翻訳納期は一般的に「翻訳を発注してから納品されるまで」のことを指しますが、翻訳は納品後の内容確認作業が必要となることが多いため、「内容確認(検収)を終えるまでの期間」を含めて翻訳納期を計画することをお薦めします。

それでは、翻訳納期とはどのようにして決まるのでしょう。主な要素は5つありますが、ひとつずつご説明します。

原文のボリューム

翻訳納期を決定付ける最大の要因は「原文ボリューム」です。「原文(げんぶん)」とは翻訳が必要な原稿のことであり、「ボリューム」とは原稿(原文)に含まれる文字や単語などテキストの量のことです。また、原文ボリュームは「原文に使われている言語」によって、カウント基準が次のように異なります。

  • 原文が日本語、中国語、韓国語などの場合
    • 「文字数」をカウントの基準とする
  • 原文が英語、ドイツ語、フランス語、イタリア語、スペイン語、ポルトガル語など横文字の場合
    • 「単語数」をカウントの基準とする

尚、原文ボリュームを「1名の翻訳者が1日に翻訳できるボリューム」で割ったものに、「前準備と後処理に必要な日数として2、3営業日」を加えたものが翻訳納期になりますが、式で表わすと次のとおりです。

翻訳納期 = 原文ボリューム ÷ 翻訳ボリューム/名/日 + 2、3営業日

また、「1名の翻訳者が1日に翻訳できる原文ボリューム」は次のとおりです。

  • 原文が日本語の場合)    3,200文字/日 程度
  • 原文が中国語の場合)    2,600文字/日 程度
  • 原文が韓国語の場合)    3,900文字/日 程度
  • 原文が英語の場合)     1,600単語/日 程度
  • 原文がドイツ語の場合)   1,100単語/日 程度
  • 原文がフランス語の場合)  1,900単語/日 程度
  • 原文がイタリア語の場合)  2,200単語/日 程度
  • 原文がスペイン語の場合)  1,800単語/日 程度
  • 原文がポルトガル語の場合) 1,700単語/日 程度

翻訳者や翻訳会社によっては「文字数」や「単語数(ワード数)」ではなく、「ページ数」で見積もることもありますが、ページ数の場合も「1ページを日本語400文字とする」「1ページを英語200単語(ワード)とする」など条件設定されていることから、料金や納期の算出基準は同じであることが多いです。

さらに、ボリュームの対象を原文ではなく「翻訳完了後後の文字数、単語数、ページ数」とすることもあり、これは「仕上がりベース」と呼ばれますが、この場合は「作業が完了するまで料金が確定しない」という点で不都合があるため、徐々に使用されなくなっているようです。

また、納期を短縮する場合は「翻訳者の数を増やす」ことで対応するケースが多いのですが、翻訳者によって翻訳文の文調やニュアンスといったテイストが変わる(バラツキが発生する)ため、納期を短縮するためでもいたずらに翻訳者の数を増やすことはあまりお薦めしません(詳しくは後述します)。

※ボリュームについてはコラム【図解】原稿によって異なる文字数・単語数のカウント方法もお読みください

DTPが必要か不要か

DTPは、Desktop Publishing(デスクトップパブリッシング)の略で、翻訳業界では主にレイアウト作業のことを指します。

原文がMicrosoft PowerPointやAdobe Illustrator、Photoshop、InDesignで作成されている場合は「各ページに挿入されたテキストボックスに翻訳を上書きする」必要があり、作業効率が著しく落ちるだけでなく、翻訳を上書きした後のフォントやフォントサイズ、改行といった調整作業が必要となります。

これは、Microsoft WordやExcelで、テキストボックスや図表が多様されている場合も同様ですが、ウェブページ(HTML、XML)の場合もコーディング(調整)が必要となるという点で同じです。

このようなレイアウト作業は純粋な翻訳作業とは異なるため、翻訳料金とは別に「DTP作業料」「レイアウト作業料」といった名目で料金が課金されます。さらに、料金だけでなく作業時間も必要となるため納期への影響が少なからずあります。

五月雨式の入稿や原稿差し替えがあるかないか

  • 五月雨式の入稿(さみだれしきのにゅうこう)とは
    • 翻訳の原稿(原文)のすべてが完成する前に、出来上がったものから先に翻訳をし始めるために、少しずつ小分けに原稿(原文)を提供すること。
  • 原稿差し替えとは
    • すでに翻訳を始めたあとに、修正原稿を提供して翻訳原稿を変更する(差し替える)こと

それぞれの意味は上記のとおりですが、五月雨式の入稿も原稿の差し替えも翻訳納期に大きく悪影響するだけでなく、翻訳品質の著しい低下を招く危険性があります。

場合によっては、「原稿(原文)が完成するのを待ってから始めたほうが、トータルでは短い日数で翻訳が済んだかもしれない」といった事態も発生し得るため、納期と品質に大きな影響を与える五月雨式の入稿や、原稿の差し替えはなるべく避けるようにしましょう。

翻訳支援ツールを使うか使わないか

Trados(トラドス、SDL Trados Studio、SDL International社製)やMemsource(メムソース、Memsource社製)に代表される翻訳支援ツール(コンピュータ翻訳支援ツール)を利用できるかどうかも翻訳の納期に影響を与えます。

翻訳支援ツールはCATツール(キャットツール、Computer Assisted Translation)とも呼ばれますが、次のような機能的特徴を持っており、大量の翻訳を短納期で行なうことが可能となります。

  • 翻訳スピードが速くなる
  • 用語の統一が図れる
  • 翻訳の漏れや抜けを発見できる
  • 複数名の翻訳者が同時に作業できる
  • 解析できる
  • レビューできる

しかしこの翻訳支援ツールは「過去の(翻訳)資産を効率良く利用する」、言い換えると「テキストの置き換え」を軸にしたものです。

よって、原文内に繰り返し使用される文章や重複する文言の多い「マニュアル」や「取扱説明書」などの工業、IT系の文書には適していますが、それら以外の文書にはあまり利用されていないのが実情です(一部で実験的、積極的な取り組みはあるようです)。

※翻訳支援ツールについてはコラム【翻訳支援ツールのメリット】と使用上の注意もご参照ください。

複数名の翻訳者による作業同時進行が可能かどうか

翻訳は一人よりも二人、二人よりも三人の翻訳者で同時に行なったほうが納期が短くて済むのは言うまでもありません。しかしこの「複数名の翻訳者による作業同時進行」も、原文の内容や求める翻訳品質によっては行なえないまたは、行わないほうが良いこともあります。

誤訳(ごやく)、異訳(いやく)、訳漏れ(やくもれ)、スペルミス、文法の破綻といった、文章作成における基本的な問題を除き、同じ原稿(原文)でも翻訳の仕方、言い換えると表現の仕方は翻訳者によって異なります。

用語や文体の統一をすることで、読み手になるべくストレスを与えないよう納品前にできるかぎり調整されますが、翻訳のニュアンスや訳調(やくちょう)、テイストといったものは「翻訳者にかぎらず文章を書く人の数だけ存在する」といっても過言ではなく、あとから修正、統一することは困難です。

よって文章として全体の統一性が強く求められる「文芸」「論文」など読み物的要素の強い文書を翻訳する場合は「複数名の翻訳者による作業同時進行」をお勧めできないため、納期の短縮には効果を発揮しません。

最後に

翻訳納期にもっとも影響するのは、ひとつめに挙げた「原文ボリューム」つまり、翻訳が必要な文章の量ですが、それ以外にもさまざまな要素があることをご理解いただけたのではないでしょうか。

品質の高い翻訳は、余裕ある納期設定から生まれます。「ある日突然その必要性に迫られて、慌てて翻訳の外注先を探す」ということの多い翻訳ですが、翻訳会社や翻訳者に無理を強いてもあまり良い結果にはつながりませんので、翻訳依頼は計画的に、余裕をもって行なうことを心掛けていただければと思います。

また、翻訳納期については以下のコラム、ページも合わせてお読みください。

まとめ

以上、「【翻訳の納期】を決める5つの要素」でしたがいかがでしたでしょうか。

当社は翻訳の目的や、翻訳する文書の特徴、性質などを正しく理解、見極め、相手国の文化的背景を念頭に、ホームぺージや契約書、取扱説明書、プレゼン資料、リリース、ゲーム、アプリその他あらゆるビジネスで必要なドキュメント、テキストの「プロ翻訳者による翻訳」を、英語を中心に世界120か国語で行ないます。

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