ChatGPTによる革命が起こっていますが、このような生成系AIチャットボットは翻訳にも有効なのでしょうか?
ChatGPTは自然言語処理アルゴリズムを用い、さまざまな入力に対して人間のような応答を生成します。
そしてGoogle翻訳のように翻訳にも利用することができます。
Google翻訳やDeepLなど、AI翻訳は世の中にすでに浸透しているツールです。
それらはより早く仕事を完了し、より費用対効果の高い翻訳プロセスやワークフローを構築するのに役立っています。
それらと比べるとChatGPTはまだ絶対的なゲームチェンジャーではないかもしれませんが、確実に翻訳業界に一石を投じることができます。
しかし後述するように、翻訳の品質という点では人間によるチェックが重要であることに変わりはありません。
※本コラムはSumma Linguae Technologies社のコラムを元にお届けします
目次
翻訳市場に於けるChatGPTの実力
ChatGPTは、自然言語処理アルゴリズムにより様々な入力に対して人間らしい応答を生成します。
また、Google翻訳と同じように翻訳に利用することもできます。
しかしGoogle翻訳のモバイルアプリならGoogleレンズ技術によってライブスピーチや画像内のテキストを扱うことができますが、ChatGPTにはまだできません。
そしてこの「画像の取り込みができない」ことが、翻訳に於けるChatGPTの限界を示しているとも言えます。
ただしChatGPTは現在100近い言語に対応しており、25,000語以上のテキストも扱えるようになっています。
そのため長文のコンテンツ作成や翻訳といった用途にも対応できます。
ChatGPTを使った翻訳フロー
ChatGPTを使った翻訳フローは会話形式でできるので、より文脈に即したものとなっています。
その機能を示すためにロシア語のフレーズ「Любовь зла, полюбишь и козла(Love is blind、愛は盲目)」という簡単なテキストを翻訳してみました。以下はGoogle翻訳を使った翻訳です。

これに対しChatGPTでは、「Любовь зла, полюбишь и козлаを英語に翻訳してほしい」というリクエストに対して次のように回答しています。
"Любовь зла, полюбишь и козла "という言葉は、直訳すると "愛は悪だ、山羊さえも愛してしまう "という意味です。しかし、このロシアのことわざをより正確に、そして一般的に使われている英語で表わすと、"Love is blind, and lovers cannot see" または "Love is blind, love can't be blamed." と言います。この表現は、恋に落ちると、相手や人間関係の欠点やマイナス面を見落としてしまい、その結果、誤った判断をしてしまうことがあるということを伝えているのです。
この結果からわかることは、
「Googleを使えばストレートでシンプルな翻訳を得ることができる。そこには文脈もなく、文字通りの意味ではないかもしれないがうまくいく。しかしChatGPTならより丁寧な回答を提供してくれる。」
ということです。
ChatGPTならさらに、ニーズに合わせて翻訳を調整したり、調整した内容をフィードバックすることもできます。
ChatGPTはGoogle翻訳のような専用の翻訳ツールではできない、言葉の意味に於ける文化的な意味合いや地域差も考慮することができるということです。
とはいえこれは一例に過ぎませんので、インターネット上に溢れる他のさまざまな情報も参考にしてみてください。
ChatGPTを使った翻訳はどれくらい正確なのか?
ChatGPTの翻訳能力について、Slator社は次のように紹介しています。
「ChatGPTは翻訳に使用することができます。ただしChatGPTの翻訳能力は、専門の翻訳ツールやプロの翻訳者に比べて正確さや精度が劣る可能性があることに注意してください。また、ChatGPTは特定の専門用語やドメイン固有の用語を正確に翻訳できない場合があります。それでもChatGPTは基本的な言語翻訳に役立つツールになり得ます。」
これに加えて言うなら、「ChatGPTはユーザーの入力した問いに対して誤った答えを出すことがある」ことを忘れてはならないということです。
ChatGPTは常に正しい情報を保証するものではありません。
また、そのデータは2021年までのものであり、それ以降の出来事、つまり言語の変化については全く知らないという大きな欠点があるのです。
別の例として、中国のハイテク企業TencentはReddit(米掲示板型ソーシャルニュースサイト)のコメントを翻訳する際、ChatGPTがGoogle TranslateやDeepLに及ばないことを発見したことも挙げられます。
最後に、マイクロソフトはChatGPTに大きな関心を寄せており、Googleに対抗するために最近100億ドル(約1.4兆円)を投じてBing検索にChatGPTを使用、Word、Excel、PowerPoint、Outlookにも埋め込むようにしました。
また、マイクロソフトはChatGPTを、18の高・低リソースの言語ペアを用いて研究・商用MTエンジン(機械翻訳エンジン)の二つと比較しました。
それには一般に公開されているデータが使用され、文レベルと文書レベルの両方でテスト、複数の評価指標と人間による評価が採用されました。
その結果、「ChatGPTは高リソース(データ量の多い)言語では非常に優れた翻訳品質を実現するが、低リソース(データ量の少ない)言語では限られた能力しか発揮できない」ことがわかりました。
参考までに、「高リソース言語」とは英語、中国語、スペイン語、フランス語、日本語、そしてヨーロッパと西洋の多くの言語を指します。
この結果からわかることは、「低リソース(データ量の少ない)言語で翻訳を成功させるためには、テキストデータの収集とアノテーション(注釈)が必要」だということです。
つまり低リソース(データ量の少ない)言語への翻訳を行う場合、ChatGPTだけでは不十分だということです。

ポストエディットの重要性
ChatGPTを翻訳に使うか使わないかは個人の自由です。
翻訳を行う方法はひとつではなく、我々のような会社はそのなかで柔軟性を重視した、専門的な翻訳サービスを提供しています。
翻訳は、純粋な人間による翻訳から機械にすべてを任せるものまでさまざまであり、その方法によってスライド式に料金が変わるものです。
人間の翻訳は、スピードは遅いですが確実です。そして、コストは掛かりますが、品質はプレミアムです。
一方ChatGPTのような自動翻訳(機械翻訳)なら迅速かつ、簡単、安価に翻訳することができます。
ただしご存知の通り、自動翻訳(機械翻訳)の品質は突出したものではなく、現時点では「翻訳する機械としては良い」といったレベルです。
しかしこの問題は、ポストエディットという方法を使えばある程度品質のバランスをとることができます。
ポストエディットとは自動翻訳(機械翻訳)したあとに人間がコンテンツを修正、洗練させる方法ですが、人間の翻訳者がコンテンツをチェックし、正確性だけでなく正しい音声やトーン、文化的に適切であるかどうかまで確認します。
より深いローカライズ(現地最適化)や翻訳プロジェクトで最高レベルの翻訳精度を得るためにはやはり、人間が最後にレビューすることが必要なのです。
低リソース(データ量の少ない)言語の場合は特にそうです。
最適な翻訳方法を求めるなら
翻訳が必要または、検討し始めた段階でぜひ翻訳会社に相談してみてください。
優れた翻訳会社は、見積もりに必要な様々な要素をヒアリング、調査、考慮します。
翻訳会社はまず第一にお客様が何を必要としているかを知り、用途や目的によってお客様(のドキュメント)が必要とする翻訳品質やサービスレベルを決定します。
翻訳が必要なのか、それよりも一歩踏み込んだローカライズ(現地最適化)が必要なのか、また、一回限りの翻訳なのか、それとも継続的に翻訳が必要となるのか。
翻訳会社の見積担当者に詳細な情報を提供すればするほど、最適な翻訳方法と魅力的な価格を提示される可能性が高まります。
もし提供すべき情報がよくわからなくても、優れた翻訳会社ならすべてを把握することを手伝ってくれます。
ぜひ翻訳会社に相談してみてください。
そしてくれぐれも、相見積もりをとって価格だけを元に翻訳の発注先を決めることだけは避けてください。
まとめ
以上、「【ChatGPT】を翻訳にどう活用するか」でしたがいかがでしたでしょうか。
当社は翻訳の目的や、翻訳する文書の特徴、性質などを正しく理解、見極め、相手国の文化的背景を念頭に、ホームぺージや契約書、取扱説明書、プレゼン資料、リリース、ゲーム、アプリその他あらゆるビジネスで必要なドキュメント、テキストの「プロ翻訳者による翻訳」を、英語を中心に世界120か国語で行います。
高い品質が求められる外国語対応や翻訳についてもしお困りでしたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。