プロ翻訳者による翻訳が必要であり続ける5つの理由

プロ翻訳者による翻訳が必要であり続ける5つの理由

 

AIの活用による精度向上が近年著しい「自動翻訳(機械翻訳)」。翻訳に接することはおろか、意識することさえほとんどない方でも、「Google翻訳」の存在とその翻訳精度が増していることについてのニュースは目にしたことがあるかもしれません。

翻訳にかぎりませんが、いつの時代も革新的な技術進歩があるとかならず出てくるのが「人間vs機械」論争。「AIに仕事を奪われる!」「無くなる仕事。残る仕事」といった刺激的な見出しで読者の目を引こうとする記事を探すのに苦労は要りません。

では、翻訳業界ではどうなのでしょうか?急速に進化を遂げている自動翻訳(機械翻訳)が、今あるプロ翻訳者の仕事をすべて奪ってしまうのでしょうか?

本記事では、「プロ翻訳者の仕事が(当面)無くなることはない」と当社が考える理由についてご説明します。

翻訳品質の問題

「自動翻訳(機械翻訳)の台頭によりプロ翻訳者の仕事が(当面)無くなることはない」と当社が考える最初の理由は、「翻訳品質」の問題です。

冒頭で「AIの活用による~自動翻訳(機械翻訳)」と表現した「ニューラル機械翻訳(NMT)」の登場により、自動翻訳(機械翻訳)の精度はそれまでの「ルールベース」や「統計ベース」よりも向上していることは間違いありません。

しかし、「ニューラル機械翻訳(NMT)」の代表である「Google翻訳」に英文を入力して日本語に(和訳)してみればすぐにわかりますが、残念ながらその性能はまだ十分とは言えません

この現象は翻訳する量が増えれば増えるほど顕著になるので、「一文節」と「一段落」の文章で試しに比べてみるとよいでしょう。「一文節」では及第点の翻訳を生成できていても、「一段落」になると途端に厳しい結果になると思います。

これはひとえに、

  • 自動翻訳(機械翻訳)では文脈を考慮できない
  • 用語の統一が行なえない

といったことに起因するものです。

文章には、文法の正しさに加え、伝わり易さ、メッセージ性の高さ、訴求力、言語化されていなくても全体として言わんとしていること、などが含まれ、それらを総括して「良い文章」と「そうでない文章」に評価が分かれますが、そのような繊細な部分を読み取ったり、表現したりする力は今のところ人間つまり、プロ翻訳者にしかできない技です。

製品スペックや成分表の翻訳など、単語の置き換えでその役目を果たすことができるものであれば今の時点でも自動翻訳(機械翻訳)で十分ですが、多くの場合翻訳したものには文章としての美しさやなめらかさが求められるため、プロ翻訳者による翻訳が必要不可欠な時代はまたしばらく続くと思われます。

専門領域の問題

「自動翻訳(機械翻訳)の台頭によりプロ翻訳者の仕事が(当面)無くなることはない」と当社が考える二つ目の理由は、「専門領域」の問題です。

プロ翻訳者はそのほとんどが、言語だけでなく分野に於いても専門とする領域を持っています。ある翻訳者は「法律分野に於ける英語翻訳」を専門としており、別の翻訳者は「医療分野に於けるドイツ語翻訳」を専門としている、といった例がわかり易いかもしれません。

専門領域を持つことにはもちろん他の翻訳者との差別化という目的もありますが、それ以上に翻訳者が過去に仕事で携わっていた分野であったり、翻訳の仕事を続けるなかで経験値と練度を高めてきた結果であることが多いのです。

つまり、プロ翻訳者は自身が専門とする分野や言語に於ける経験と実績が豊富であり、その領域の翻訳であれば自らの力を如何なく発揮して翻訳することができるのです。

これに対して自動翻訳(機械翻訳)は基幹システムつまり、汎用品です。どの言語のどの分野でも利用できるような幅広いユーザビリティがその特長であり、そのような前提で開発されているため専門領域を持つことはありません

エンジンと呼ばれる機械翻訳ソフトウェアのコア部分をカスタマイズまたは、チューニングすることで調整(専門性を多少高めること)は可能ですが、これらは結局、翻訳の依頼主または依頼先(翻訳会社や翻訳者など)といった「人」が行なう必要のあることであり、それに掛かる手間も小さなものではありません。

よって特定の分野や専門性の高い領域を中心に、プロ翻訳者による翻訳が必要不可欠な時代はまたしばらく続くと思われます。

機械的処理による問題

「自動翻訳(機械翻訳)の台頭によりプロ翻訳者の仕事が(当面)無くなることはない」と当社が考える三つ目の理由は、「機械的処理」の問題です。

自動翻訳(機械翻訳)はその名が示すとおり「機械が翻訳する」もしくは、「機械的に翻訳する」ことです。機械が行なう以上、なんらかのトラブルが常につきまとうのは致し方ありません。

何度も例に挙げて申し訳ありませんが、Google翻訳で試してみましょう。一言一句すべてきれいに翻訳されていますか?全体の文意は伝わっても、部分的に翻訳されていなかったり、違った言葉に翻訳されている箇所があったりしませんか?

こういったエラーが突発的に発生するのが自動翻訳(機械翻訳)ですが、機械的に処理された結果であるがゆえに、なぜそのような翻訳結果になったのかは究明できないのです。

また、AIにより流ちょうな文章を生成できるようになったがゆえに、翻訳が間違っているところ、翻訳の足りないところ、を検出する難易度がかえって高まっており、その確認に要する労力や時間は決して小さく短いものではありません。

このような問題を解決する、つまり翻訳の品質を高めるために「MTPE(ポストエディット=自動翻訳(機械翻訳)したものを人(翻訳者)が手直しする)」といった新しい方法を取り入れる翻訳会社が増えつつありますが、まだまだ過渡期であることそしてなによりも、その手直しをするのが翻訳者であることからも、プロ翻訳者による翻訳が必要不可欠な時代はまたしばらく続くと思われます。

ハンドリングの問題

「自動翻訳(機械翻訳)の台頭によりプロ翻訳者の仕事が(当面)無くなることはない」と当社が考える四つ目の理由は、「ハンドリング」の問題です。

「ハンドリング」とは「取り扱いのし易さ」ということです。

自動翻訳(機械翻訳)はその言葉により「ある言語で書かれた文章を放り込めば、自動的に他の言語で書かれた完璧な文章が吐き出される」というイメージを想起させますが、残念ながらまだそこまでには至っていないことはこれまで述べてきたとおりです。

「ある言語で書かれた文章が、他の言語で書かれた文章に置き換わる」ことに間違いはありませんが、「完璧に」ではないということです。

そして「完璧に」するためには、「コーパス」と呼ばれるテキストを大規模に集めてデータベース化した言語資料を用意することはもちろん、それを元に最適な翻訳を生成するためのカスタマイズやチューニングが必要なのです。

これらはもちろん、基本的には自動翻訳(機械翻訳)サービスを提供している会社が行なっていることですが、自動翻訳(機械翻訳)された結果を自社で発生する翻訳ニーズに最適なものとするには、たとえ一部であってもそれらの作業を自社内で行なう必要が生じるのです。

そしてその作業は、翻訳そのものを生業としていない、もしくは翻訳専門部署を設置していない、または担当者がいない会社にとっては簡単なことではありません。

  • 電話やメールで要望を伝え
  • 電子ファイルや紙媒体といった翻訳が必要なドキュメント(文書)を渡すだけで
  • あとは品質が保証された最適な翻訳が届く

といった利便性の高さを考えると、プロ翻訳者による翻訳が必要不可欠な時代はまたしばらく続くと思われます。

信頼性の問題

「自動翻訳(機械翻訳)の台頭によりプロ翻訳者の仕事が(当面)無くなることはない」と当社が考える五つ目の理由は、「信頼性」の問題です。

ここまで何度も繰り返してきましたが、機械翻訳したものをそのまま使用するにはまだまだ勇気が要るのが実情です。無謀といっても過言ではありません。

自社グループ内の外国籍従業員とのメールやプライベートのSNS投稿記事といった「自動翻訳(機械翻訳)程度の品質で十分」なドキュメント(文書)を翻訳する場合は別ですが、ビジネスに於いて翻訳が必要となるドキュメント(文書)のほとんどには高い品質が求められます。

なぜなら翻訳結果によっては大きな問題に発展したり、場合によっては自社の屋台骨が揺らぐ事態になりかねないからです。

自動翻訳(機械翻訳)はサービス提供会社やそれに使用されているエンジンと呼ばれる機械翻訳ソフトウェアのコア部分によって出力結果つまり、翻訳品質が大きく変わることはあまり知られていません。

「どの自動翻訳(機械翻訳)サービスを使っても結果は一緒」もしくは、もっと極端に言うと「自動翻訳(機械翻訳)はプロ翻訳者を代替するサービスであり、当然品質も一緒」と捉えられている節がありますがこれは大きな間違いです。

実際、自動翻訳(機械翻訳)したと思しきおかしな外国語の文章を、行政機関や企業のホームページで目にする機会は少なくありません。

しかし、これなどは「誤った情報、誤ったイメージを広く世界に発信している」といった点でも由々しきことであり、自社利益が見込めないどころが、大きな損害につながる恐れさえあります。

このように翻訳結果への信頼性という面をとっても、プロ翻訳者による翻訳が必要不可欠な時代はまたしばらく続くと思われます。

まとめ

以上、「プロ翻訳者による翻訳が必要であり続ける5つの理由」でしたがいかがでしたでしょうか。

念のためお伝えしておくと、当社は自動翻訳(機械翻訳)否定派ではありません。

翻訳会社である当社でも(海外顧客とのメールのやりとりいった)業務に於いてや、その精度を確認するために自動翻訳(機械翻訳)を敢えて利用する機会は多く、時間とともに翻訳精度が向上していく様には驚くことも少なくありません。

また、現代の翻訳には先述した「プロ翻訳者による翻訳」と「自動翻訳(機械翻訳)」に加え、その折衷案と言ってよい「MTPE(ポストエディット=自動翻訳(機械翻訳)したものを人(翻訳者)が手直しする)」といった新しい方法法が徐々に取り入れられつつあり、お客様のコスト面のご要望にお応えすべく当社でも日々試行しています。

翻訳は手段であり目的ではありません翻訳する目的や、翻訳に期待する成果につながるものであれば、どのような工程をたどった翻訳であってもそれは立派に役目を果たしていると当社は考えます

よって本コラムはあくまでも「今現在の自動翻訳(機械翻訳)を実際に使ってみた結果」から述べていることであり、未来永劫「プロ翻訳者による翻訳は無くならない」と申し上げているわけではありません。

  • 書いたことや書かれていることが自動的に翻訳される
  • 話したことや聞いたことが自動的に通訳される

言葉の壁や言葉の違いによる意思疎通の難しさが取り払われた未来はきっと、今よりもずっと素晴らしく、平和的であるように思え、翻訳業界に於ける技術進歩とそれによる社会貢献にはワクワクするばかりです。

しかし機械が行なう処理である以上、その管理、運用、精度向上には人間の介在が不可欠です。そしてその人間こそがプロ翻訳者なのではないか、と当社は考えています

自動翻訳(機械翻訳)かプロ翻訳者による翻訳かでお悩みの方は、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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