中国語を母語とする人の数は13億人以上です。日本にも毎年多くの中国人観光客が訪れており、インバウンドでも需要の高い言語です。
しかし「中国語の翻訳」といってもターゲットとする国や地域によって、使用されている字体に違いがあるので注意が必要です。
本コラムでは、中国語の字体である「簡体字(かんたいじ)」と「繁体字(はんたいじ)」の違いを中心に、中国語の翻訳で知っておくべきことについて説明します。
簡体字と繁体字
簡体字とは?
簡体字(かんたいじ、Simplified Chinese)とは、1956年に中国共産党政府によって、利便性の向上を狙いとして考案された字体です。
その名のとおり、漢字の複雑な偏(へん)や旁(つくり)が簡略化されています。画数が少ないため、従来の漢字と比較するととても書きやすく覚えやすい字体です。
繁体字とは?
繁体字(はんたいじ、Traditional Chinese)は、英語訳からもわかるように、昔から使われてきた漢字の字体を指します。
日本でも戦前まではこの繁体字が使用されていました。日本では戦後に「略字(りゃくじ)」と呼ばれる繁体字を簡略化した字体が導入されましたが、それでも日本で用いられている漢字は簡体字よりは繁体字に近い字体です。
日本の略体字と中国の簡体字の違いについては「こんなに違う!日本の略体字と中国の簡体字(台湾ゲンダイ研究所様記事)」が有益につきご紹介します。
中国語圏と使われる字体
「中国語圏(ちゅうごくごけん)、中華圏(ちゅうかけん)」とは「中国語が使用されている国や地域」のことを指します。簡体字中国語や繁体字中国語の主な使用国、地域は次のとおりです。
簡体字が使われている国と地域
簡体字は、中国本土、シンガポール、マレーシアで主に用いられていますが、中国では標準語として定められており、公文書(こうぶんしょ)も簡体字で書かれています。
シンガポールとマレーシアの国語はマレー語ですが、マレー語以外に英語、中国語(北京語)、タミル語(インド系言語)の3言語を合わせた4つの言語を公用語としており、そこに住む華人(移住先の国籍を取得した中国系移民)は簡体字を使っています。
繁体字が使われている国と地域
繁体字は、台湾、香港、マカオ、中国南部(福建省(ふっけんしょう)、広東省(かんとんしょう))で主に使われています。
香港の繁体字は、基本的に台湾で使用されている繁体字と同じですが、言い回しや表現に多少違いが見られる場合があります。
これは、台湾で使われる単語はすべて中国大陸由来の物ですが、香港はその歴史や地理上の理由で単語にも様々な由来(英語や広東語の影響)があるためです。
ただし基本的には同じ繁体字なので、書き言葉に大きな違いはありません。
簡体字と繁体字は通じ合うのか?
表記に違いはあるものの、簡体字を使う人が繁体字を見て意味は推察できるようです(逆もまた然り)。また、オーラルコミュニケーション(会話)上も特に大きな障害はありません。
しかし中国語には様々な方言があり、方言によっては同じ字体でもまったく通じ合えないケースがあります。
たとえば広東語(かんとんご)は中国大陸南部や香港で使われている方言ですが、中国の標準語とまったく違う発音体系を持っているため、同じ中国語でも標準語の話者と広東語の話者の間での会話は成立しません。

文字コードの違い
文字コードとは、文字をコンピュータで処理したり通信したりするために文字の種類に番号を割り振ったものです。コンピュータは数値でしかデータを扱えないため、このような仕様になっています。
日本語の文字コードと中国語の文字コードは同じ2バイト文字(1文字を2バイト使って表現するもの)ですが、互換性はまったくありません。
よって中国語のフォントをインストールしていないパソコンで中国語の文書ファイルを開くと、文字化け(文字コード設定の誤りなどにより、文字が別の文字として表示されてしまうこと)してまったく読めないという事態に陥ってしまいます。
さらに、同じ中国語であっても簡体字と繁体字では使用される文字コードが違うことにも注意が必要です。簡体字フォントしかインストールしていない環境で繁体字の文書ファイルを開いた場合も、やはり文字化けしてしまいます。
簡体字の文字コード
簡体字では「GB2312」と呼ばれる文字コードが用いられています。
GBとはGuojia Biaozhun(国家標準、中華人民共和国国家標準)の略で、「GBコード」とも呼ばれ、簡体字のウェブサイトは基本的にこの「GB2312」を用いて作られています(文字コードとフォントは異なりますのでご注意ください)。
尚、中国語の文字コードについては「JPドメインにおける 茶筌を用いた中国語ページの抽出(FIT2005 第4回情報科学技術フォーラム)」が詳しいのでご紹介します。
繁体字の文字コード
繁体字では「Big5」と呼ばれる文字コードが主に用いられています(文字コードとフォントは異なりますのでご注意ください)。
Big5(ビッグファイブ)は、中国では「大五碼(dàwǔmǎ)」または、「五大碼(wǔdàmǎ)」と表記されますが、1984年に台湾の5大パソコンメーカーによって策定されたためこの名がつきました。
尚、1984年当時の台湾5大パソコンメーカーとは、エイサー(宏碁)、マイタック(神通)、佳佳、ゼロワン(零壱)、FIC(大衆)を指します。
最後に
繰り返しますが、中国語」といっても地域によって使われている字体に違いがあります。
さらに細かく言うと、地域によって方言があり、同じ字体を使っていても、使われる言い回しや表現に違いが見られる場合があります。
翻訳会社に翻訳を依頼する時には、少なくとも簡体字と繁体字どちらで翻訳するのかを指定するようにしましょう。
まとめ
以上、「【中国語の翻訳】絶対に知っておくべきこと」でしたがいかがでしたでしょうか。
当社は翻訳の目的や、翻訳する文書の特徴、性質などを正しく理解、見極め、相手国の文化的背景を念頭に、ホームぺージや契約書、取扱説明書、プレゼン資料、リリース、ゲーム、アプリその他あらゆるビジネスで必要なドキュメント、テキストの「プロ翻訳者による翻訳」を、英語を中心に世界120か国語で行ないます。
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