翻訳を依頼される文書の内容が多岐に渡るのと同じく、翻訳を求められる言語は実にさまざまです。

翻訳は、普段あまり馴染みがなく、意識することも少ない作業ですので知名度の点からも仕方ありませんが、翻訳業界で流通している言語および、その物量は想像以上にバリエーションが豊富なのです。

本コラムでは、翻訳を求められる言語のうち「マイナー言語」と呼ばれるものにスポットを当ててお届けします。

マイナー言語とは?

流通量の少ない、つまり翻訳需要の少ない言語のこと

翻訳に於ける「マイナー言語」とは、流通量の少ない、つまり翻訳需要の少ない言語のことを指します。

需要の少ない言語とは日常生活で耳にすることがほとんどない言語のことですので、逆に「よく耳にする言語」をイメージすれば「それら以外の言語」としてイメージいただけるのではないでしょうか。

「マイナー言語」の反対は「メジャー言語」と呼ばれますが、それぞれ具体的には次のとおりです。

メジャー言語とは?

英語、中国語、韓国語、ドイツ語、フランス語、イタリア語、スペイン語、ポルトガル語、ロシア語、アラビア語など

マイナー言語(=メジャー言語以外の言語)とは?

  • ヨーロッパ地域
    • デンマーク語、ノルウェー語、スウェーデン語、フィンランド語、アイスランド語、クロアチア語、ハンガリー語、ルーマニア語、など
  • アジア地域
    • タガログ語、ベトナム語、ラオス語、クメール語、タイ語、ビルマ語、マレー語、インドネシア語、ヒンディー語、など
  • 中東地域
    • トルコ語、ペルシャ語、クルド語、ヘブライ語、など
  • アフリカ地域
    • スワヒリ語、アフリカーンス語、クレオール語、ソマリ語、ルワンダ語、など

言語によって異なる環境

万国共通語である英語を除き、翻訳を求められる言語は経済状況にリンクします。つまり、経済大国であればあるほどその言語は使用機会も翻訳を求められる機会も多いということです。

これは成長著しい新興国も同様で、アセアン言語はここ十数年、翻訳の需要が高まっており、まさに「経済に動きあるところに翻訳需要あり」です。

マイナー言語に分類されるものでも、アジアに住む人にとってタイ語、ベトナム語、インドネシア語などは母国語または、メジャーと呼んで差し支えない重要な言語であり、ヨーロッパに住む人にとっては北欧、東欧言語もメジャーな言語という意識があるでしょう。

一方、今はメジャーに分類されていても将来的にはマイナーとされる可能性のある言語も多々あるでしょう。

言語は、それを母語とする人が居なくなったときに絶滅するものであり、消滅言語は「十日にひとつ」とも言われていますが、これらは植民地政策、第二言語の存在、教育やインターネットの普及などによるものです。

このような言語の栄枯盛衰も視野に入れて行うようにすれば、より目的に合った、長期的な成果につながる翻訳になるでしょう。

マイナー言語の翻訳者

マイナー言語の翻訳者は少ない

言うまでもなく翻訳者は「ある言語で書かれたものを他の言語に翻訳する」ことで対価を得ています。

当然ながら需要が多く、流通量の大きな言語、つまりメジャー言語ほど仕事の数も多いので、そこに集まる翻訳者も多いものです。

裏を返せばマイナー言語は「その言語での翻訳が求められる機会が少ない」ため、翻訳者の立場からすれば「その言語を極めても十分な生活の糧を得ることができない」のが実情です。

つまり「マイナー言語の翻訳者は少ない」ということです。

言語別シェア

ちなみに、当社が翻訳を求められる言語の構成比は次のとおりですが、その構成は変わるものの、出現する言語については日本の場合はどの翻訳者、翻訳会社でもほぼ同じだと思います。

取扱言語比率

翻訳にかぎりませんが、関わる人が多いほど競争原理が働くので、品質は上がりコストは下がるものです。

日本の翻訳市場でもっとも翻訳者の数が多いのは「日本語⇔英語(英訳、和訳)」であり、次は「日本語⇔中国語(中国語訳、和訳)」で間違いないでしょう。

それ以下の言語については正確にわかりませんが、スペイン語、ドイツ語、フランス語といったメジャー言語を専門とする翻訳者はかなりの数居ることでしょう。ロシア語の翻訳者も多いかもしれません。

言語によって異なる要求レベル

翻訳者の数という母数が多ければ、文書の種類や分野など、専門特化することによって翻訳者は差別化を図ります。

つまり、メジャー言語の翻訳であれば「分野や内容などについて、かなり細かな要求をしても、それを専門とする翻訳者が見つかる可能性が高い」ということです。

しかし、マイナー言語は「翻訳者の数」という母数が十分ではないので、競争原理が働かず、得意分野の差別化どころか「その言語の翻訳ができるだけで十分」といった状況になります。

つまり、「メジャー言語では翻訳者のえり好みができるが、マイナー言語ではできない」ということです。

マイナー言語の翻訳料金

マイナー言語の翻訳料金は下がりにくい?

繰り返しますが需要と流通量が少なく翻訳者の数が少ないということは、同じ言語を得意とする翻訳者、翻訳会社間の競争原理が働かないため、マイナー言語の翻訳料金は下がりにくくなります

労働集約型産業である翻訳ではさすがに「翻訳料金が一桁違う」といった状況には陥りませんが、それでも英語や中国語などのメジャー言語とマイナー言語のあいだでは二倍近い料金差が生じることもあります。

逆に、メジャー言語の翻訳市場に於ける価格競争は激しく、安値を売りに攻勢をかける翻訳者、翻訳会社の提示する翻訳料金は、同業他者、同業他社の半分以下ということもよくあります。

マイナー言語の料金はなぜ高いのか?

よってますます、「メジャー言語の翻訳料金と比べてマイナー言語の翻訳料金は高い」と感じることになりますが、このような背景を念頭にマイナー言語とメジャー言語の翻訳料金を単純に比較するのは止めましょう

マイナーに分類されるのも、翻訳料金が下がらないのも、その言語の翻訳需要が少ないからです。よってメジャー言語と同時に発生した翻訳ニーズであっても、「マイナー言語の翻訳は別物」としての対応が必要です。

余談ですが、「自社リソースはメジャー言語の翻訳者だけ」であるにもかかわらず、「多言語対応が可能」と謳う翻訳会社は案外多いものです。

このような翻訳会社は同業他社に丸投げすることによって多言語の翻訳に対応しているため、これもひとつの、マイナー言語の翻訳料金が下がらない理由です。

尚、後述しますがマイナー言語の翻訳コストを下げる方法はあります

ひとりの翻訳者または、ひとつの翻訳会社に依頼すれば一度で用事が済む、といったワンストップの利便性はなくなりますが、どうしても翻訳コストを下げる必要がある場合には効果的な方法です。

マイナー言語の翻訳分野

どこまで深掘りすることができるのか?

前項でご説明したとおり、マイナー言語は「翻訳者の数」という母数が十分ではないことから、得意分野の差別化にまでは至っておらず、「その言語の翻訳ができるだけで十分」といった状況に陥りがちです。

メジャー言語では「○○分野で使用される→○○に強い→そのなかでも特に○○を専門とする」のように細かなところまで要求しても対応できる翻訳者、翻訳会社が見つかる可能性は高いです。

しかしマイナー言語の翻訳では、「○○語に対応できる翻訳者(専門分野不問)」のように大幅に条件を緩和しないと、対応できる翻訳者、翻訳会社が見つかりません

マイナー言語の翻訳外注で大切なこと

メジャー言語と比較すると「分野の特化ができないのに翻訳料金は高い」ことでどうしても矛先となりがちなマイナー言語ですが、高い要求を突き付けるがあまり「では残念ながらご対応いたしかねます」と辞退されて困るのは依頼主ですので、翻訳料金同様、マイナー言語の翻訳分野については「メジャー言語とは別物」という理解が必要なのです。

余談ですが、マイナー言語の翻訳では余裕あるスケジューリングも重要です。先述の通りそもそも対応できる翻訳者が少ないため、メジャー言語と比べると翻訳者のアサイン(選定、任命)に時間が掛かります。

また、マイナー言語に対応する翻訳者、翻訳会社の実績や経験は、メジャー言語のそれと比べて少なく、対応も不慣れであるため、翻訳プロセスも通常より長めに掛かるものですので、マイナー言語の翻訳を依頼するときは、納期の面でも依頼先に余裕を与えることが肝要です。

マイナー言語の翻訳料金を下げるには

ターゲット言語が母語の国の翻訳会社に外注する

予算の都合上など、マイナー言語であっても翻訳料金を下げたい場合は、「その言語を母国語とする国に居る翻訳者または、翻訳会社を利用すること」を検討してみることも手です。

前項でご説明したとおり、日本市場ではマイナーと分類される言語も、それを母国語とする国または、近隣国にとってはよく耳や目にするメジャーな言語です。

当然ながらそれらの国々ではその言語で翻訳する機会も多いため、競争原理が働くと同時に、為替も手伝ってコストダウンが図れる可能性があります。

ただし、一方の言語が日本語である場合は対応できる翻訳者の数が極端に減るため、マイナー言語であればあるほどそれを母国語とする国または、近隣国での対応は難しくなります。

多言語化を一気に進める場合は

よってマイナー言語を含む多言語化を一気に進める場合などは、先に日本語から英語に翻訳(英訳)しておき、次にその英文(英訳したもの)を軸にマイナー言語へ翻訳することで翻訳コストダウンを図る、といった方法もよく使われます(下図参照)。

  • ×)日本語 → マイナー言語A、B、C…(直接多言語展開)
  • ○)日本語 → 英語 → マイナー言語A、B、C…(英語を介して多言語展開)

この方法では翻訳を依頼する際に外国語で行う必要が生じる可能性が高いことや、翻訳者、翻訳会社にワンストップで依頼できる、といった利便性は低下します。

しかし翻訳に掛かるコストを重視するのであれば、手間を掛けることによってそれを抑えることが可能なのです。

最後に

メジャー言語とマイナー言語の特徴

本コラムで述べてきた、メジャー言語とマイナー言語の特徴をまとめると次のようになります。

言語需要と翻訳者の数翻訳料金翻訳品質
メジャー言語多い下がり易い上がり易い
マイナー言語少ない下がりにくい上がりにくい

自動翻訳(機械翻訳)の問題点

Google翻訳などAI技術の進歩に伴い精度向上の著しい自動翻訳(機械翻訳)にも多言語対応を謳うものがありますが、マイナー言語の翻訳に使うのは早計です。

自動翻訳(機械翻訳)は膨大な数の原文と翻訳文がセットになった「コーパス」と呼ばれるものをデータベースとして蓄積すること、そしてそれをAIによってより精度高く活用して翻訳文を生成することで機能していますが、マイナー言語ではそもそもこのデータ量がメジャー言語と比べて少ないのです。

「マイナー言語の翻訳需要と流通量」に基づく結果として当然ですが、潤沢なデータベースがなければ精度の高い翻訳を生成することは不可能であり、結果的に自動翻訳(機械翻訳)も人間による翻訳同様、マイナーな言語であるほど高い翻訳品質は求めにくいものである、ということをご理解ください。

まとめ

以上、「【マイナーな言語を翻訳するとき】5つのポイント」でしたがいかがでしたでしょうか。

当社は翻訳の目的や、翻訳する文書の特徴、性質などを正しく理解、見極め、相手国の文化的背景を念頭に、ホームぺージや契約書、取扱説明書、プレゼン資料、リリース、ゲーム、アプリその他あらゆるビジネスで必要なドキュメント、テキストの「プロ翻訳者による翻訳」を、英語を中心に世界120か国語で行います。

高い品質が求められる外国語対応や翻訳についてもしお困りでしたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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