AIの活用によりその精度向上が近年著しいと話題の自動通訳機や自動翻訳(機械翻訳)機。
大御所お笑いタレントをCMに起用したソフト・ハードウェア開発・販売会社の通訳機やGoogle翻訳の名を、2020年3月まではインバウンド(来日外国人観光客)の活況もあって一度は目や耳にしたことがある方も多いと思います。
自動通訳機も自動翻訳(機械翻訳)機もコアとなる部分は同じ、大学や研究機関、業界では数十年前から研究、開発が続けられている機械翻訳と呼ばれる言語置換システムです。
自動通訳は自動翻訳(機械翻訳)に音声認識と音声出力機能を加えたもの、と言えばより理解が進むのではないでしょうか。
さてこの自動翻訳(機械翻訳)、Google翻訳だけでなくさまざま企業や団体が無料、有料で提供しています。
自動翻訳、機械翻訳とインターネットで検索すれば両手に余るほどのサービスやツールがすぐに見つかると思いますのでここでは詳細を省きますが、その精度向上に伴ない翻訳業界でもこの自動翻訳(機械翻訳)の活用が近年急速に進みつつあります。
中にはGoogle翻訳を使われたことのある人もいると思いますが、結果はいかがでしたでしょうか?本コラムでは、自動翻訳(機械翻訳)を使う場合の心構えや注意点についてご説明します。
情報漏洩のリスクを念頭に使う
- サイトにアクセスする
- 翻訳したい文章を入力する
- 翻訳したい言語を指定する
- 翻訳された文章が表示される
一般的に普及している自動翻訳(機械翻訳)は、無料かつウェブサイト上でサービスを提供するものがほとんどです。
わかり易く言う上に示したような流れで簡単に使うことができるサービスですが、注意すべき点がひとつあります。それはウェブサイト上に文書をアップロードしているということです。
つまりそれは、自分がアップロードした文書の内容を、サービス提供会社や運営会社など自分以外の誰かが見ることができる可能性があるということです。
また、それだけでなく自動翻訳(機械翻訳)はそのコアとなる機械翻訳エンジンを中心に、すべての工程をコンピュータシステムが行うため、予期せぬエラー等により個人がアップロードしたコンテンツが他のユーザーに見えてしまう、つまり情報漏洩の可能性もゼロではありません。
プレスリリースやニュースリリースなど、当日その時間まで絶対に秘密厳守なコンテンツがもし事前に漏洩しまったら、アップロードした本人はもちろん所属する会社、団体やステークホルダーを巻き込む大きな損害につながる可能性もありますが、利用規約にその旨定められていることもあり、サービス提供会社が損害を保証してくれることはありません。
以上のことから、自動翻訳(機械翻訳)サービスを利用する際は、翻訳者や翻訳会社に依頼する場合と比べてシステム上の情報漏洩リスクが高まることを忘れないようにしましょう。
翻訳結果を鵜吞みにしない
ちゃんと翻訳できて当たり前、と自動翻訳(機械翻訳)を使う人の多くはお考えだと思います。たしかに、サービスとして提供する以上そうあるべきです。しかし実際にはそうではありません。
自動翻訳(機械翻訳)したものがそのまま使えるかというと、残念ながらまだその域には達していないということです。外国語が堪能な人は試しに使ってみるとすぐにそのことを実感できます。
外国語に自信のない人でも、ウェブサイトに公開されている海外記事などを試しに日本語に翻訳してみれば、その結果を確認することができるでしょう。
日進月歩で日々改良、進化しつつある自動翻訳(機械翻訳)であり、その精度向上には驚かされるばかりですが、それでもまったくできなかったことがまあまあできるようになった、という表現が適切と思われる程度の進化です(もちろんそれはそれで素晴らしいことです)。
よって今現在、自動翻訳(機械翻訳)したものをそのまま公開したり公式に使う場合は、「これは自動翻訳(機械翻訳)したものです」と免責事項が併記されています。
また、翻訳の間違いがあると困る場合などは、「ポストエディット(自動翻訳(機械翻訳)したものを翻訳者が修正する)」と呼ばれる方法で対処しているのが実情です。
いつか遠くない未来、100%の信頼を以て自動翻訳(機械翻訳)したものを利用することができる日が来ると思いますが、今の段階では翻訳結果を鵜吞みにしないことを念頭に、自動翻訳(機械翻訳)サービスを使うようにしましょ使う
翻訳した後より翻訳する前の文章を修正する
外国語が堪能な人が自動翻訳(機械翻訳)を使うと、翻訳結果が思わしくないものであることはすぐにわかると思います。
そのような場合、外国語ができるがゆえについ自分で翻訳を修正してしまいがちですが、翻訳の元となった文章(原文)を修正するほうが解決が早い場合が多いのです。
美しい翻訳文は美しい原文から、と当社はよくお客様にお伝えしていますが、乱暴な言い方をすれば、まともでないものからまともなものは生まれにくいのが翻訳です。
また、日本語と外国語では文法構造がまったく異なるものが多いため、翻訳の元となる文章が曖昧なものだと、翻訳された文章も目も当てられないようなものになります。
- なるべく短い文章にする(一文節を短くする)
- 文章に「主語」を加える(日本語の文章では割愛されがちなため)
- 慣用句や故事成語など、日本人にしかわからない内容を含めないようにする
自動翻訳(機械翻訳)を使う際のコツとしては上に挙げたようなものが代表的ですが、「機械翻訳_注意点」といったキーワードで検索すればそれ以外にも多くのコツを見つけられると思いますので是非ご活用ください。
元の文章に主語を入れたり、表現を明確にするために修正していると、自分が書いたものでさえ如何に曖昧で、さまざまな解釈、誤解を生むする可能性があるかがすぐにわかります。
日本語にはハイコンテクスト(文脈から理解する必要がある)という特徴があり、一つひとつ言葉で説明しなくても読者に伝わるものです。しかし裏を返せばそれは、日本語を母語とする民族である日本人以外にはまったく伝わらないのです。
そのことを念頭に、翻訳する前の文章を修正しながら自動翻訳(機械翻訳)するようにしましょう。
ツールによって精度が異なることを知る
自動翻訳(機械翻訳)はGoogle翻訳だけでなく、さまざま企業や団体が無料、有料で提供していると冒頭でお伝えしました。
また、自動翻訳(機械翻訳)はそのコアとなる機械翻訳エンジンを中心に、すべての工程をコンピュータシステムが行うこともお伝えしたとおりですが、自動翻訳(機械翻訳)サービスを提供している組織も多ければそのコアとなる機械翻訳エンジンもいくつもの組織が開発しています。
なかには同じ機械翻訳エンジンまたは、複数の機械翻訳エンジンを搭載した自動翻訳(機械翻訳)サービスを提供している組織もありますが、この機械翻訳エンジンの違いによって翻訳の精度、つまり品質や正確性が変わることを理解しておきましょう。
Googleを筆頭に機械翻訳エンジンの開発は、世界的企業から中小企業、国立の研究機関までさまざま組織が行っていますが、それぞれに異なった方法やルートで収集したコーパス(テキストを大規模に集めてデータベース化した言語資料)を元に、独自のアルゴリズムで翻訳文を生成しているので翻訳の結果が異なるのは当然でしょう。
どの自動翻訳(機械翻訳)サービスがどのような文書の翻訳に向いているか否かはここでは割愛しますが、無料のものは汎用性に富み、有料のものは専門性が高いという認識で各社が提供する自動翻訳(機械翻訳)サービスを使うことをお勧めします。
翻訳者や翻訳会社によって得意、不得意な言語や分野があり、納品される翻訳の内容も異なるように、ツールによって精度が異なることを念頭に自動翻訳(機械翻訳)サービスを使うようにしましょう。
最後に必ず人間が確認する
前項でお伝えしましたが、自動翻訳(機械翻訳)した翻訳文をそのまま使うのはまだ危険です。だから最後には必ず翻訳された文章を、その良し悪しを理解できる人が確認するようにしてください。
コンピュータシステムという機械が独自のアルゴリズムに基づいてシステマティックに行うがゆえに逆に原因がわかりにくいのですが、自動翻訳(機械翻訳)を使う際は次のようなことに注意する必要があります。
- 文節や文章が丸ごと翻訳されずに、翻訳文から抜け落ちていないか
- 同じ用語や単語なのに、さまざま用語や単語に翻訳されていないか
- 人名や固有名詞などは、入念に確認する必要がある
AIの活用により生成される翻訳がよりそれっぽく、つまりなめらかで人間的な文章になったがためにかえって間違いや抜け、漏れに気付きにくくなったと言われているのが最近の自動翻訳(機械翻訳)です。
ゆえに翻訳結果だけでなく、低コスト、短納期、AIといった耳障りの良いセールストークを鵜呑みにすることなく、冷静に、翻訳されたものが使えるかどうかの品質チェックが必要です。
よって自動翻訳(機械翻訳)サービスを使った場合は必ず、最後に人間がその内容を確認するようにしましょう。
最後に
自動翻訳(機械翻訳)は今後ますますその精度を増し、平易な内容で、翻訳品質がさほど問われない次のような文書などの翻訳への活用は一層拍車がかかっていくと思われます。
- ECサイトの製品、商品案内のように、単語の置き換えに近い文章
- 近しい相手とのあいだのビジネスメール
- プライベートのSNS投稿用記事
無料で使えるものもあるという点でも社会的な存在価値は大きく、その上手な活用方法については当社も今後も研究を重ねていきたいと思いますが、現時点ではまだご説明したとおりですので、安易に利用して大きな失敗をすることだけは避けてください。
尚、翻訳するときにもっとも大切なのは、翻訳の用途や目的に応じて翻訳方法を適切に使い分けることです。なぜなら翻訳方法によってそれにかかる費用や時間、そしてなによりも翻訳の品質が明らかに異なるからです。
ビジネスの成果に大きな影響を与える大切な文書は品質を最優先とすべきであり、翻訳会社の経験と実績豊富なプロ翻訳者に依頼すべきです。
一方、ケースバイケースですが翻訳の品質がさほど大きく悪影響しない、たとえば身内間のコミュニケーションやSNS投稿または、eMailなどの翻訳はコスト重視で自動翻訳(機械翻訳)を使っても問題はないでしょう。
まとめ
以上、「【自動翻訳を使うとき】注意すべきこと」でしたがいかがでしたでしょうか。
当社は翻訳の目的や、翻訳する文書の特徴、性質などを正しく理解、見極め、相手国の文化的背景を念頭に、ホームぺージや契約書、取扱説明書、プレゼン資料、リリース、ゲーム、アプリその他あらゆるビジネスで必要なドキュメント、テキストの「プロ翻訳者による翻訳」を、英語を中心に世界120か国語で行います。
高い品質が求められる外国語対応や翻訳についてもしお困りでしたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。