翻訳納期とは翻訳が納品される日のことですが、一般的には翻訳を発注してから納品されるまでの期間のことを指します。

お客様からすれば納期は短ければ短いほど良いと思いますが、外注先の翻訳者や翻訳会社からすれば品質を維持しながら納期を短縮することは簡単ではありません。

なぜなら自動翻訳(機械翻訳)と呼ばれる翻訳方法を除き、翻訳は翻訳者という人間が行うものでありその処理スピードには限界があることまた、人海戦術で対応しても数人の翻訳者が翻訳したものを統合する作業などに一定の時間がかかるためです。

では、どうすれば翻訳納期を短縮することができるのでしょうか?本コラムでは、翻訳納期を短縮するための5つの方法をご紹介します。

事前の準備を充実させる

翻訳納期を短縮する最初の方法は、事前の準備を充実させるということです。翻訳納期を短縮するために有効な事前準備はいくつもありますが、代表的なものは次のとおりです。

依頼先に事前情報を与える

最初に行うべき事前準備は、翻訳の外注先に事前情報与えることです。具体的には次のような内容ですが、残念ながらこのような情報がお客様から翻訳外注先に共有されることはあまりないのです。

しかしこれらはすべて、翻訳納期の短縮に効果のある貴重な情報なのです。なぜなら、情報を事前に共有してもらうことにより翻訳の外注先は事前準備できるからです。

  • 「○○のような内容の文書について、近いうちに翻訳をお願いするかもしれない」
  • 「内容は未定だが、海外企業と取引を始めたので、翻訳が必要な書類が必ず発生すると思う」
  • 「この案件は継続するのだが、次回の翻訳は○月になりそうだ」

翻訳の外注先の「事前準備」とは、正式に翻訳を外注された際に行う必要のある初動を事前に行っておくということですが、それらは次のとおり案外多いのです。

  • 最適な翻訳者の選定
  • 翻訳者のスケジュール確認
  • 翻訳者のアサイン(任命と仮押さえ)
  • 案件が大型の場合に必要な体制の構築
  • 翻訳予定の文書に関する情報収集
  • DTPやレイアウトなど、純粋な翻訳以外の作業が発生する場合に備えてのプロジェクト管理方法の検討

未確定情報に基づいて行うこれらの事前準備は予定が中止されると必要なくなってしまいますが、翻訳の外注先はもちろんそのような事態は織り込み済みです。

必要なくなる可能性があっても、品質を維持したまま翻訳納期を短縮できる有効な手段として、事前の情報提供は翻訳外注先に喜ばれるので積極的にしましょう。

また、事前情報だけでなく、「ソースクライアント(お客様のお客様)の品質へのこだわりが強いため、翻訳を納品した後も修正の依頼が来るだろう」といった「事後に関する情報」もあらかじめ共有しておくことも、品質を維持したまま全体的な翻訳納期を短縮する上で大切です。

原稿の完成度を高める

次に行うべき事前準備は、原稿の完成度を高めるということです。

「スケジュール的にどうしても今から翻訳し始めておく必要があるから。まだ原稿作成途中だが翻訳を始めてほしい。」と依頼されるケースも少なくありませんが、このような状態で翻訳し始めてしまうのは危険です。

翻訳の品質は元の原稿の出来具合に大きく影響されることは当社のコラムでも繰り返しお伝えしていますが、未完成の原稿は言うまでもなく十分に内容をチェック、推敲されていないものですので、それを元に行った翻訳が良いものになるかどうかは簡単に想像できると思います。

また、十分に内容をチェック、推敲されていない原稿は往々にして「あとで修正が入る」ものです。

  • 出来上がった原稿から翻訳を依頼した
  • 続きの原稿が出来上がったのでふたたび翻訳を依頼した
  • その後最初の原稿を見直していたらどうしても内容を修正する必要が生じたので、翻訳の修正も依頼しなければならなくなった

このようなことをすると翻訳の品質を維持する以前に、原稿の管理自体が難しいものになってしまい、結果的に納期を短縮するどころかかえって延長、長期化することになってしまいます。

よって翻訳の納期を短縮したいのであればあるほど、原稿の完成度を高めた上で依頼するようにしましょう。

作業を進め易くなる原稿を用意、提供する

次に行うべき事前準備は、翻訳作業を進め易くなる原稿を用意、提供することです。

たとえば「ホームページやランディングページなどウェブサイトの翻訳」を依頼する際、翻訳の納期短縮にもっとも効果を発揮するのは次のうちどれでしょうか?

  • 翻訳が必要なウェブサイトの、スタートページのURLだけ伝える
  • 翻訳が必要なウェブサイトの、ページ毎のURLリストを作って提供する
  • 翻訳が必要なサイトすべてのテキストを抽出した原稿ファイルを作って提供する

それぞれの結果は次のとおりです。

  • スタートページのURLだけを伝えた場合
    • 翻訳の外注先は、リンク先のどこまで翻訳する必要があるのか、ヘッダーやフッター、グローバルメニューやサイドバナーなど同じ文言が繰り返される箇所はどう対応すべきか、といった多くのことを翻訳作業前に考える必要に迫られてしまいます
    • 結果的に翻訳作業を始める前の準備に時間がかかり納期も長くなります
  • ページ毎のURLリストを提供した場合
    • 翻訳を始める前に検討、確認すべきことは1より少なくなりますが、各ページからテキストを抽出し、翻訳作業に必要なテキストファイルを作る必要が生じます
    • なぜならコーディング、アップロード、公開といった通常はウェブ制作会社が行う作業まで一括して請け負う場合を除き、翻訳はMicrosoft ExcelやWordファイルなどのテキストファイル形式で納品されるからです
    • よって翻訳作業を始める前の準備に時間がかかり納期も長くなります
  • すべてのテキストを抽出した原稿ファイルを提供した場合
    • 提供されたテキストファイルを元に、すぐに翻訳し始めることが可能です
    • Microsoft Excelファイル形式の原稿なら隣のセルに翻訳文を入力、Microsoft Wordファイル形式の原稿なら文節や段落毎に翻訳文を入力または、翻訳文だけのファイルを作って納品できます
    • よって三つのなかではもっともスムーズに作業を進められるので、納期も最短で済みます

ウェブサイトにかぎりませんが、納期を短縮するなら翻訳以外の作業に掛かる時間を短縮することが肝要ですので、スムーズな翻訳作業に役立つ原稿をできるだけ用意、提供するようにしましょう。

参照できる情報を用意、提供する

次に行うべき事前準備は、翻訳作業時に参照できる情報を用意、提供するということです。

翻訳を依頼された翻訳者は、自身の頭のなかにある知識だけを元に翻訳するわけではありません。辞書はもちろん、その他さまざまな情報を適宜参照しながら、翻訳の品質を高めつつ作業を行っているのです。

これはあまり知られていませんが、

  • 作業全体のうち純粋な翻訳つまり、ある言語をほかの言語に置き換える作業に費やす時間は実はその半分ほど
  • 残りの半分は原稿に記載された内容の意味を調べたり、情報の裏付けを取ったりといった情報収集に充てている

のです。

書かれている内容を一言一句ただ言語転換するだけであれば、AIの登場により近年その精度向上が著しい自動翻訳(機械翻訳)を使うことが、納期短縮にもっとも効果的です。

ただしこれは、翻訳の品質を問わず、前述のような調べものや情報収集を必要としない文書を翻訳する場合のみ有効です。

話が逸れましたが、作業全体の半分を占める情報収集に掛かる時間を短縮できれば、翻訳納期の短縮にも大きな効果があります。

つまり、情報収集しなくても済むような、作業中に参照できる情報を、URLリストや参考資料といったかたちで提供することが、翻訳納期の短縮につながるということです。

翻訳に求める品質レベルを見直す

翻訳納期を短縮する二つめの方法は、翻訳に求める品質レベルを見直すということです。

翻訳する目的や翻訳に期待する成果に応じて、翻訳に求める品質を調整することも納期を短縮する上で有効な手段だということですが、実は翻訳に求められる品質というのは一定ではないのです。

たとえば以下の対比はどうでしょうか?想像してみてください。

  • 大規模なプロジェクトを進める上で必要な契約書と、海外に住む外国の知人に送るレター
  • 裁判で証拠となる資料と、運営するECショップに掲載する製品案内
  • 各種届出、申請書類とプレゼン資料

翻訳の品質は、単純な良し悪しや高・低ではないのです。それぞれの目的や期待する成果が異なることから、翻訳に求められる品質も自ずと変わってくるのです。

しかし実際に翻訳を外注するときには、

  • 日本語から英語
  • 日本語から中国語
  • 英語から日本語
  • 中国語から日本語

というように、「ある言語から別の言語へ」とだけ指示し、翻訳に求める品質については言及されないことが多いのです。

そして求める品質について指示がない場合、翻訳者や翻訳会社は経験則で必要と思われる品質レベルの翻訳を行い納品することになりますが、それでは翻訳納期を短縮することもできません。

  • 裁判資料だが、ざっと内容を確認するだけなので翻訳が間違ってさえいなければよい
  • 契約書だが、あとで法務部が詳細にチェック、修正するので下地となる翻訳をとりあえずしてほしい

など原稿だけでは推察できない背景がある場合もあると思いますので、「本当にそこまで高品質の翻訳が必要なのか?」をよく検討した上で、翻訳に求める品質レベルを外注先に伝えるようしましょう。

それが翻訳納期の短縮につながるのです。

翻訳する量を見直す

翻訳納期を短縮する三つめの方法は、翻訳する量を見直すということです。

翻訳の納期は基本的に翻訳する文字数または、単語数に比例しますので、次のような対策も翻訳納期の短縮に有効です。

  • 本当に翻訳が必要な箇所とそうでない箇所を見直すことで翻訳する量を減らす
  • 一部を図や表に変更するなどして、テキストでなくとも良い箇所がないか見直して翻訳する量を減らす
  • 原稿の全文ではなく、翻訳用にサマリーやアブストラクト(概要、まとめ)など要約版を別に作ってそれだけを翻訳する

翻訳を外注する際にもっとも多いのは、手元にある文書をそのまま渡すというケースですが、「その文書に含まれる内容すべてを翻訳する必要が本当にあるのか?」と検討し直すことが結果的に翻訳納期の短縮につながることもあります。

翻訳が必要な文書といっても、必ずしもそのすべてを翻訳する必要がないことが多いのです。たとえば次のようなことを検討してみるのです。

これらはいずれも翻訳する文書の文字数や単語数を減らすことで翻訳納期を短縮するという方法ですが、ご紹介したように納期短縮以外の効果も発揮する可能性があるのでおすすめです。

  • 地図情報
    • 国内向けホームページに掲載している地図情報は、海外のお客様には不要かもしれません
    • 地図情報は自社で作成するのではなく、Googleマップを活用すれば翻訳は不要かもしれません(自動的に外国語で表示されるため)
  • 注釈や参考文献情報
    • 日本語から中国語に翻訳する場合、文書に含まれた英語は中国語に翻訳する必要はなく英語のままで良いかもしれません
    • 海外の資料などを英語から日本語に翻訳する場合も同様です
  • 図や表への変換
    • 文書に含まれる長文の一部を、図や表に変えてみるのはどうでしょうか
    • 翻訳する文字数や単語数が減って、翻訳の納期を短縮するだけでなく、読者が理解し易くなるかもしれません
  • 要約版(サマリー)の作成
    • 手元にある文書すべてではなく、その要約版を作って翻訳してみてはいかがでしょうか
    • ホームページの場合、日本語ページすべてを外国語にするのではなく1ぺージにまとめた要約版を作るだけで、十分その宣伝効果を発揮するかもしれません

翻訳する方法を見直す

翻訳納期を短縮する四つめの方法は、翻訳する方法を見直すということです。

冒頭で述べたとおり、文書すべてを自動翻訳(機械翻訳)できればそれに勝る納期短縮方法はありません。

自動翻訳(機械翻訳)なら何十ページもある文書も1分足らずで、しかもGoogle翻訳やDeepLなら無料です。しかし残念ながら、自動翻訳(機械翻訳)だけで納品できることはあまりありません。

AI技術により近年その精度向上が著しい自動翻訳(機械翻訳)ですが、高品質が求められる分野に於いてはまだ100%の信頼を獲得するに至ってはいないのです。

ただし、自動翻訳(機械翻訳)含むソフトウェアや翻訳サービスを効果的に用いたり、上手に使い分けたりすることで、翻訳納期を短縮することは可能です。

具体的には次のような場合ですが、いずれにせよやみくもに翻訳者や翻訳会社に翻訳を依頼するのではなく、翻訳する目的や翻訳に期待する成果に応じて翻訳方法を変えてみることも、翻訳納期の短縮につながるということです。

  • SNS投稿用記事やビジネスメール、ECサイトの商品、製品説明など
    • これら翻訳に求められる品質が高くない文書の場合は、自動翻訳(機械翻訳)または、クラウドソーシングサービスなどを利用することで、翻訳納期を短縮するだけでなくコストダウンも可能です
  • プレゼン資料やマニュアルなど
    • これら自動翻訳(機械翻訳)やラウドソーシングサービスよりは少し高い品質は求めるが、さほど難易度や専門性が高くない文書を翻訳する場合は、翻訳支援ツールを用いることで効率的な翻訳作業や多人数で同時に作業ができるため、翻訳納期を短縮するだけでなく翻訳品質の安定化にもつながります
  • 薬事申請書類や裁判資料、契約書、特許申請書類、論文など
    • これら難易度や専門性が著しく高い文書の場合は熟練のプロ翻訳者がしっかりと時間をかけて翻訳することが望ましいですが、その精度向上に伴ない徐々に自動翻訳(機械翻訳)が登場しつつあることを考えると、近い将来翻訳納期の短縮に貢献してくれるかもしれません

納期短縮について相談する

翻訳納期を短縮する最後の方法は、納期短縮について相談してみるということです。

「翻訳開始はどうしてもこの日になる。」「この日までに翻訳を完了してもらわないと困る。」といった事情からどうしても短納期で翻訳を依頼せざるを得ないこともあると思いますが、もっとも簡単なのは翻訳の外注先に相談してみるということです。

事前準備、要求する品質、翻訳する量、翻訳の方法などはどれも必ず翻訳の納期短縮につながりますが、翻訳外注に不慣れな人にすべてを求めるのは難しいと思いますので、

  • 翻訳する文書の準備状況や翻訳する目的
  • 翻訳に期待する成果
  • 翻訳に求める品質
  • 原稿の提供可否など

状況をできるだけ詳しく説明した上で、希望納期について相談することをお勧めします。

経験豊富な翻訳者や翻訳会社であれば、お客様が求めることを瞬時に読み取り、最適な解決策を提案してくれるはずです。また、相談した際の反応が翻訳外注先を選ぶ上で参考になります。

  • できるかできないかを答えるだけでなく、できることとできないことときちんと話すかどうか
  • メリットやデメリットをきちんと説明するかどうか
  • 自社に有利なことも不利なこともきちんと話すかどうか

相談した際にこれらを確認することで、翻訳者や翻訳会社ののスタンスが浮き彫りになります。

「翻訳を外注できるかどうかはわからないが相談にのってほしい」と伝えたときに、いかに真摯に、誠実に、お客様の話す内容に耳を傾けるかどうかといったことも、翻訳の納期を短縮するひとつの要素なのです。

最後に

  • 翻訳納期は短縮しないに越したことはない
  • 翻訳の依頼はしっかりスケジュール設定して計画的に
  • 余裕を持った翻訳依頼を

当社は繰り返しお客様にお伝えしていますが、お客様のお客様のご都合その他、翻訳を外注する際は予期せぬ事態が往々にして発生するものです。

そのような場合にいかに翻訳納期を短縮するかについて説明してきましたが、翻訳者や翻訳会社によってはさらに良い提案ができるところもあると思います。

「相談するとしつこく営業されるのではないか。」「上手く言いくるめられるのではないか。」という不安もあると思いますが、前述のとおり相談した際の対応が翻訳の外注先を選ぶ上での良い基準となることもありますので、遠慮せずにぜひご相談してみてください。

また、翻訳納期については以下のコラムやページもぜひお読みください。

まとめ

以上、「【翻訳の納期を短縮する】5つの方法」でしたがいかがでしたでしょうか。

当社は翻訳の目的や、翻訳する文書の特徴、性質などを正しく理解、見極め、相手国の文化的背景を念頭に、ホームぺージや契約書、取扱説明書、プレゼン資料、リリース、ゲーム、アプリその他あらゆるビジネスで必要なドキュメント、テキストの「プロ翻訳者による翻訳」を、英語を中心に世界120か国語で行います。

高い品質が求められる外国語対応や翻訳についてもしお困りでしたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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