意識しないと大変なことになる「誤訳」 歴史を変える力さえ持つ誤訳を防ぐには?

意識しないと大変なことになる「誤訳」
歴史を変える力さえ持つ誤訳を防ぐには?

 

「誤訳(ごやく)」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?聞いたことがなくとも、その単語から「誤って訳すこと」であることは容易にわかります。

それでは「誤訳(ごやく)を意識したこと」はあるでしょうか?おそらくほとんどの人は誤訳(ごやく)の存在について意識したことがないだけでなく、「翻訳したもの(の品質)はどれも同じ」だと思っています。

「翻訳は誰がやっても、何でやっても、どこに頼んでも同じ」そう思っていると誤訳(ごやく)の存在に気付かぬまま、大きな損失を被る恐れがあります。

本記事では誤訳とそれが生むリスクについて説明します。

誤訳とは

  • 誤訳(ごやく)は、翻訳における誤りのひとつ
  • 翻訳の対象となる原文の内容を正確に理解していない翻訳者が誤った理解に基づいて翻訳文を作成すること
  • またそのように作成された誤った内容の翻訳文

 

Wikipedia(※)ではそのように説明されています。
参照元:誤訳(Wikipedia)

「誤訳(ごやく)」をわかり易く言い換えると「翻訳ミス」ですが、その内容は実にさまざまで定義するのが案外難しいものです。

たとえば「彼」を「She」、「赤い」を「Blue」と翻訳するのは明らかに誤訳(ごやく)ですが、「First Floor」を「一階」と翻訳した場合どうでしょうか?この場合、アメリカ英語なら正解ですが、イギリス英語では間違いとなります(イギリス英語でFirst floorは二階を指し、一階はGround Floorです)

ほかにも「Football」はアメリカでは「アメリカンフットボール」のことですが、イギリスでは「サッカー」のことです。このような例を挙げ始めると枚挙に暇がありません。

誰にでもわかり易い簡単な例を挙げましたが、重大な問題を引き起こす可能性のある誤訳(ごやく)とは、もっと高い次元での間違いのことです。

「間違いではないが表現方法や用語が妥当ではない」といった一見では判別しにくいことまで含め、誤訳(ごやく)をその重篤度によって階層化するとそれはまるでグラデーションのようで、「どこまでは誤訳(ごやく)ではなく」「どこからが誤訳(ごやく)か」は人によって意見が分かれるほどです。

これが「誤訳(ごやく)の定義は難しい」といった理由ですが、それでは結局、誤訳(ごやく)とは何なのでしょうか?

一般的な認識は前述のWikipediaの説明どおりですが、当社は「たとえ表現方法や用いられる単語がなんであっても、元の文章を書いた人の意図が正しく伝わらないもの」を誤訳(ごやく)と考えます

言い換えれば、「元の文章を作成した人の意図さえ正しく伝われば、それは誤訳(ごやく)ではない」ということです。なぜなら、翻訳する目的を果たしているからです。

少し乱暴な例になりますが、「言語」と「方言」の区別が似ているように思います。どこまでが「方言」でどこからが「言語」か、明確に区別して定義付けることができるでしょうか?

青森の人と鹿児島の人もしくは、沖縄の人がそれぞれの方言をイントネーションも含め自然に話した場合、どれほど正確な意思の疎通がお互いに図れるでしょうか?言うまでもなく両方とも日本語であり同じ言語とされていますが、通じないのであればそれらは厳密には「同じではない」と言えるのではないでしょうか?

話が逸れてしまいましたが、翻訳と翻訳に於ける誤訳(ごやく)もそれと同じように思います。この例でいえば、翻訳を「言語」、誤訳(ごやく)を「方言」に置き換えれば、その定義付けや判別がいかに難しいかがおわかりいただけると思います。

誤訳の種類

それでは、誤訳(ごやく)にはどのようなものがあるのでしょうか。

  • 誤字がある
  • 脱字がある
  • 句読点の場所が適切でない
  • 符号が正しくない
  • スペースの空け方が不適切
  • 適切な単語ではない
  • 適切な用語ではない
  • 用語が統一されていない

 

これらのほとんどは「スタイルガイド」と呼ばれる「言葉遣いの規定書」に書かれていることであり、翻訳会社のみならず新聞社、出版社など、ビジネスに於けるテキストの重要性が著しく高い組織には必ず備えられており、準拠が厳命される内容です。

準拠していなければ当然誤用(ごよう)または、誤訳(ごやく)ということですが、誤訳(ごやく)に含まれるのはこのように明確なものばかりではありません。

  • 文法が破綻している
  • 意味が理解できない
  • 理解できない表現がある
  • 理解し辛い単語が使われている
  • 表現が適切でない
  • 外国では通用しない内容が含まれている
  • 目的や対象地域、対象者に適切な単語や表現が使われていない
  • ネガティブな印象を与える内容が含まれている
  • 趣旨が理解できない

 

これらもすべて誤訳(ごやく)です。そしてこれらは、「解釈の仕方によって判断がどのようにでも変わる」という厄介な問題をはらんでいます。

定義の付け方によって判断基準が変わることは前述のとおりですが、ざっと挙げただけでも誤訳(ごやく)にはこれほどのバリエーションがあるということです。

そして翻訳者による翻訳であろうと、自動翻訳(機械翻訳)であろうと、「翻訳された文章は、このような誤訳(ごやく)を含んでいる可能性がある」ということです。

誤訳の原因

誤訳(ごやく)の原因についてはいくつかありますが、主なものは次の5つです。

1)翻訳者が翻訳の対象となる原文の内容を正確に理解していない

理解していないと言ってもまったく理解できないものは翻訳できませんので、ここで指しているのは翻訳者の経験や知識不足または、思い込みなどによって誤った理解をした上で翻訳したことが原因ということです。

厳しい表現をすれば、能力を上回る内容の翻訳を引き受けたことが原因です。

2)翻訳者の注意不足

  • 翻訳し忘れている箇所がある「訳漏れ(やくもれ)」
  • 原文に存在しない言葉を翻訳文に付け加えてしまっている
  • 文法的に誤っている
  • 単語や数字の見間違いまたは、入力間違い
  • 調査不足による誤った認識に基づく翻訳

 

その他実例は山ほどありますが、短納期案件やキャパシティを超える物量の翻訳を受けたことによる注意不足が原因です。

3)誤った表現方法の選択

原文の内容は正確に理解しているにもかかわらず、翻訳した際にその表現方法が適切ではなかったことが原因です。

倒置法、比喩、隠喩(暗喩)、擬人法、対句法、体言止め、反復法、省略法、呼びかけ、押韻といった表現技法や、ですます調(敬体)とである調(常体)そのほかにも敬語や定型文のような存在である呼応、二重否定など、日本語だけみてもその表現方法は実にさまざまですが、外国語に翻訳する際はさらに増すその難易度が原因となるのです。

4)規定違反

翻訳を含む文章作成における規定つまり、各種ルールは「スタイルガイド」と呼ばれる「言葉遣いの規定書」に書かれていることであり、翻訳会社のみならず新聞社、出版社など、ビジネスに於けるテキストの重要性が著しく高い組織には必ず備えられており準拠が厳しく求められる、と先述しました。

よってこれらルールブックに記載されている内容と異なるものはすべて誤訳(ごやく)とされます。

5)自動翻訳(機械翻訳)の精度

主語に誤りがある、一文節まるごと翻訳が抜けている、翻訳結果の文法が破綻している、翻訳結果が文章としての意味を成していない、などは自動翻訳(機械翻訳)に於いてよく見られる誤訳(ごやく)の例ですが、これらはすべて自動翻訳(機械翻訳)の精度そのものが原因です。

AI技術の進歩とその活用により精度を著しく向上させつつある自動翻訳(機械翻訳)ですが、そのままビジネスに使える、100%信頼が置けるレベルにはまだ至っていないのが実情です。

誤訳が引き起こす問題

誤訳(ごやく)がどのような問題を引き起こすかについては、ここで改めて述べるまでもないでしょう。しかし誤訳(ごやく)が引き起こす問題は予想以上に大きく、それが及ぼす悪影響は深刻なものであることは理解しておく必要があります。

歴史を変えた誤訳 鳥飼 玖美子著(新潮文庫)」は翻訳業界では名著で読む人も多いものと思われますが、誤訳(ごやく)が引き起こす問題の大きさがどれほどかを把握するのに役立ちます。

この書籍で挙げられている例は外交に関することであり、それが如何に大きな国際問題に発展したか、如何に歴史を変えたか、というものですがこれらは決して大袈裟な表現ではありません。

ビジネスに於いても契約書の誤訳(ごやく)は致命傷につながる可能性がありますし、ウェブサイトの誤訳(ごやく)はユーザーに意図しない印象を与えてしまい、ブランド価値を低下するだけでなく人命に関わるリスクさえあります。

しかし残念ながら、「翻訳は誰がやっても、何でやっても、どこに頼んでも同じ」と多くの人が誤解しているがために、この世は誤訳(ごやく)であふれています

よって「誤訳(ごやく)の存在」を認識し、それが引き起こす可能性のある問題を予防する意識を持つことが今、なによりも求められることなのです。

誤訳の解決方法

それでは、誤訳(ごやく)をどのように発見し、解決すれば良いのでしょうか。手法をいくつか挙げてみます。

1)検収

翻訳者または、翻訳会社から納品された翻訳内容を確認する作業です。

和訳したものある場合や、外国語に翻訳したものでも自身で確認できるのであればそれに越したことはありませんが、難しい場合は外国語のわかる誰かに頼む必要があります。

ポイントは、翻訳者または、翻訳会社による翻訳であろうと自動翻訳(機械翻訳)による翻訳であろうと、その内容を確認しないで鵜呑みにすることを避けることです。

2)ネイティブチェック

外国語に翻訳した場合、その外国語を母国語とするネイティブと呼ばれる人がチェック(校閲)する方法です。

翻訳された文章だけを診て、ネイティブが読んで違和感を感じる内容がないかどうかを確認する作業ですが、翻訳の元となった文章(原文)と整合性については確認する術がないことが難点です。

3)プルーフリーディング

翻訳された文章と、その元となった文章(原文)の整合性も含めて確認する作業(校正)です。

翻訳されたものの正確性を測るにはこれがもっとも適切な方法ですが、翻訳されたものの品質が低い場合などは全文を翻訳し直す必要が生じることもあり、費用が嵩む可能性があることが難点です。

自動翻訳(機械翻訳)されたものを翻訳者(人)が手直しする「ポストエディット(MTPE)と呼ばれる翻訳手法もプルーフリーディングの一種ですが、自動翻訳(機械翻訳)の精度が低い場合は「最初から翻訳者(人)が翻訳しておけばよかった」という事態に陥る可能性もあります。

4)バックトランスレーション

翻訳された文章をふたたび、翻訳の元となった言語の文章に翻訳”し戻す”、そしてそれを大本の、翻訳の元となった文章を比較するという手法です。

日本語から英語に翻訳したものを、別の翻訳者(人)がふたたび日本語の文章に翻訳し戻す、そして出来上がった日本語の文章と大本の日本語文章を比較する、と言えばわかり易いでしょうか(翻訳し戻す際に、大本の日本語文章はもちろん参考にしません)。

文体や表現の仕方の違いは多少生じるでしょうが、趣旨が間違っていなければ、最初の翻訳は間違っていなかった、と判断できます。

しかし、最初に翻訳に掛かる費用に加え、元の文章に翻訳し戻す費用が発生しますので、現実的にはよほど重要なものでないかぎり実施は難しい手法です。

 

以上、誤訳(ごやく)を技術的に解決する手法はいくつかありますが、なによりも大切なのは前項で述べたとおり、まずは「誤訳(ごやく)の存在」を認識し、それが引き起こす可能性のある問題を予防する意識を持つことです。

まとめ

以上、「意識しないと大変なことになる「誤訳」歴史を変える力さえ持つ誤訳を防ぐには?」でしたがいかがでしたでしょうか。

たとえば「表現が適切でない」と一概に言っても、「ではどのような表現が適切か」はシーンや読み手によって大きく変わります。

同じ内容を伝えるための文章であっても、リテラシーの高い読み手であれば専門用語を使った格調高いものに仕上げる必要があり、そうではない読み手を想定するならカジュアルでくだけた、平易な表現を使う必要があるのです。

それを誤った場合はやはり、「元の文章を書いた人の意図が正しく伝わらないもの」として当社は誤訳(ごやく)と考えます。

  • 御社の外国語ホームページは、御社の趣旨を正しく広め、期待した成果を導き出していますか?
  • 御社が外国企業と取り交わした契約書の内容、その翻訳で本当に大丈夫ですか?

コストを重視するあまり、「誤訳(ごやく)」や「それが引き起こす問題」を軽視すると取り返しのつかない事態に陥る可能性があります。

「こんなことであれば最初からきちんと費用を掛けておけばよかった」とあとでならないよう、誤訳(ごやく)を含む翻訳に品質にはこだわるようにしていただきたいと思います。

当社は外国語ホームページの品質確認を無料で行なうウェブサイト翻訳無料診断サービスも提供していますので、ぜひご活用ください。

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また、翻訳品質に不安があるときは、どうぞ遠慮なくお問い合わせください。

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