翻訳料金の見積もりを依頼するとき、どんな情報を翻訳会社に提供していますか?
「Microsoft Wordで作った原稿ファイルを提供するので、日本語から英語に翻訳してほしい」。
そのような最低限必要な情報だけを伝えて見積もりをとり、見積もり金額のもっとも安かった翻訳会社に発注、という流れをたどる人が多いと思いますが、それでは良い翻訳を最適なコストで調達できません。
翻訳料金の見積もりを依頼するときに翻訳会社に伝えるべきことについては【翻訳を依頼】するときの5つのステップをお読みいただければと思いますが、本コラムでは翻訳料金の見積もりを依頼するときに、翻訳会社の見積担当者が聞きたい情報、つまり伝えるべき情報についてご説明します。
翻訳会社の見積担当者が聞きたい情報を的確に提供できれば、杓子定規な対応を防ぎ、良い翻訳を受け取ることができるだけでなく、普段より頑張った対応を翻訳会社にしてもらうことができます。
目次
翻訳に期待する成果を伝える
なんのためにこの文書を翻訳しなければならないのか、という「翻訳する目的」を伝えることも大事ですが、それ以上に翻訳した文書に何を期待しているのか、つまり「翻訳に期待する成果」を伝えることが大切です。
一歩先の「翻訳する目的」だけでなく、その先にある「翻訳に期待する成果」を共有することで、翻訳会社の見積担当者にあなたと共同体であるという意識そして、成果を出すために貢献したいという当事者意識を芽生えさせることにつながります。
- 翻訳する目的
- 英語版のホームページを公開するため
- 外資系企業との取引にあたり、契約を結ぶため
- マーケットレポートを発行するため
- 翻訳に期待する成果
- 海外市場での知名度アップ
- 外資系企業との取引拡大
- 最新の世界情報に基づく研究、開発
さらに翻訳会社の見積担当者のリアクション、たとえば、
- 親身になって相談に乗ろう、という姿勢がうかがえるか?
- さまざまな翻訳方法や、最適な翻訳プロセスを積極的に提案してくるか?
- 自社への発注前提ではなく、依頼主であるたなにとって有益かどうかを第一に考えているか?
といった本音や姿勢が垣間見えるので、信頼できる翻訳外注先選びにも役立ちます。
最終的には自分または、自社利益の最大化のために翻訳をするのは誰でも同じですが、目の前にある文書の「翻訳に期待する成果」を伝えることは「翻訳することで何を実現しようとしているのか?」という自問にもつながり、翻訳外注を客観的、俯瞰的にすることができるようになります。
だからこそ翻訳料金の見積もりを依頼するときは、「翻訳に期待する成果」を翻訳会社の見積担当者にかならず伝えるようにしましょう。
見積もりを検討するときに重視するポイントを伝える
翻訳料金の見積もりを依頼するときに重視するポイントのトップ3は、
- 翻訳料金(コスト)
- 翻訳品質(クオリティ)
- 翻訳納期(スピード)
のいずれかで間違いないでしょう。そしてほとんどのお客様は「最高品質の翻訳を最低料金、最短納期で」と期待されるものです。
当社はこれらのなかでは翻訳品質(クオリティ)にもっとも力を入れ、その次に翻訳納期(スピード)、そしてそれらを含めた総合的なサービス(対応力)をその特長としています。
しかし残念ながら、サービス(対応力)は往々にして翻訳料金(コスト)に負けてしまいます。なぜならご発注に至らなかった理由は十中八九「他社のほうが翻訳見積料金が安かったから」だからです。
良いものを安く手に入れたいのは購買心理の最たるものです。
皆様も、同じ性能や効果を期待できるものであればもっとも価格の安いところから、もしくは同じ価格であればもっとも付加価値の高いものを、と何かを買うたびに選択、判断しているのではないでしょうか。
しかし実際には「より良いものをより安く購入している」、つまりどこかで妥協しているのが世の中です。なぜなら大抵の場合、良いものは高く、そうでないものは安いからです。
ブランド品などはまさにそれで、乱暴な言い方をすれば安くなっては価値が落ちる、つまりもはやそれはブランド品ではなく大量生産の汎用品と同じものになってしまいます。
要は高いには高いなりの理由があり、安いには安いなりの理由があるということであり、これは翻訳も同じです。
どこに頼んでも、誰がやっても同じ品質の翻訳が納品される、と思われがちですが実はまったくそうではなく、料金、品質、納期を例にとると次のような図式が成立します。
- 品質が良い → 料金が高い
- 品質が悪い → 料金が安い
- 料金が高い → 納期が短い
- 料金が安い → 納期が長い
- 納期が短い → 品質が悪くなる
- 納期が長い → 品質を維持できる
つまり、翻訳料金(コスト)、翻訳品質(クオリティ)、翻訳納期(スピード)3つの要素すべてがトレードオフの関係にあるのです。
実際に翻訳料金の見積もりを依頼するときに参考になる、実用的な表現では次のようになります。
- 高い品質を求めるなら、それなりの料金を支払う必要がある
- 高い品質を求めるなら、十分な納期を確保する必要がある
- 料金を安くしたいなら、ある程度品質を犠牲にする必要がある
- 料金を安くしたいなら、十分な納期を確保する必要がある
- 短い納期を求めるなら、それなりの料金を支払う必要がある
- 短い納期を求めるなら、ある程度品質を犠牲にする必要がある
翻訳料金の見積もり依頼先をインターネットで探すと業界最安値、最高品質といった美辞麗句が並びますが、実際にはそのようなことはあり得ないことはこれでおわかりいただけると思います。
だから翻訳料金(コスト)、翻訳品質(クオリティ)、翻訳納期(スピード)もしくはそれら以外でもっとも重視するのはどれなのか、またはどれとどれをトレードオフできるのか、といったことを事前によく考える必要があります。
そしてその結果を元に、翻訳料金の見積もりを依頼するとき、「見積もりを検討するときに重視するポイント」を翻訳会社の見積担当者にかならず伝えるようにしましょう。
翻訳の品質を確認するのが誰なのかを伝える
「翻訳者→翻訳会社→お客様(担当者)→お客様(品質最終確認者)→お客様のお客様」
翻訳は大抵このような工程を経て世に出ます。そして最終的に翻訳の良し悪しを判断するのはもちろん、お客様のお客様、つまりエンドユーザーです。
外国語のホームページであれば、その良し悪しを判断するのはそれを目にする業界関係者もしくは一般消費者であり、外国語の契約書であればお取引先、マーケットレポートであれば投資家や研究者その他ステークホルダーといったところでしょうか。
しかしこれらの人たちが判断するのは、厳密には翻訳そのものの良し悪しではありません。翻訳された結果を読んでどうするか、ということです。
ホームページの翻訳が良くない場合、「ひどい翻訳だからこの会社から買うのは止めよう」であり、契約書の翻訳結果によっては取引中止、マーケットレポートの翻訳結果によっては投資しない、情報としての信頼性が低い、といった経営判断をされるのです。
だからネガティブな判断をされないよう、翻訳は世に出す前にかならす、入念にその品質を確認する必要がありますが、厄介なのは良し悪しの判断基準が数値化できないことです。
その上、翻訳は文章であるがゆえに読み手の嗜好や性格などによって評価が大きく分かれてしまうのです。
そしてさらによくある問題は、翻訳会社から納品された翻訳の良し悪しを判断する人と、最終的に翻訳されたものを読んで判断を下す人の国籍が異なる場合が多いことです。
わかり易く言うと「お客様の品質最終確認者は日本人だがお客様のお客様は外国人」といったケースですが、以下のような事態に陥ることが少なくないのです。
- 品質確認を行う社内担当者(日本人)は良いと判断したのに、外国人のお客様の評価は良くなかった
- 外国人のお客様にとっては良い翻訳なのに、品質確認を行う社内担当者(日本人)の評価は良くなかった
1の場合は単純に、品質最終確認者(日本人)の外国語スキルもしくは、品質確認体制が不十分であることから早期改善の余地は十分にあります。
しかし2の場合は厄介です。
これはお客様の品質最終確認者(日本人)が外国語に堪能かつ、ご自身の外国語能力の高さを自負されている場合に起こりがちなのですが、お客様のお客様(外国人)のご意見に関係なく翻訳会社と品質について揉めることもあります。
翻訳の品質は「それを以てお客様のお客様(外国人)がどう経営判断を下すか」が重要であり、そこを基準に評価すべきなのですが、残念ながら翻訳は文章であるゆえに品質最終確認者によって評価が大きく分かれることがあるのです。
そして翻訳会社はそのことを念頭に、お客様との翻訳納品後のスムーズなやりとりを実現するために、納品する翻訳内容を微調整する必要もあるのです。
だから翻訳料金の見積もりを依頼する際は、「翻訳品質を確認するのが誰なのか」を翻訳会社の見積担当者にかならず伝えるようにしましょう。

過去の翻訳発注経験や今後の依頼予定を伝える
- ほかの翻訳会社に翻訳を依頼したことがある
- その結果は良かった/悪かった
- 今回はそれら(過去の経験)を元に新たな翻訳外注先を探している
- 自社では恒常的に翻訳ニーズが発生しており、今後も定期的に翻訳を外注する可能性がある
翻訳料金の見積もりを依頼するときに、このような情報を提供することも大切です。
なぜならこれらは、翻訳外注経験や知見、翻訳外注時の課題や問題意識があることを翻訳会社の見積担当者に知らせることになり、対応が変わるからです。
お客様に翻訳の発注経験や知見があれば、業界用語を駆使した一層深い打ち合わせができます。
また、お客様の翻訳外注に関する課題や問題意識を共有することで、最適な解決策を積極的に提案できます。さらに今後の依頼予定は、翻訳会社の見積担当者の受注意欲を高めます。
何も伝えないと、翻訳会社の見積担当者はお客様のことを翻訳外注をよくご存知ない人として理解、対応せざるを得ず、混乱を招くような込み入った話も提案も控えがちになるものです。
そしてその場合、お客様にとって有益な情報が十分に提供されない、漏れてしまう可能性もあります。
だから翻訳料金の見積もりを依頼するときは、「過去の翻訳発注経験や今後の依頼予定」を翻訳会社の見積担当者にかならず伝えるようにしましょう。
翻訳の発注について知見があることを暗に伝える
前項内容ともつながりますが、翻訳料金の見積もりを依頼するときに、「翻訳を発注したことがある」と伝えると、翻訳会社の見積担当者はお客様のことを、翻訳の依頼に関して少なからず知見がある人なのだと改めて気を引き締めるものです。
「いい加減は対応は通用しない相手である」とお客様に対して一目置くようにもなるでしょう。
いい加減な対応が許されないのは翻訳の依頼にかぎったことでありませんが、翻訳発注経験があると知らせるだけで「翻訳会社とやりとりした経験があり、依頼時に注意すべき点や納品時および、その後のフィードバック、修正対応の問題点など、全体的に把握している」と暗に伝わるものです。
要はお客様であるあなたのことを翻訳外注をよくご存知ない人と思わせないことはもちろん、翻訳の取引に厳しい人と思わせることが大事だということです。
翻訳は、納品されてその内容を確認するまでは決して安心してはならないものです。
集魚灯のような美辞麗句や安値に引き寄せされて翻訳を発注したはよいが、納品されたものは満足のいくものでなく、その修正を依頼しても対応は良くなく、といった話は残念ながら枚挙に暇がありません。
翻訳の取引に厳しい人と翻訳会社の見積担当者に初めからしっかりと意識させることで、いい加減な対応を未然に防ぐことができ、いい加減な翻訳会社をあらかじめ排除することができます。
だから翻訳料金の見積もりを依頼するときは、「翻訳依頼経験や知見がある」ことを翻訳会社の見積担当者に伝えるようにしましょう。
最後に
最後のひとつは実は翻訳会社の見積担当者が、できればお客様から聞きたくないことでもあるのですが、翻訳業界全体のサービス改善につながればという思いもありご紹介しました。
こちらでご紹介した5つはいずれも、翻訳会社の見積担当者がより精度の高い見積提案を行う上で役立つ情報で、優秀な翻訳会社の見積担当者であれば、わざわざお客様から伝えずともさまざまな言い回しで聞いてくるものです。
逆に、これらを自主的に探ろうとしない翻訳会社は、依頼先候補から外しておいたほうがよいかもしれません。
まとめ
以上、「【翻訳の見積もり依頼】で得する方法」でしたがいかがでしたでしょうか。
当社は翻訳の目的や、翻訳する文書の特徴、性質などを正しく理解、見極め、相手国の文化的背景を念頭に、ホームぺージや契約書、取扱説明書、プレゼン資料、リリース、ゲーム、アプリその他あらゆるビジネスで必要なドキュメント、テキストの「プロ翻訳者による翻訳」を、英語を中心に世界120か国語で行います。
高い品質が求められる外国語対応や翻訳についてもしお困りでしたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。