言語サービス業界には世界で 18,000 を超える言語サービス プロバイダー(Language Service Provider、LSP)が存在し、その価値は2021 年末時点で 560 億ドル(約8.4兆円)と言われています。
しかし対応できる言語、体制、能力、専門知識、品質やサービスによってLSP 各社は大きく異なるため、そのあまりの幅広さから選択する際に間違った判断をしてしまうことがよくあります。
本コラムでは、この信じられないほど大きな業界により簡単にアクセスできるよう、「最適なプロ翻訳会社を選ぶときに役立つ22の要因」についてご説明します。
※本コラムはToppan Digital Language社のコラムを元にお届けします
目次
- 1 「人の力」を軽視する会社ではないか?
- 2 経営が安定している会社か?
- 3 認定または、認証された会社か?
- 4 認定、認証は信用できるものか?
- 5 ターゲット地域にある翻訳会社を選ぶ
- 6 24時間365日、グローバルなサービスとオペレーションが期待できるか?
- 7 世界中に拠点がある翻訳会社なら…
- 8 翻訳サービスが主業の会社を選ぶ
- 9 特定の分野に対して専門性があるか?
- 10 特定の業界に対して専門性があるか?
- 11 翻訳者の審査フローは厳格か?
- 12 翻訳者と守秘義務契約を交わしているか?
- 13 プロジェクトマネジメントは構造化されているか?
- 14 プロジェクトマネージャーは資格を持っているか?
- 15 品質保証と事故報告手順が整っているか?
- 16 お客様による検収(翻訳内容確認)ステージは適切か?
- 17 バックトランスレーション(逆翻訳)の対応可否は?
- 18 堅牢なワークフロー管理システムを持っているか?
- 19 用語集の運用能力があるか?
- 20 翻訳メモリ(TM)ツールの使用経験があるか?
- 21 テクノロジーの統合機能はあるか?
- 22 データセキュリティと機密保持のプロセスとポリシーはどうか?
- 23 まとめ
「人の力」を軽視する会社ではないか?
近年、ベンチャーキャピタルの支援を受け、潤沢な資金を誇る多くのテクノロジー系スタートアップが乱立し、「人間による翻訳」を時代遅れにしてしまいそうなテクノロジー革命が起こっています。
また、それら以外にも翻訳のコスト削減に貢献する「クラウドソーシングによる翻訳」といった新しいアプローチをサービスとして提供する企業もいます。
たしかに、テクノロジーは間違いなく重要であり、多くの中小企業はテクノロジーによって提供されるようになった「安価な翻訳」から恩恵を得ることができるでしょう。
しかしグローバル企業なら、
- 自社のテクノロジーならすべての問題を解決できる
- 翻訳に関するあらゆるニーズを満たすことができる
などとアピールする企業は警戒する必要があります。
経営が安定している会社か?
翻訳会社と長期的な関係を構築するときは、その会社の経営安定性を知ることが重要です。
- 儲かっている会社か?
- 成長している会社か?
- 従業員に公平かつ、迅速に給与を支払っている実績があるか?
これらは過去3-5年間の監査報告書を提示してもらうことで、その組織の収益性と成長率を容易に評価できます。
また、翻訳者が多く集うマーケットプレイスでオンライン調査を行えば、支払い面などその会社に業界内で悪い評判が立っていないかも判断できます。
認定または、認証された会社か?
安定性と品質を重視するなら、高度で堅牢なワークフロー管理システムを備えた会社を探す必要があります。
特に、翻訳サービスに関しては「ISO9001」 および、「 ISO 17100」 認証を取得した翻訳会社だけを検討するようにしてください。
認定、認証は信用できるものか?
正式な認定を受けたり、独立した第三者による監査を受けていないにもかかわらず、これらの認定を遵守していると主張したり、認証を自称している企業には注意が必要です。
正式に認定された翻訳会社なら、その認定機関と監査人に関する(認定番号など)詳細情報をウェブサイト上で公表しているはずです。
ターゲット地域にある翻訳会社を選ぶ
LSP を選択するときは、そのオフィスがある場所も考慮する必要があります。
たとえば 東南アジアやドイツで製品を販売したいなら、それらの地域にスタッフのいる翻訳会社と提携すれば、ローカル チームとグローバル チームの両方がそれぞれの営業時間内に、直接連絡を取ることができます。
また、ターゲット地域にいるスタッフなら、現地で必要な人材に、より効果的にアクセスすることができ、有利な条件で交渉できる可能性もあります。
最後に、現地の翻訳会社とは直接コンタクトを取り、バーチャルオフィスではなくそこにその会社が実際に存在することを確認するようにしてください。
24時間365日、グローバルなサービスとオペレーションが期待できるか?
プロジェクトの重要なコミュニケーションに時差が悪影響を与えかねないグローバルな環境では、24時間体制のサービスが不可欠です。
たとえばニューヨークと香港の間には12時間の時差があるので、アメリカのお客様が中国のプロジェクト・マネージャーに終業間際にメールでプロジェクトの変更を依頼しても、その対応結果を確認できるのは翌日の夜遅くになってしまいます。
これではお客様は(丸一日分の翻訳に値する)機会損失を被ることになりかねません。
世界中に拠点がある翻訳会社なら…
一方、世界中に拠点を持つ翻訳会社なら、そこに仕事を依頼することでお客様は時間を気にせず、いつでもプロジェクトに変更を加えることができ、最も貴重なリソースである「時間」を最大限活用することができます。
翻訳サービスが主業の会社を選ぶ
ビジネス環境に柔軟に対応しつつ自社のビジネスに付加価値を与えることができる機敏な翻訳会社と長期的かつ、戦略的なパートナーシップを築くことを目標とするなら、翻訳サービスを中核事業とする翻訳会社を選ぶべきです。
人材派遣会社やその他ビジネスサービス会社など、翻訳が主業ではない会社に翻訳を(も)依頼すると、当然ですが翻訳の質は低下します。
それらの企業は多くの場合、翻訳の部分は再委託(外部に丸投げ)しているため、コストもかさむだけでなく、翻訳に関する説明責任も低下します。
言うまでもなくそのような会社のシステムや品質保証プロセスは、翻訳プロジェクトには適していない可能性が高いので、結果的に効率と品質が低下し、長期的にはコストがかさむことになります。
特定の分野に対して専門性があるか?
業種、専門分野、専門知識など要件が何であれ、そのビジネス分野業種に特化した専門知識を持つ翻訳会社を選ぶことが重要です。
ニッチな分野での実績が不明な場合は、同業界の他のクライアントとの取引実績を紹介してもらい、その実績が自社のプロジェクトに関連する言語のものであることを確認してください。
競合他社のロゴが翻訳会社のウェブサイトに掲載されている(=取引があることを示している)だけで満足してはいけません。
特定の業界に対して専門性があるか?
顧客満足度の高い翻訳会社にはそのサービスに満足したお客様がいるはずですが、ウェブサイトに掲載されている「お客様の声」だけでは、その会社の専門性について詳しく知るには不十分かもしれません。
そこで、翻訳会社のお客様に直接コンタクトして、そのフィードバックを求めることができるかを(翻訳会社に)尋ねてみましょう。
優れた仕事をする翻訳会社なら喜んであなたの質問をお客様にしてくれるでしょうし、そのお客様も翻訳会社のパフォーマンスに本当に満足しているのなら、喜んで肯定的なフィードバックをしてくれることでしょう。
翻訳者の審査フローは厳格か?
翻訳会社が行う翻訳者の審査は、品質管理システム(Quality Management System、QMS)の一部であるべきです。
信頼できる翻訳会社なら、ISO9001認証の下でQMSによる定期監査が実施され、さらにISO17100認証の下でサービス自体も監査されているはずです。
そしてそれらの認証は、翻訳会社がプロジェクト毎に翻訳者を審査する際にも「規定の方法に準拠している」ことの証明になります。さらにそれらの認証は、翻訳会社の主張を裏付ける証拠にもなります。
ただし翻訳者を選定する際のガイドラインや要件は多少異なる場合がありますので、その翻訳会社が以下のような翻訳者と連携していることを確認してください。
- ターゲット(翻訳したあとの)言語を母国語とする翻訳者
- プロジェクトに最適な背景と実績のある翻訳者
- ターゲット言語とプロジェクトの内容について、5年以上の翻訳経験がある翻訳者
高度なコンテンツおよびワークフロー管理システムを有する翻訳会社なら、翻訳者の品質評価も提供できるはずなので、遠慮なく問い合わせてみてください。
翻訳者と守秘義務契約を交わしているか?
翻訳会社に自社の機密ファイルへのアクセスを許可する前に機密保持契約書への署名を求めることが一般的であることと同様に、翻訳会社はそのスタッフおよび、契約する翻訳者すべてとNDA(秘密保持契約)を結んでいることが重要です。
よって秘密保持契約書や機密保持契約書といった適切な文書に署名がなされていることを確認するよう翻訳会社に依頼するか、プロジェクトの管理責任者から署名済みの契約書のコピーをもらうようにしてください。
翻訳会社を通して、翻訳者に直接(自社の)NDAに署名してもらうことを依頼するのも合理的です。
プロジェクトマネジメントは構造化されているか?
QMSの一部として、プロジェクトマネジメントはISO9001認証に基づいて監査されている必要があります。
認証を取得していてもそのプロセスは翻訳会社によって大きく異なる場合がありますが、評判の良い翻訳会社は次の 二つの原則に基づいています。
- 製品の品質
- 顧客と仕入先(翻訳者など)双方に対するサービスの質
尚、アカウントマネジャーやプロジェクトマネジャーなどさまざまな業務部門から複数の担当者がお客様に対応するのではなく、ひとりのプロジェクトマネジャーがお客様と翻訳者の両方に関わるようにするのが成功するアプローチです。
そうすることでプロジェクトの範囲やニュアンスをより深く理解することができ、お客様へのサポートやフィードバックも向上するからです。
プロジェクトマネージャーは資格を持っているか?
翻訳プロジェクトの連絡窓口は、高度なスキルを持ち、よく組織されたプロジェクト マネージャーである必要があります。
そしてプロジェクトマネージャーは、アカウントマネージャーとローカリゼーションエンジニアの両方の役割を果たし、お客様の業務を管理する責任を負う必要があります。
よって継続的な成功には、彼らプロジェクトマネージャーの教育、言語の専門知識および、対象分野に適した人材を調達する能力が翻訳会社には不可欠です。
また、それ以上に、ほとんどのプロジェクトマネージャーはバイリンガルであるべきです。
もしお客様が自分の母国語でのコミュニケーションを希望される場合は、その言語を流暢に話すプロジェクト・マネージャーとコンタクトを取ることができ、必要な場合はその担当者をメイン・コンタクト・ポイントとして任命できるようにしておくべきなのです。
品質保証と事故報告手順が整っているか?
ISO 17100 および、 ISO9001 認定の品質保証プロセスでは、お客様に翻訳を納品する前に、以下のようなことを実施します。
- すべてのコンテンツが翻訳されていることの確認
- オンラインコンテンツのローカリゼーションの場合は、セグメントテストが実施されていることの確認
- すべての「特別な要求事項」に対応できていることの最終確認
また、翻訳漏れ、ローカリゼーション上のミス、要求事項への非対応などが発見された場合は、翻訳会社のワークフロー管理システムにそのことを記録し、シニアプロジェクトマネージャーに通知します。
そしてすべての評価が完了次第、シニアプロジェクトマネジャーはプロジェクトチームにフィードバックをし、パフォーマンスを改善できるようにしています。
お客様による検収(翻訳内容確認)ステージは適切か?
ISO 17100に則ったお客様による検収(翻訳内容確認)ステージでは、お客様社内のスタッフが翻訳のレビューを行い、自社や業界の専門用語が正確かつ、一貫して翻訳されていることを確認します。
このプロセスで重要なのは、お客様による修正をその後翻訳メモリに反映するための、合理的なプロセスとプロジェクトに携わった翻訳者へのフィードバックです。
バックトランスレーション(逆翻訳)の対応可否は?
企業や政府の規制により、翻訳の正確さを担保するために「一旦翻訳したものをふたたぎ元の言語に翻訳し直す」というバックトランスレーション(逆翻訳)を求められることもよくあります。
もちろん言語のニュアンスがありますので、バックトランスレーション(逆翻訳)したからといって元の文書とまったく同じ文章になるわけではありませんが、そのような微妙な違いがわかるためには、両方の言語に堪能である必要があるのでほとんどのお客様にとっては簡単な作業ではありません。
だからこそそのような作業に対応でき、翻訳の妥当性を判断、その評価結果を詳しくレポートしてくれる翻訳会社を使うようにしてください。
バックトランスレーション(逆翻訳)を頼むと、「正しくない」と判明した箇所はお客様に報告され、それをお客様が承認することになりますが、完成した翻訳と一緒に照合レポートの提出を依頼することもできます。
堅牢なワークフロー管理システムを持っているか?
翻訳会社の「技術的な対応力」は、そのビジネスの規模、能力、安定性を測る上で良いものさしとなりますが、彼らのワークフロー管理システムを判断するときは次のような要件を確認しておくと良いでしょう。
- プロジェクト管理、翻訳者、クライアントがアクセスできる統一ポータルを有していること
- コンテンツ管理システム(CMS)、オンラインエディタ、翻訳メモリツールに接続できること
- グローバルなエンジニアとオペレーションの専門家チームによってサポートされていること
また、現時点および、今後発生する可能性のある(お客様の)要求事項に基づき、そのワークフロー管理システムにAPIがあるかどうかも(アプリケーション機能の拡張可否を)確認しておく必要があります。
最後に、機密情報を扱う場合は、翻訳会社のワークフロー管理プラットフォームが「最新のSSL暗号化技術」で保護されていることも確認する必要があります。
用語集の運用能力があるか?
あらゆる業界やビジネスには独自の専門用語や用語集があるので、グローバルに事業を展開する企業は一貫性を保つために、主要な言語について「用語集」を作成する必要があります。
ゆえに「用語集の作成と維持」に実績のある翻訳会社と仕事をすることが重要です。なぜならそれ自体が高品質な翻訳と顧客価値の提供意志を示すことになるからです。
用語集を作成・管理する翻訳会社を探すときは、その運用プロセスの説明を求め、実際にそのサービスを利用している他の顧客からの紹介も依頼してみてください。
翻訳メモリ(TM)ツールの使用経験があるか?
翻訳メモリ(TM)ツールは、繰り返しの多い翻訳に使用します。
たとえば共通の用語を使用する必要がある複数のマニュアル(説明書)などを翻訳する場合、TMを活用することで一貫性を保ちながらコストを削減することができます。
TMはすべてのテキストセグメント(文節)をデータベースに保存し、同じテキストセグメントが文章上にあった場合は選択候補として翻訳者が選べるように自動的に表示されます。
ほとんどの翻訳会社では何らかのTMツールを使用していますが、用語集と同様にそれは必ずしも標準的なプロセスであるわけではありません。
そのため翻訳プロジェクトのライフサイクルを通じて、用語集を継続的に更新することは見過ごされがちなのです。
だからこそ翻訳会社に依頼するときは、TMを管理するための文書化されたプロセスがあることや、実際にサービスを利用して満足した他のお客様の声を確認するようにしてください。
テクノロジーの統合機能はあるか?
CMS(Contents Management System)、DAM(Digital Asset management)、ERP(Enterprise Resources Planning)、またはeコマースプラットフォーム用のAPI(Application Programming Interface)など世の中にはさまざまなツールがあります。
もし自社に継続的な翻訳ニーズがあり、社内の複数のメンバーがそれぞれに翻訳を依頼しているかまたは、今後依頼する予定がある場合は「翻訳会社のワークフロー管理プラットフォームへのAPI接続が可能かどうか」も検討する必要があります。
これにより、お客様のチームから翻訳会社のシステムにシングルサインオン(SSO、ID認証サービス)でアクセスできるようになり、翻訳業務の承認、管理、レビューがより効率的に行えるようになります。
お客様の社内システムへの接続実績のある翻訳会社を探し、実際に接続したことのある他の会社の評価も聞いてみましょう。
データセキュリティと機密保持のプロセスとポリシーはどうか?
翻訳会社が運用する技術プラットフォームは、最低でもISO9001(品質マネジメントシステムに関する国際規格)の認証を取得している必要があります。
セキュリティ上の懸念が大きいお客様の場合は、ISO27001 (情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)に関する国際規格)認定を受けているか、そのガイドラインを明確に理解している翻訳会社を探す必要があります。
まとめ
以上、「翻訳会社を選ぶ際に考慮すべき【22の要因】」でしたがいかがでしたでしょうか。
翻訳を依頼されることをお考えでしたら、これら20の重要な要因をぜひ参考にしてください。
当社は翻訳の目的や、翻訳する文書の特徴、性質などを正しく理解、見極め、相手国の文化的背景を念頭に、ホームぺージや契約書、取扱説明書、プレゼン資料、リリース、ゲーム、アプリその他あらゆるビジネスで必要なドキュメント、テキストの「プロ翻訳者による翻訳」を、英語を中心に世界120か国語で行います。
高い品質が求められる外国語対応や翻訳についてもしお困りでしたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。
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