新しい市場にビジネスを拡大することは、企業が成長するための有利な機会となり得ますが、そのアプローチの仕方は実にさまざまです。
海外子会社の設立は一般的な方法ですが、すべての企業やグローバル展開戦略にとって最適な選択肢ではありません。
本コラムでは、海外子会社設立のメリットとデメリットを比較検討し、自社にとって適切な選択肢となるかどうかの見極め方を説明します。
また、海外展開の初期段階に於いてリスクを最小限に抑えることができる代替案も紹介します。
※本コラムはOmnipresent社のコラムを元にお届けします
目次
グローバル展開に海外子会社が必要か?
一言だと答えは「NO」です。国際的にビジネスを展開するために、必ずしも海外子会社を設立する必要はないのです。
海外子会社を設立することは、新しい市場に参入するための多くの方法のひとつであり、一部の企業にとっては確かに最良の選択肢ですが、自社にとってはそうでないかもしれません。
海外子会社の設立は、新しい市場に参入するための時間と費用が掛かる方法であるため、コミットする前にそのメリットとデメリットを慎重に検討する必要があります。
グローバル展開の初期段階で、まだ新市場が確定していない場合、海外子会社の設立はおそらく自社ビジネスにとって最適な選択肢ではありません。
新しい市場に永続的に進出する前に、その市場に真の価値があるかどうかと長く続くかどうかを判断するために、水面下でテストする必要があります。
この期間は法的にも財務的にも、できる限り負荷を軽くしておくのが賢明です。そうすることで必要なときに簡単に市場から撤退することができます。
市場調査を行うために小規模な現地チームを組成することは、現地に永く根を張ることを決める前に、より多くの情報を収集する上で効果的な方法です。
また、国際的な人材を採用する場合でも現地法人を設立する必要はなく、EOR(Employer of Record、海外での雇用代行をしてくれる業者)を利用することができます。
市場を確認し、そこでビジネスを成長させることが確信できたら、現地法人を設立することが事業拡大の次のステップになります。
この現地法人は、外国子会社や、支店、関連会社、パートナーシップなど、さまざまな形態で設立することができます。
どの選択肢が自社ビジネスに最適かを判断するには、より広範なグローバル展開戦略、会社の目的、財務、リソース、物流能力を評価する必要があります。
また、海外投資に関しては各市場の規制上の制限も考慮する必要があります。
海外子会社とは何か?
海外子会社とは、他の国に拠点を置く大企業が所有または、支配する海外企業のことです。
海外子会社は独立した法人であり、現地の法律に従う必要があります。また、資産や税金についても責任を負わなければなりません。
海外子会社の仕組み
海外子会社に分類されるには、事業体が外国の親会社または持株会社によって50%以上所有されている必要があります。
親会社が100%の株式を所有している場合は、"完全所有子会社(wholly owned subsidiary) "と呼ばれます。
親会社は他の株主とともに取締役会を選出し、海外子会社の経営と運営を管理する必要があります。
また、親会社が所有する海外企業の株式が50%未満の場合は関連会社または関係会社(associate or affiliate company)とされます。
海外支店 vs 海外子会社
海外支店と海外子会社はどちらもビジネスの国際的な展開を可能にしますが、両者には重要な違いがあります。
子会社は親会社や持株会社から法的にも財政的にも分離されていますが、支店はそうではありません。
つまり、親会社は支店に対して責任を負いますが、子会社に対しては責任を負いません。
海外子会社 vs 恒久的施設
恒久的施設(Permanent Establishment、PE)は、企業の種類というよりは概念や状態のことを指します。
税務当局は一般的に「恒久的施設(PE)」を、「恒久的かつ、継続的にその管轄区域内で収益を生み出す事業所」と定義しています。
そのため、その管轄区域で法人税を支払う義務がある場合があります。
このような定義から海外子会社はその性質上「恒久的施設(PE)」となりますが、支店や関連会社など、他の多くの種類の事業体や事業構造も「恒久的施設(PE)」とみなされる可能性があります。
また、海外にオフィスを構えずとも、スタッフを雇用することで「恒久的施設(PE)」を設立することも可能だということです。
海外子会社とPEリスク
海外子会社は法人税を別途納付していますが、親会社が海外子会社を通じて自社で事業を行っていることが判明した場合、「恒久的施設(PE)」リスクにさらされる可能性があります。
この場合、親会社は法人税の支払いに加え、罰金の可能性もあります。

海外子会社設立のメリット
海外展開の適切な段階で実行すれば、海外に子会社を新たに設立することはビジネスにとって大きなメリットになります。
具体的には次のとおりです。
- 財務的なメリットがある
- 海外に子会社を設立すると、現地の資源、資産、助成金をより多く利用できるようになります
- また、親会社とは別に法人税を納めるため、税務上も有利になります
- 親会社を保護する
- 海外子会社は駐在員事務所や支店とは異なり、親会社とは別の法人として扱われます
- 親会社は子会社の運営をコントロールすることができますが、責任とリスクは一般的に分離されます
- 信頼と信用を生み出す
- 多くの国で海外子会社のような公式なビジネスプレゼンスを持つことは、自社の信頼性を高めることにつながります
- 現地の企業、政府、業界、消費者は、現地の規制をすべて遵守している自社をより真剣に受け止めてくれます
- その結果、新しい市場で自社ブランド全体の信頼と認知度を高めることができます
海外子会社設立のデメリット
海外子会社の設立はグローバル展開の戦略上有益ですが、簡単なプロセスではないことも知っておく必要があります。
成功させるためには、乗り越えなければならない大きな課題があるのです。具体的には次のとおりです。
- コストとリソースが掛かる
- 海外子会社の設立には、金銭面でも人材面でも大きな投資が必要です
- 高額な設立費用やランニングコストに加え、経営陣も含め海外子会社の設立と維持に多くの時間を割く必要があり、他のROIの高い活動に支障をきたす可能性があります
- 現地に精通した専門家が必要
- 外国文化、政治、法律、税務、官僚制度などを理解することは簡単ではありません
- ほとんどの場合、非常に高額な現地の専門家の力を借りなければグローバル展開は失敗する可能性が高くなります
- また、コンプライアンス違反のリスクも高くなり、罰金や法的措置につながる可能性があります
- 解散が難しい
- 期待通りにビジネスが発展しない場合でも、海外子会社を閉鎖するのは大変です
- 管轄区域によっては子会社を解散させるのに、最初に設立したときと同じくらい、場合によってはそれ以上に時間が掛かることがあります
- 銀行口座の解約、オフィスリースの解約、投資の清算、従業員への十分な通知など、さまざまことを検討する必要があります
メリットとデメリットを比較検討する
海外子会社の設立や解散には時間、労力、資源が必要なため、設立を決意する前に、それが正しい判断かどうかを確信する必要があります。
海外子会社を設立することは国際的な事業展開に有益ですが、それは新しい市場を検証した後でなければなりません。
また、海外進出の初期段階ではできるだけ機敏に行動し、現地に小規模ながら経験豊富なチームを雇うのがベストです。
このようなチームは、市場の状況を把握し、さらなる市場調査を行い、市場をテストすることで、長期的に投資する価値があるかどうかを判断する手助けをしてくれるのです。
まとめ
以上、「【グローバル展開のために】海外に子会社をつくる必要があるか?」でしたがいかがでしたでしょうか。
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