、英語を中心に世界120か国語で行います。

高い品質が求められる外国語対応や翻訳についてもしお困りでしたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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