ビジネスその他さまざまなシーンで使われる契約書。
海外企業と取引する際は外国語で契約を交わすことも必要ですが、その際は双方の認識にズレが生じないよう、契約書の翻訳は慎重に行わねばなりません。
本コラムでは英文契約書・和文契約書の特徴や違い、契約書の翻訳を依頼するときの注意事項やコストを抑えた契約書の翻訳方法についてまとめます。
目次
英文と和文それぞれの契約書の違い
一概に契約書といっても、英文の契約書と和文の契約書ではスタイルが異なります。これは英米の法律と日本の法律では根底にある考え方が違うからです。
それぞれの特徴は次のとおりです。
英文の契約書の特徴
英文の契約書は、和文の契約書と比べて条項の数も分量もかなり多いのが特徴ですが、それは国際基準となる英米法が判例法に基づいており、日本の法律のように成文化されていないこと、また英文契約書は「性悪説」に基づいて作成されていることが大きな理由です。
- 判例法とは
- 英文契約書にもとづく契約に於いて、契約書に記載のない実施事項は認められない
- つまり、契約に関する実施事項や対処法はすべて契約書にあらかじめ記載しておく必要がある
- このことにより(契約に関するすべての要素を盛り込むため)英文契約書は和文契約書と比べて分量が多くなる傾向にある
- 成文化とは
- 文章として書き表わすこと
- すでに決まっていることや新しく決められたことなどを、文章や条文として書き表わすこと
和文契約書の特徴
日本の法律は、英米法と違い成文法として整備されています。また、和文の契約書は基本的に「性善説」に基づいて作成されていることが特徴です。
契約書に記載のない事態が発生した場合、欧米ではすぐに訴訟問題に発展するケースが多いですが、日本では調停や仲裁で解決していく方法を取ることが多いのです。
- 成文法とは(Wikipediaより)
- 和文契約書は、すべての契約条項を契約書に盛り込む必要はなく、フレキシブルに対応していける余地があります。
このように英文の契約書と和文の契約書では前提が異なるため、海外企業との取引で交わす契約には注意する必要があります。
契約書の翻訳を依頼するときに注意すべきこと
契約書の翻訳実績を確認する
契約書の翻訳には、翻訳スキルに加えて高度な法律知識が必要になります。
契約書には専門用語が多く、書き方にもルールがあるため、専門性と難易度がかなり高い翻訳といえます。
翻訳者としてスキルが高くても契約書に関する知識が乏しい場合、その翻訳にはリスクが伴います。
よって契約書の翻訳を依頼するときは、依頼先に契約書の翻訳実績を確認したほうが良いでしょう。
品質管理を徹底する
契約書の翻訳は正確性が要であり、わずかな間違い(誤訳)でも契約に支障を来たします。
しかし翻訳者も人間ですのでケアレスミスを犯す可能性があります。
そのようなミスを見付けて修正するのが、チェッカーと呼ばれる翻訳のチェックをする人の役割です。
誤訳やケアレスミスを漏れなく正すためには、チェッカーにも契約書に関する知識が必要になります。
守秘義務を徹底する
契約書には企業の機密事項がふんだんに盛り込まれています。
機密情報が漏洩してしまった場合、契約に支障を来すのみならず、企業としての立場が危ういものになりかねません。
そのような事態を避けるためにも、守秘義務を徹底する翻訳会社に翻訳を依頼したほうがよいでしょう。
また、依頼先とは事前にNDA(秘密保持契約)を交わしておくことも大切です。
リーガルチェックに対応できるか確認する
リーガルチェックとは「契約書の内容が法的に妥当であるかチェックすること」です。通常は弁護士や企業の法務担当者が行う業務です。
契約書に記載されている内容を正確に翻訳することが主な契約書翻訳では一般的に、その法的妥当性まで確認、関与しません。
しかしもし翻訳に加えてリーガルチェックも依頼したい場合は、事前にリーガルチェックに対応できるか確認するようにしましょう。

契約書の翻訳にかかるコストを下げるには
英文の契約書は特に、テキストの量が多いため翻訳料金も高額になりがちですが、コストや工数を節約するには次のような方法があります。
翻訳支援ツールを使う
翻訳支援ツールとは、過去の翻訳や用語をデータベース化できるツールです(詳しくはコラム【翻訳支援ツールを使った翻訳】メリットと使用上の注意をお読みください)。
契約書は他のビジネス文書と比べて、同じ文言が繰り返し使用されたり定型文が多く含まれる傾向にありますが、翻訳支援ツールは文書の内容に重複が多ければ多いほどその真価を発揮します。
よって契約の更新に伴なう契約書の改訂が頻繁で、その都度翻訳する必要がある場合などは、はじめから翻訳支援ツールを使うことでコストが削減できます。
ポストエディット(MTPE)で翻訳する
原稿すべてを人間の翻訳者が翻訳するのではなく、最初に自動翻訳(機械翻訳)したものをあとで人間の翻訳者が手直しする翻訳方法をポストエディット(MTPE、Machine Translation Post-Editing)と呼びますが、近年の技術進歩によりこの自動翻訳(機械翻訳)の精度が著しく向上しています。
自動翻訳(機械翻訳)は表現力に乏しく、読み物的要素の強い文書を翻訳する際にはまだ課題が残っていますが、契約書や特許出願書類のような、定型文が多く含まれる文書への適用性の高さに期待されています。
最後に
本コラムでは、英文の契約書と和文の契約書の違い、翻訳を依頼するときに注意すべきこと、そしてコストの削減方法についてまとめました。
契約書はビジネスを行う上で必要不可欠であり翻訳が必要になる機会の多い文書ですが、納得できる翻訳品質と契約による成果を得るためにも、実績、品質維持方法やセキュリティ面など、すべての面で信頼できる翻訳会社に翻訳を依頼するようにしましょう。
まとめ
以上、「【契約書の翻訳】注意すべき点・コストダウンの方法」でしたがいかがでしたでしょうか。
当社は翻訳の目的や、翻訳する文書の特徴、性質などを正しく理解、見極め、相手国の文化的背景を念頭に、ホームぺージや契約書、取扱説明書、プレゼン資料、リリース、ゲーム、アプリその他あらゆるビジネスで必要なドキュメント、テキストの「プロ翻訳者による翻訳」を、英語を中心に世界120か国語で行います。
高い品質が求められる外国語対応や翻訳についてもしお困りでしたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。