【翻訳の外注先】種類、規模、特長別の見分け方と使い分け方

翻訳外注ノウハウ

突然翻訳しなければならなくなり、自分ひとりでは手に負えないので、誰かに翻訳を頼むと決めても、その先は決して平坦な道のりではありません。コラム【翻訳会社に翻訳を外注する】メリットとデメリットでは翻訳会社に翻訳を外注する場合の品質、料金、納期、情報、利便性など、それぞれのメリットとデメリットについてご説明しましたが、一概に翻訳の外注先と言っても規模や得意とする分野、体制など実にさまざまです。

そこで今回は、翻訳の外注先としてどのような候補があるのか、その種類や規模、特長などについてご説明します。

外資系のグローバル翻訳会社(巨大企業)

まず最初に挙げるべきは、世界中に拠点を有し、翻訳業界では最大の事業規模を誇るグローバルな外資系翻訳会社です。翻訳業界ではLSP(Language Service Provider、ランゲージサービスプロバイダー)または、MLV(Multi Language Vendor、マルチランゲージベンダー)と呼ばれています。島国である日本と異なり、他国と地続きの諸外国では言語転換や複数言語の利用が古くから活発であったため、翻訳の歴史は長く、そこで発祥した外資系翻訳会社が世界規模に成長したことは当然かもしれませんが、代表的な外資系翻訳会社には次のようなものがあります。

世界順位企業名本社所在地2020年収益(売上)
1位TransPerfectアメリカ約1,000億円
2位Lionbridgeアメリカ約890億円
3位LanguageLine Solutionsアメリカ約740億円
4位SDLイギリス約580億円
5位RWSイギリス約550億円
引用元:THE NIMDZI 100 THE 2021 RANKING OF THE LARGEST LANGUAGE SERVICE PROVIDERS IN THE WORLD
日本の翻訳会社としての最上位は株式会社翻訳センターで19位(約130億円、本コラム執筆時点)

グローバルな外資系翻訳会社は、彼らの規模をはるかに上回る規模の外資系グローバル大企業(ソフトウェア、自動車その他メーカー、法律事務所など)を顧客に持ち、その取引規模が(翻訳業界では巨大と言える)大きな売上を誇る理由です。言うまでもなくグローバルな外資系翻訳会社は世界中の言語に対応しており、先進的な翻訳技術に精通しているだけでなく、その技術進歩、発展の一翼を担っています。好例として、世界第4位のSDL社は「Trados Studio(トラドス)」という翻訳支援ツール(ソフトウェア)を開発、世界中に販売しており、日本も含む世界中の翻訳者、翻訳会社が利用しています。

その事業規模の大きさもあり、グローバルな外資系翻訳会社を除外するわけにはいかず紹介しましたが、初めての人が翻訳の外注先として検討するには少々敷居が高いと言えます。なぜならグローバルな外資系翻訳会社との取引には、かなりまとまった量の翻訳を、定期的に依頼する必要があるからです。グローバルな外資系翻訳会社はもちろん日本にも支社、支店、オフィスを構えていますが、そのほとんどは別の国にあるグループ会社、支社、オフィスから再委託される、日本語の絡む翻訳(和訳)を主に取り扱い、その案件の多くに日本国内の翻訳会社を下請けとして利用することで対応しています。

つまり、初めて翻訳を依頼したい人が、翻訳の依頼先としてグローバルな外資系翻訳会社または、その日本支社を選ぼうとしても、取引ができない可能性が高いのです。また、取引ができたところでグローバルな外資系翻訳会社または、その日本支社は下請けである日本国内の翻訳会社に業務を再委託するので、それなら初めから日本の翻訳会社に直接依頼しておいたほうが良い、ということになるのです。

受託した翻訳業務を下請けの翻訳会社に再委託するのは、グローバルな外資系翻訳会社の日本支社や支店だけの特長ではなく世界的な構造であり、当社にも米国その他の国々のグローバルな外資系翻訳会社の現地支社、支店から業務委託の打診が定期的に来ています。

日本国内の翻訳会社(大手)

次に翻訳の外注先候補として挙げるのは、比較的事業規模の大きな日本国内の翻訳会社です。日本にある翻訳会社は2,000社とも3,000社とも言われていますが、その数は定かではありません。また、日本国内の翻訳市場規模は3,000億円程度とも言われいます。3,000億円程度で3,000社ですので、単純計算で1社あたり売上高1億円が平均的な翻訳会社の事業規模ですが、そのなかで大手に分類されるのはほんのわずかです。おそらく20社程度ではないでしょうか。日本国内の大手翻訳会社ので上場しているのはほんの一握りであるため各社の正確な事業規模はわかりませんが、年間売上高10億円あたりから業界での存在感や業界団体に於ける発言力が増し、自然に周囲から大手と認識され始めるように思います。

大手日系翻訳会社のほとんどは多言語対応ですが、なかには対応可能な言語や分野を特化して専門性を高めているところもあります。いずれも相応の数の翻訳者を、社員ではなく業務委託先というリソースとして保有し、翻訳の依頼主と仲介することで収益を上げています。また、経営層を除く社内の構成は次のようなものですが、自動翻訳(機械翻訳)やITに力を入れている日本国内の大手翻訳会社には、エンジニアやプログラマーも在籍していると思われます。

  • 翻訳会社の構成員(経営陣を除く)
    • 営業
    • 制作(プロジェクトマネージャー、コーディネーター、チェッカー、QA、DTPスタッフ、など)
    • バックオフィス(経理、労務、IT担当など)

尚、日本国内の大手翻訳会社でも社員規模は数十~二、三百名程度であることがほとんどですので、営業はフィールドセールスが主であり、インサイドセールスやリピート顧客の対応は制作部門に所属するコーディネーターが行なうことも多いと思われます。また、マーケティング活動などはバックオフィス部門の管轄となっているのではないでしょうか。

このような日本国内の大手翻訳会社に翻訳を依頼するメリットやデメリットは、それぞれ次のようなものです。

  • メリット
    • 実績(豊富な知見を活用できる)
    • キャパシティ大量短納期案件に対応してもらえる)
    • 信用力(ブランド維持のために対応が良い
  • デメリット
    • 料金(組織を維持するために、発注最低料金など、料金は高めになる)
    • 納期(関係者が多く、一定の工数が掛かるため小規模短納期案件には弱い
    • 柔軟性(仕組みから外れるような、柔軟な対応が難しい

翻訳業界では大手に分類される日本の翻訳会社も、産業全体でみた場合そのほとんどは中小企業規模に過ぎませんので、他の業界からすれば十分機動力があり対応にも柔軟性があるように映ると思いますが、より高い専門性や使い勝手の良さを求めるのであれば、大手ではなく中小規模の日本の翻訳会社とじっくり取り組むほうが良いと思います。

日本国内の翻訳会社(中小)

次に翻訳の外注先候補として挙げるのは、中小規模の日本国内の翻訳会社です。日本国内に2,000社とも3,000社とも言われる翻訳会社のほとんどが、この中小規模の翻訳会社です。翻訳者数名が集まって法人化したような小規模事業者も含め、社員規模は2、3名から多くても20名程度の翻訳会社は、翻訳業界でも中小規模に分類されます。多言語対応力やキャパシティを強みとする大手の日本国内の翻訳会社との差別化を図るため、専門分野を設定したり対応言語を特化している翻訳会社が多いのもその特長のひとつですが、具体的には次のとおりです。

  • 専門分野(例)
    • 医療医薬関連文書専門
    • 特許書類専門
    • 医学論文専門など
  • 言語特化(例)
    • 英語のみ対応
    • 中国語のみ対応
    • ドイツ語のみ対応など

また、中小の日本の翻訳会社に翻訳を依頼するメリットやデメリットは次のとおりです。

  • メリット
    • 料金(固定費が低いため、柔軟に対応してくれる可能性がある)
    • 納期(小回りが利くため、深夜、早朝、週末や休日なども臨機応変に対応してくれる)
    • 利便性(継続的な取引を行なうことで、お客様専用の秘書のような対応が期待できる)
  • デメリット
    • 信用力(安値を売りにする翻訳会社もあるため、外注先によっては失敗する可能性がある)
    • キャパシティ(翻訳者不足により繁忙期などの対応が難しくなることがある)
    • 実績(専門・特化型であるため、対応外の言語、分野について知見が乏しい可能性がある)

手の日本の翻訳会社と中小の日本の翻訳会社の違いはたとえると、チェーン店と個店のようなものです。均一化されたサービス、一定以上保証される品質、高低いずれにも極端でない料金体系などは大手の日本の翻訳会社に優位性があり、個別サービス、職人技を求めるのであれば中小の日本の翻訳会社、といった使い分けが良いと思います。

個人事業主(翻訳者)

次に翻訳の外注先候補として挙げるのは、数名以上の組織に属さず、個人(フリーランス)として翻訳対応が可能な個人事業主(翻訳者)です。英語、中国語、韓国語その他、日本市場で流通する翻訳言語の翻訳に対応可能な日本人、外国籍人の翻訳者は、日本国内にかぎらず世界中に居るのでその正確な人数を求めることはほとんど不可能です。

また、翻訳者には個人(フリーランス)として主に自宅(または個人事務所)で作業している人もいれば、翻訳業務受託先の企業まで出向き、社内翻訳者として作業している人もいます。これらの翻訳者に直接依頼することができれば、大手、中小の別なく翻訳会社が仲介しない分、翻訳コストが下がるのは間違いありません。しかしながらそのようなケースは稀なようです。そこには次のような理由があると思われます。ただしこれらの問題さえクリアできれば、翻訳者に直接翻訳を依頼することのメリットたくさんあると思います。

翻訳者に直接外注しない(できない)理由

  • お客様から見た場合
    • 個人(フリーランス)の翻訳者を見つけることができない
    • 発注先としての信用力が欠けるため、社内稟議が通らない
    • キャパシティが小さい
    • 翻訳者個人への個別対応が必要なため、細かな指示など手間がかかる
    • 当たり外れによるリスクが大きい
  • 翻訳者から見た場合
    • 取引する上での敷居が高い
    • お客様の担当者に直接対応するのが大変である
    • 大きな案件を打診されても対応できない
    • お客様に振り回される可能性がある
    • 仲介業者である翻訳会社の助けが得られない

尚、仲介業者である翻訳会社は、お客様と翻訳者の直接取引では得ることのできない、自社が介在するメリットをお客様と翻訳者の双方に与えることで、直接取引と間接取引それぞれのメリットを最大化するのが理想的なかたちでしょう。

余談ですが、翻訳者個人に関する詳しい情報を聞き、直接コンタクトして自社専属の翻訳者にしようとするお客様が稀に居られますが、このような行為は商売道徳以前に早計ですので止めておいたほうが良いと思います。なぜなら、せっかく直接取引ができるようにしても、翻訳者との関係構築が上手くいかなければ翻訳の品質を維持したままのコストダウンにつながらないからです。そもそも翻訳者に関する情報は個人情報ですので翻訳会社が開示することはまずありませんが、そのような情報を欲しいお客様と与えてしまう翻訳会社、そしてそれに従って直接取引を始めてしまう翻訳者のあいだで、良いもの生み出すことは難しいと思います。

その他(翻訳マッチングサービス)

ここまで外資系のグローバル翻訳会社、日本国内の翻訳会社(大手)、日本国内の翻訳会社(中小)、個人事業主(翻訳者)と辿ってきた翻訳の外注先候補ですが、最後にご紹介するのは十年ほど前から現れた翻訳マッチグサービスです。ランサーズ、クラウドワークス、ココナラのように、クラウドソーシングで翻訳ができる人に直接翻訳を依頼できるサービス、とお考えいただければと思います。ランサーズ、クラウドワークス、ココナラでも翻訳の依頼は可能ですが、翻訳に特化した、翻訳サービス提供者(翻訳会社、IT系ランゲージベンダーなど)によるクラウドマッチングサービスとしては次のようなものがあります。

総合型、専門型と分けましたが、両者ともオンラインで簡単に、安価に、24時間365日、翻訳が依頼できることがその最大の特長で、両者には次のような違いがあります。

  • 総合型
    • まず提示価格を見ながら依頼先の選定を行なう
    • その後取引条件の調整を行なう
  • 専門型
    • 最初から翻訳の単位当たり料金が決まっている
    • 翻訳を依頼したい人がサービスサイトの画面上にテキストを入力(またはコピペ)する
    • テキストの量によって、すぐにその場で翻訳料金が表示される
    • 依頼主が発注を決定すると、登録翻訳者が早い者順で翻訳対応する

また、総合型と専門型には次にような違いもあります。

  • 総合型
    • 翻訳依頼も可能な、総合型クラウドソーシングサービスである
    • 翻訳にかぎらず、多種多様なサービス提供者が登録している
    • 翻訳を依頼される者として登録するためのハードルが低いので専門型より品質が低下する可能性がある
    • 時間当たりの料金体系のため、翻訳の文字数や単語数によっては専門型より安価で済む可能性がある
  • 専門型
    • 翻訳に特化している専門型マッチングサービスである
    • サービスは翻訳に特化している
    • 翻訳者として登録されるためにテストに合格する必要があるので、総合型より品質が向上する可能性がある
    • 翻訳の文字数や単語数による完全従量制なので、少量の場合は安価で済む

上記以外にも両者の違いは多々ありますが、リスクとして共通するのは、翻訳会社(またはプロ翻訳者)に外注した場合よりも低品質になる可能性が高いということです。これは「どのような実力を持つ人が翻訳するかわからない」というその仕組みや、「翻訳したものを第三者がチェックする工程がない」ことを考えれば当然であり、品質を犠牲にすることでコストを下げているという翻訳料金とのトレードオフにより実現されているサービスですので、翻訳を依頼する側の理解が必要です。

早い、安い、そこそこの品質、とその利便性こそがこのサービスの特長でありメリットなので、品質要求の低い、たとえば平易な内容のビジネスメールやSNSへの投稿記事など、翻訳の品質があとで大きな問題につながらない案件に使うといった知恵が必要です。

最後に

尚、次のようなサービスを利用する際は気を付けるようにしましょう。いずれも翻訳サービスを本業としていないため、翻訳依頼があると翻訳者や翻訳会社に再委託することになるのですが、これは翻訳品質の低下に直結します。なぜなら、自社利益を確保するために本来翻訳者や翻訳会社に支払われるべきコストが絞られるからです。翻訳は労働集約型産業であるため、コストダウンは簡単ではありません。ゆえに厳しい翻訳料金で受託するには翻訳工程を削るなどして翻訳の品質を天秤にかけるほかないのです。

  • 翻訳が専門でない事業者による翻訳サービス
    • ホームぺージに「翻訳も可能です」といった文言や、事業内容の劣後に翻訳が含まれている事業者など
  • 一括見積依頼サービス見積比較サービス

まとめ

以上、「【翻訳の外注先】種類、規模、特長別の見分け方と使い分け方」でしたがいかがでしたでしょうか。

当社は翻訳の目的や、翻訳する文書の特徴、性質などを正しく理解、見極め、相手国の文化的背景を念頭に、ホームぺージや契約書、取扱説明書、プレゼン資料、リリース、ゲーム、アプリその他あらゆるビジネスで必要なドキュメント、テキストの「プロ翻訳者による翻訳」を、英語を中心に世界120か国語で行ないます。

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